生命工学実験課題1C

「大学における組換えDNA実験指針」第2章、第1節、第2に記されたように、形質転換株を封じ込めるために、物理的封じ込め (physical containment) と生物学的封じ込め (biological containment) という2つの方法がある.

1. 物理的封じ込め
組換えDNA実験において、組替え体の実験従事者やほかの人への伝播や外界への拡散を防止することを目的として、組替え体を施設、設備内に物理的に封じ込める.強度に応じて、4つのレベルに区分される:
−P1レベル:封じ込めの設備は通常の微生物学実験室と同程度のものである。
−P2レベル:組替え体の処理上発生するエアロゾルが外部に漏れないように、安全キャビ ネットの設置と、汚染物や廃棄物の処理のための高圧滅菌気を備える建物内に実験室を置くことが要求される。
−P3レベル:更衣室を備えた前室を持つ実験区域を設け、空気の流れが前室から実験区域 へ向かう設備が要求される。
  −P4レベル:クラスIIIの安全キャビネットを設置し、実験専用の建物又は建物内の一区画で実験従事者以外の者が近づけないようにするなど、厳しく要求される。

2. 生物学的封じ込め
組換えDNA実験において、組替え体の環境への伝播や拡散を防止する目的として、特殊な培養条件下以外では生存できない宿主と、実験用でない他の生細胞に移行しないベクターを組み合わせた宿主-ベクター系を用いる。組換えDNA実験はウイルスなど実験と培養細胞等実験に区分され、前者に対して、宿主-ベクター系の生物学的安全性の程度に応じて、B1、B2の2つのレベルに分けた。
−B1レベル: 宿主-ベクター系は大腸菌R12株又はその誘導体を宿主とし、接合能力がな 他の菌に伝達されないプラスミド又はバクテリオファージをベクターとするEK1系、酵母菌S.cerevisiaeの実験室保存株を宿主とし、プラスミド又はミニクロモソームをベクターとするSC1、古草菌 B.subtilis Marburg 168株の栄養要求性突然変異株を宿主とし、プラスミド又はバクテリオファージをベクターとするBS1系がある。動物及び植物の培養細胞を宿主とする系、昆虫培養細胞を宿主とする系は全てB1レベル宿主-ベクター系
−B2レベル:B2レベル宿主-ベクター系には、EK2系があり、EK1の条件を満たし、かつ遺伝的欠陥を持つため特殊な培養条件下以外での生存率が極めて低い特定の宿主と、宿主依存性が特に高く、他の生細胞への伝達が極めて低い特定のベクターの組み合わせで特殊な条件下以外では、DNAの組換え分子を持つ生細胞が24時間後、1億分の1以下に減少することが要求されている。


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