高分子化学2(平成十年度)

(教科書1冊および電卓持込可。ノートプリント不可)

1.重合度5000のポリスチレン分子がθ溶媒中でランダムコイル状態であるときの根平均二乗末端間距離<R21/2、慣性半径Rgを計算せよ。また、このポリスチレンを自由回転鎖と考えたときの<R21/2、およびこのポリスチレン分子を主鎖の結合の周りの回転角がすべてφ=0(トランス)になるように引き伸ばしたときの両末端間きょりL(contour length)を計算せよ。ただし、C-C結合の距離は0.154nm、sin54.8°=0.816、<R2>=Na2(Nは結合の数)としたときの有効結合長aの値は、θ状態のポリスチレンではa=0.512nmである。

2.結晶性ポリマーであるポリフェニレンスルホンの示差走査熱量測定(DSC)曲線は、右図のようにあらわされる。(1)は溶融状態から徐冷した試料を室温から320℃まで昇温したときのものである。それぞれ、a,b,c,d点でどのような現象が起こっているか、その理由をつけて説明せよ。<IMG SRC="RIMG0010.JPG" align=right>

3.(a)ある温度Tにおける高分子融液の粘度ηは、その高分子のガラス転移温度Tgにおける粘度ηgとの間に、WLF式と呼ばれる
log(η/ηg)=-C1(T-Tg)/{C2+(T-Tg)}・・・(1)
の関係があり、C1およびC2は高分子の種類によらず一定となることが知られている。液体の粘度に関する自由体積モデル{Doolittle式(2)}
η=A・exp(BVocc/Vf)=A・exp(B/f)・・・(2) を使って、(1)式の形となることを導出せよ。ただし、Voccは物質中の占有体積、Vfは物質中の自由体積、自由体積分率f=Vf/(Vocc+Vf)≒Vf/Voccである。
(b)(1)式において、一般にC1=17.44、C2=51.6である。これより、B=1と仮定して、ガラス転移温度における自由体積分率fおよびTg以上とTg以下での熱膨張係数の差Δαの値を計算せよ。


ほーむへ