有機工業化学(平成八年度)

(3問中2問を選んで回答のこと。)

第一問、芳香族炭化水素の化学と工業について以下の問に答えよ。
イ、キシレン異性体およびエチルベンゼンは、製造時に用いられる条件下では熱力学的な平衡組成を持つ混合物として存在する。そのため、それぞれの成分を利用する際、分離工程が必要となる。イカに示したそれぞれの物理・化学的性質を利用した分離法について、方法、長所・短所を説明せよ。
表.C8芳香族異性体の物議化学的性状
沸点/℃融点/℃相対塩基度
エチルベンゼン136.19-93.980.14
o-キシレン144.41-25.182
m-キシレン139.10-47.87150
p-キシレン138.35+13.261

ロ、下に示したクメン法によるフェノール製造プロセスのスキームについて、以下の問に答えよ。
(a)の部分で起こる反応を化学式であらわし、また、この反応系に炭酸ナトリウムを添加し、塩基性に維持している理由を説明せよ。
(b)の部分で起こる反応を示し、硫酸の反応への作用について説明せよ。

ハ、合成繊維の原料となるε-カプロラクタムの製造における中間生成物であるシクロヘキサノールはこれまで、ベンゼンの水素化とシクロヘキサンの酸化により合成されてきた。これに対して最近、ベンゼンからシクロヘキサノールの新しい合成法が工業化された。両者について、化学反応式をしるし、従来の方法と比較して新しい方法が優れている点について説明せよ。

第二問、以下イ、ロ、ハの中から二問を選んで回答せよ。
イ、酢酸の三つの号税ルート(石炭、石油、天然ガスから)について、反応経路、触媒、プロセスを記せ。
ロ、合成ガスから液体炭化水素の合成(フィッシャー・トロプシュ合成)について、触媒、反応条件、反応機構、生成物の特徴を述べよ。
ハ、C1化学が日本の将来のエネルギー供給に対してどのような役割を果たしえるかについて実例を挙げて説明せよ。

第三問、日本における化学産業(化学工業、石油精製、高分子工業化学、バイオインダストリー)における現在の問題点と将来進むべき方向について問題点の解析、その解決方法および将来展望について述べよ。


ほーむへ