平成11年度夏学期 無機化学II期末試験問題
1.以下の5つの元素の英語名を英語で記せ。
Na、K、Fe、Zn、Hg
2. 立方晶、六方晶の単位構造を書け(原子は書かなくて良い)。
図の下にそれぞれの最も特徴付ける対称要素を記し、それらを構造図中に書きこめ。
3. ほとんどの金属構造は、体心立方構造、面心立方構造、六方最密充填構造のどれかであり、同じ金属元素でも温度によって構造変化することが多い。これらの構造のうち高温で安定となりやすいのはどれか。充填率を考慮に入れた理由を併せて述べよ。
4. A、Bを陽イオン、Xを陰イオンとする。
(@)化合物AXでA、Xが互いに6配位の場合には岩塩型構造やNiAs型構造がある。化合物AXにおいて互いに4配位、8配位である結晶型をそれぞれ1つ挙げよ。
(A)組成がAX2である化合物の代表的な結晶型を2つ挙げよ。
(B)組成式ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物は陽イオンの周囲の酸素イオン配位数が比較的大きいため、構造を維持したまま大きな酸素不定比性をもつことが特徴である。この構造において、AおよびBイオンのまわりに酸素イオンがそれぞれ何配位しているか。ここで、AイオンはBイオンより大きいとする。
5. ボルン−メイヤーの式は以下の通りである。
(@)ここで、Mは結晶構造の対称性を反映したクーロン相互作用の総和を意味する定数である。何と呼ばれる定数か。
(A)イオン結晶においては格子エネルギーと融点の間には強い相関がある。NaCl、CaO、BaOについて、融点の高くなると思われる順に並べ、その理由を述べよ。
(B)ボルン−ハーバー−サイクルから求められる格子エネルギーとボルン−メイヤーの式から得られる格子エネルギーを比較することによってどのような知見が得られるか。簡単に記せ。
6. X線源として、Cu‐Kα線を用いNaClの粉末X線回析測定を行った。データ処理により、Cu‐ Kα2の寄与を除去した結果、下図のような回析パターンが得られた。Cu‐ Kα1の波長λは1.5406Å、また、アボガドロ数は6.022×10の23乗である。以下の設問に答えよ。(参考:6配位におけるNa+およびCl−のイオンの半径はそれぞれ、1.02Å、1.81Åである。)
(@)回折ピーク(a)〜(g)の面指数を記せ。
(A)ピーク(f)の角度2θは66.20°である。これを用いて格子定数aを計算せよ。
(B)NaClの分子量は58.44である。NaClの理論密度を計算せよ。計算過程も記すこと。
(C)ピーク(a)、(d)の強度が低いことについて理由を述べよ。また、これらの面から回折強度がKClの場合、どうなるか。理由をつけて述べよ。
7.[選択問題] 以下の問題の中から2つ選び解答せよ。
A.面心立方格子の逆格子が体心立方格子であることを示せ。
B.正八面体場(6配位)低スピン状態における、3d電子数とイオン半径の関係について、論ぜよ。
C.熱平衡状態においてNaClにショットキー欠陥が生じる理由を説明せよ。
D.固溶体の定義を述べ、置換型固溶体の例を一つ挙げて説明せよ。
E.CaやY置換によって安定化されたジルコニアが、高温で高い酸素イオン導電性を示す理由を述べよ。
ほーむへ