第二十五章 蛋白輸送
網状内皮系機構の中の蛋白質や原形質膜から隠された蛋白質は共転写輸送によりリボソームから直接に小胞体に入る。それらはゴルジ体を正の方向に進む。特定のシグナルにより、それらが小胞体かゴルジ体の重なりにとどまるか、仁などの他の細胞小器官に向かうかが決まる。元々の進路は原形質膜に輸送されるものである。逆行輸送はあまり特徴づけられていないが、小胞体にとどまっている蛋白質は特定のシグナルによりゴルジ体から回収される。ひとつの例がC末端のKDELである。蛋白質は膜状の表面の間で、境界膜被覆小胞のなかの荷物として運ばれる。この小胞は供与膜からの発芽として形作られる。それらは荷物を目的膜との融合により降ろす。被覆蛋白質は小胞が形作られる時に加えられ、目的膜との融合の前に必ず取り除かれる。順行輸送は、小胞体からゴルジ体や原形質膜への膜の網の流れによるものではない。よって順行輸送で移動した膜は逆行機構により小胞体に戻らなくてはならない。
前もって作られたオリゴ糖の追加による蛋白質の変形は小胞体で始まる。高マンノースオリゴ糖は整えられている。オリゴ糖複合体はゴルジ体を通る輸送の間にさらに変形を受けることで生まれ、様々なゴルジ層に局在している酵素に蛋白質が出会うという順序で決定される。蛋白質はトランスゴルジ体中で異なる目的地へと分類される。リソソームへの分類の信号はマンノース−6−リン酸の存在である。
異なる膜機構から来た、もしくは異なる膜機構への輸送のためには異なった種類の小胞が必要である。小胞は通常被覆蛋白質により区別される。
COP−lに被覆された小胞はゴルジ体から小胞体に向かう逆行輸送に関わる。COPl小胞は被覆体に被覆されている。被覆体の一つの蛋白はβ−COPであり、クラスリンに覆われた小胞のβ−アダプチンに関係し、COPl被覆とクラスリン被覆の小胞間の一般型構造の可能性を与える。
COPll小胞は小胞体からゴルジ体への順行の動きを行う。ゴルジ層に沿った蛋白を輸送する小胞は同定されていない。ゴルジ体から原形質膜への構造的(積み荷の)動きに関係する小胞も同定されていない。順行輸送の別の機構により、シスゴルジ槽が実際トランスゴルジ槽に変化し、よってシスからトランス面への槽の成熟過程が継続的に起こっていることがわかる。
制御された蛋白の分泌の過程において、蛋白質はゴルジ体のトランス面へのクラスリン被覆小胞に分類される。ある小胞は(大きな)分泌顆粒に融合する。小胞は仁にも動き、仁は細胞表面への移動を制御する。分泌小胞は細胞外信号により原形質膜で荷物を降ろすよう刺激される。食作用にも似た小胞が用いられる。食作用とは、細胞表面から蛋白を取り入れる手段である。これらの小胞の外皮として優勢なのはクラスリンである内皮はアダプチンを含み、クラスリンと結合している。食作用小胞にβアダプチンはあるが、β'アダプチンはゴルジ体から仁に向かう小胞を特徴づける。
全ての型の小胞の発芽や融合は小さいGTP結合蛋白により制御される。クラスリンとCOPl被覆小胞にはARFが、COPll被覆小胞にはSar1pがある。GTPに活性化され、ARFとSar1pは膜に入り、被覆蛋白を結合させる。これは最終的に小胞をねじ切らせる(これには更に蛋白質が必要な場合もある)。GTPがGDPに加水分解されて不活性化されたとき、ARFは膜から引っ込み、(COP被覆小胞の場合)被覆蛋白も自発的に解離するか、(クラスリン被覆小胞の場合)他の蛋白に置換わる。
小胞は、小胞の上のv-SNAREが目的膜の上のt-SNAREと特異的に結合することにより目的膜を適切に認識する。結合はコイル−コイル相互作用で起こり、その中でSNARE複合体は膜表面に平行に横たわっている、これは融合過程に必須の部分であるが、その後他に段階を踏む必要があるのかははっきりしていない。融合に関してSNAREと結合する他の蛋白は可溶なATPアーゼNSFとSNAPであり、SNAPはNSFを繋ぐのに関係している。結合の後再利用のためにSNAREを解離するが、このためにATPの加水分解が必要だと思われる。
継続的に、もしくは細胞外の配位子と結合した結果、受容体は取り込まれる。受容体を仲介する食作用は受容体が被覆された窪みに平行に移動する時に始まる。受容体の細胞質ドメインは被覆された窪みと結合すると思われている蛋白により認識される信号を持っている。経膜的なドメインの側に置かれたさらされたチロシンは一般的な信号である。これはNPXY配列の一部だろう。受容体が窪みに入ったら、クラスリン被覆が小胞をねじ切り、小胞は初期仁にさまよい出る。
仁が酸性環境になるとある受容体は配位子を放出する。配位子はリソソームへと運ばれ、そこで壊される。そして受容体は被覆小胞により原形質膜まで戻され再利用される。脱離しなかった配位子は受容体とともに再利用される。ある場合には、受容体−配位子複合体はリソソームに運ばれ壊される。
第二十六章 信号変換
原形質膜の必要な蛋白は細胞外環境と細胞質との伝達の内のいくつかの手段として使われる。それらはイオンチャンネル、輸送体、受容体を持つ。そのような蛋白は全て疎水ドメインにより原形質膜にとどまっている。脂質が原形質膜を貫いているが、特定の輸送機構は親水性の分子の通過を促進するのに必要である。イオンは輸送蛋白により運ばれる。輸送蛋白は消極的拡散に使われるか、エネルギー源と関係し、能動拡散を行う。輸送体を経由した動きの詳しい機構は明らかになっていないが、直接的にしろ間接的にしろ基質を膜の一方からもう一方へと動かす輸送蛋白質に構造的な変化が起こることが関係していると考えられている。イオンチャンネルは消極的拡散(勾配に従い動く)のために使われる。それらは電圧、細胞外配位子、細胞質の二次伝達物質により、門の開閉をされる(制御される)。チャンネルは普通多くのサブユニットを持ち、それぞれはいくつかの経膜的ドメインを持つ。経膜的ドメイン中の疎水的残基は内を向いており、膜を通して疎水的通路を作る。
受容体は普通グループl蛋白で、ひとつの経膜的ドメインを持ち、完全に電荷のないアミノ酸からなり、細胞外と原形質ドメインを繋ぐ。成長因子用の多くの受容体は、蛋白チロシンリン酸化酵素である。このような受容体は細胞外ドメインにおいて配位子と結合する部位を持ち、原形質ドメインにリン酸化酵素活性を持つ。配位子が受容体に結合すると、細胞外ドメインが二量化する。産物はたいてい同質二量体だが、異質二量体が形作られる場合もある。細胞外ドメインの二量化により経膜ドメインは膜中で平行に拡散し、原形質ドメインと接触させる。結果それぞれの単量体のサブユニットが他をリン酸化するという方法でリン酸化が起こる。
このリン酸化は目的蛋白のSH2構造への結合部位を作る。SH2結合部位への特異性は大抵そのC末端側の4〜5隣接アミノ酸と結合したリン化チロシンによる。経路の中の次の活性構造体が直接的に、もしくは間接的に活性化される。ある目的蛋白はリン酸化された受容体と結合することで活性化される連結体であり、次に他の蛋白を活性化する。普通連結体はSH2ドメインを受容体との結合に、SH3ドメインを経路の次の構造体への結合に使う。他の目的蛋白はリン酸化の基質であり、リン酸化グループを取得することで活性化される、
効果器の一つのグループは二次伝達物質を生む酵素からなり、もっとも普通には小さい脂質を生み、リン酸化するホスホリパーゼやリン酸化酵素である。他の型の経路は連続リン酸化による活性化で構成され、一連のリン酸化酵素が次々と他を活性化し、最終的に核の転写要素をリン酸化し活性化する。MAPリン酸化経路はこの型の応答の典型である。
受容体チロシンリン酸化酵素からMAPリン酸化経路への接続は、Rasを通って進む。接続体(哺乳細胞のGrb2)はリン酸化された受容体と結合することで活性化される。Grb2はSOSと結合しSOSはRasのGDPをGTPに置き換える。Rasは膜の原形質側に結びつく。活性化されたRasはセリン/トレオニンリン酸化酵素のRafに結合し、Rafを膜に持ってこさせ、おそらく巻くと結合してリン酸化酵素によりリン酸化されることでRafを活性化する。RafはMEKをリン酸化する。MEKは二重特異性リン酸化酵素であり、ERKMAPリン酸化酵素をチロシンとトレオニンの両方でリン酸化する。ERKMAPリン酸化酵素は他のリン酸化酵素を活性化する。ERK2MAPリン酸化酵素はまた核へ移動し、そこで転写要素をリン酸化し、転写要素は(哺乳細胞の)成長や(蝿の網膜、虫の陰門、酵母の接合体)の区別のために必要な経路の引き金となる。
MAPリン酸化酵素反応系列への他の接続方法はヘビ状受容体に存在する。三量体G蛋白の活性化によりMEKKが活性化される。S.cerevisiaeにおけるGβγとMEKKの間の経路での構造体はリン酸化酵素STE20である。MEKK(STE11)、MEK(STE7)、MAPK(FUS3)はこれらのリン酸化酵素が働くのに必要な土台蛋白のSTE5と共に複合体を形成する。
転写を活性化する循環的AMP経路は細胞液の中のPKAの触媒サブユニットを放出することで始まる。これは核に拡散し、かくでは転写要素CREBをリン酸化する。この要素の活性は活性cAMP誘導可能遺伝子による。この応答は脱リン酸化酵素がCREBを脱リン酸化すること、Cサブユニットを細胞液に戻す抑制体により反応が弱まる。
JAK-STAT経路はサイトカイン受容体により活性化される。活性化された受容体はJAKリン酸化酵素に結合しこれを活性化する。このリン酸化酵素の目的物質はSTATである。STATは受容体-JAKリン酸化酵素複合体に結合し、JAKリン酸化酵素によりリン酸化され、核に移動し、DNA結合複合体となり、一連の目的遺伝子の転写を活性化する。同じような方法でTGFβ配位子はタイプll/タイプl受容体機構を活性化し、この受容体はSmad蛋白をリン酸化する、Smad蛋白はそして核に取り入れられ転写を活性化する。
第二十七章 細胞周期と成長制御
THE細胞周期はある規定の状態から他への転移により構成される。規定状態の変化は細胞表現型での連続した変化からの遅れ段階により分けられる。転移はリン酸化酵素の活性化や不活性化の形を取り、リン酸化酵素は細胞の物理的状態を規定する基質を変化させる。チェックポイントは、ある内面、外面の状況が十分になるまで転移を遅らせる。細胞周期の内二つの重要な制御点はG1とG2の最後である。G1中に、複製周期に入らせるための確約が行われる。この決定は動物細胞においては制限点により、酵母細胞ではSTARTにより同定される。この決定が行われた後、細胞はS段階を始めることを決める。しかしDNA複製が始まるまでには遅れ段階がある。G2の最後は有糸分裂に即座に入るようにする決定により指定する。
酵母と動物細胞の細胞周期に共通の特徴はM段階リン酸化酵素の存在である。これは二つのサブユニットからなる。Cdc2はセリン/トレオニン蛋白リン酸化触媒活性を持つ。有糸分裂周期物質はAかBクラスである。(おそらく)全ての真核細胞において同族のサブユニットが認識される。酵母において触媒サブユニットをコードしている遺伝子は、S.pombeではその名の由来となるcdc2であり、S.cerevisiaeではCDC28である。動物細胞はたいてい多くの有糸分裂周期物質(A、B1、B2)を含む。S.pombeでは、M段階には一つの周期物質、cdc13にコードされているBクラスの物質しかない。しかしS.pombeはいくつかのCLB蛋白を持つ。
M段階リン酸化酵素活性は触媒サブユニットのリン酸化状態により制御される。活性体は(酵母では)Tyr-15、(動物細胞では)Tyr-14/Tyr-15の脱リン酸化が必要で、さらにThr-161のリン酸化が必要である。周期物質はまたリン酸化されるが、変化の重要性は知られていない。動物細胞では、リン酸化酵素は周期物質の構造体の分解により不活性化する。これは有糸分裂の際に突然起こる。Aタイプの周期物質は普通Bタイプの周期物質の前に分解される。少なくともB周期物質の破壊とおそらく両方の破壊が細胞が有糸分裂を終えるのに必要である。
細胞周期に作用する遺伝子の包括的な研究によりS.pombeとS.cerevisiaeの両方でcdcの変異体が見つかった。もっとも特徴のある変異はM段階リン酸化酵素の構造や活性に影響を与えるものである。S.pombeのcdc25やwee1の変異はM段階リン酸化酵素の制御において細胞サイズ(もしくは他の信号)に応答して逆の効果を与える。wee1はTry-15に作用しCdc2を不活性な状態に保つリン酸化酵素である。Cdc25はTyr-15に働くリン酸加水分解酵素であり、Cdc2を活性化する。高等真核生物でのwee1とcdc25相同物の存在は細胞周期の制御は進化過程で大きく保存されていることを示唆する。
適当な基質のリン酸化により、リン酸化酵素はMPF活性を持つ。これは有糸分裂や減数分裂(元々Xenopusの卵母細胞により定義された)へと刺激する。優勢な基質はヒストンH1であり、H1リン酸化酵素活性はM段階リン酸化酵素の一般的な分析に用いられる。H1のリン酸化は有糸分裂の際に染色質を凝集する必要性に関係している。他のクラスの基質は薄膜を含み、このリン酸化により核膜の分解が起こる。これらの(もしくはおそらく他のも)過程を支配する一般的な原則は、基質の状態はリン酸化に応じて可逆的に制御されており、よって蛋白のリン酸化された形は有糸分裂組織に必要で、脱リン酸化された形は間期組織に必要である。リン酸加水分解酵素はM期リン酸化酵素により導入された変化を元に戻すのに必要である。
G1からS期への移行には、M期リン酸化酵素に似たリン酸化酵素が必要である。酵母では、触媒サブユニットはM期リン酸化酵素と同じであるが、周期物質は異なる(S.pombeでのCDC28-cig1,2の結合体、S.cerevisiaeでのCdc2-CLN1,2,3の結合体である)。G1/S期リン酸化酵素の活性とM期リン酸化酵素での不活性は共にG1期を通って進むことが必要である。S.pombeでのS期の開始はRum1がCdc2/Cdc13の不活性化をすることが必要で、このためCdc18が活性化する。これはS期開始因子である。
哺乳動物細胞では、触媒集団のサブユニットはcdk遺伝子によってもたらされる。この名前はこの遺伝子が周期物質依存リン酸化酵素の触媒サブユニットをコードしていることによる。動物細胞には〜10のcdk遺伝子がある。古典的なCdc2は別にして、もっとも特徴のある産物はcdk2である(これはCdc2に良く似ている)。普通の細胞周期では、cdk2はG1/S期転移の間は周期物質Eと、S期の進行中は周期物質Aと組んでいる。cdk2、cdk4、cdk5はすべてD周期物質と組み、G0からG1への移行に関係するリン酸化酵素となっている。これらのcdk-周期物質複合体はRBをリン酸化し、転写要素E2Fを放出させ、E2FはS期に必要な産物を生産する遺伝子を活性化する。cki(抑制物質)蛋白は成長を妨げる処理物質により活性化し、cdk-周期物質複合体に結合し、それらを不活性な形に維持する。
検問点が細胞周期の進行を制御する。ある検問点は複製されていない、もしくは傷害を受けたDNAに応答し、有糸分裂を防ぐ。他のは有糸分裂の際に進行を制御する。例えば、対になっていない動原体とかである。
自己死は細胞の死の計画を実行する活性な経路により達成される。この経路の構成体は多くの、もしくは全ての高等真核生物細胞に存在する。自己死は多くの刺激により開始される。一般的な経路はカスパーゼ-8が活性な表面受容体でオリゴ糖化することで活性化することに関係する。カスパーゼ-8はBidに溝を空け、Bidはミトコンドリアからシトクロムcを放出させる。このシトクロムcはApaf-1をカスパーゼ-9とオリゴ糖化させる。活性なカスパーゼ-9は前カスパーゼ-3の溝を空け、これの二つのサブユニットは活性なプロテアーゼの形となる。これは細胞死を導く多くのものに溝を空ける。この経路はシトクロムcの放出段階でBcl2により妨げられる。自己死を引き起こすほかの経路はApaf-1とカスパーゼ-9を通らず、Bcl2により阻害されず、JNKの活性化に関係する。異なる細胞はこれらの経路を異なる規模で使う。自己死はC.elegansの自然な成長において必要なものとして見つかった。その後ネズミのノックアウト変異により、これが脊椎動物にも必要だと分かった。全ての細胞は自己死経路の構造体を持ち、細胞死の活性化と抑制の間のバランスを取り制御している。
第二十八章 腫瘍遺伝子と癌
腫瘍細胞はその不死性、形態的変化、(ときどきの)準安定化により通常細胞と区別される。腫瘍遺伝子は種々の特徴を得ることに関係する機能取得を表現する遺伝変化により同定される。腫瘍遺伝子は変異により原始腫瘍遺伝子に由来する。これはその機能や発現レベルに影響を与える。腫瘍抑制物質は細胞増殖の増大を行う機能欠如変異により同定される。これらの変異は主要抑制物質の機能を無くしたり非常に弱めた状態を作る。DNA腫瘍ウィルスは細胞の相手なしに腫瘍遺伝子を運ぶ。これらの腫瘍遺伝子は細胞の腫瘍抑制物質の活性を阻害することで働く。RNA腫瘍ウィルスは細胞遺伝子(c−onc)のmRNA転写体に由来するv−onc遺伝子を運ぶ。あるv−onc遺伝子はc−onc原始腫瘍遺伝子の全ての長さを表現するが、他のは片方もしくは両方の末端を短くする。ほとんどは古ウィルスの産物との融合蛋白質として表現される。Srcは古ウィルス(RSV)が複製競合体であるという例外であり、この蛋白は独立した物として表現される。
あるv−onc遺伝子は質の上でそれらのc−onc遺伝子と異なる。つまりv−onc遺伝子は蛋白レベルが低い状態でも腫瘍遺伝子となるが、c−oncは高いレベルでも活性ではない。この場合、原始腫瘍遺伝子はこの蛋白質をコードしている配列の変化によりのみ効率的に活性化される。他の原始腫瘍遺伝子は発現のレベルで大きく(>10×)活性化される。c−mycはIgやTCR座の転位や古ウィルスの挿入などの多くの方法で量的に活性化される例である。
c−onc遺伝子は古ウィルスにv−onc遺伝子という対遺伝子がある。しかしある原始腫瘍遺伝子は細胞の腫瘍との会合でしか同定されていない。感染分析によりある活性化されたc−onc遺伝子がその繊維芽細胞をかじるという変異能力により同定された。ras遺伝子はこの分析で同定された有力な形である。遺伝子導入ネズミの作成はある腫瘍遺伝子の潜在的な変異能力を直接示す。
細胞腫瘍蛋白質はいくつかの型の遺伝子に由来する。一般的な特徴はそれぞれのタイプの遺伝子産物は成長を制御する経路に関わることが多く、腫瘍蛋白は制御の欠如か活性の増大を引き起こす。
細胞質膜にある成長因子受容体はv−onc遺伝子の中では短くされた状態で表現される。この細胞受容体はしばしば蛋白チロシンリン酸化活性を持つ。この腫瘍遺伝子版は構造的活性か変わった制御能力を持つ。同じ方法で、ポリペプチド成長因子に対しての遺伝子の変化は腫瘍遺伝子を生む、なぜなら受容体は不適切に活性化されるからである。
ある腫瘍蛋白は細胞質チロシンリン酸化酵素である。これらの目的はほとんど分かっていない。これらはチロシンリン酸化酵素受容体の自動リン酸化に対応して活性化する。c−Srcとv−Srcの分子基本構造の違いは二つのチロシンのリン酸化状況である。c−SrcのC末端のTyr-527のリン酸化によりTyr-416のリン酸化が抑制される。リン酸化されたTyr-527はSrcのSH2ドメインに結合する。しかし、SH2ドメインがPDGF受容体の自動リン酸化により作られたリン酸化ペプチド配列を認識すると、PDGF受容体はSrcのC末端領域を置き換える。よってTyr-527の脱リン酸化が起こり、Tyr-416のリン酸化が起こり、リン酸化酵素の活性が生まれる。v−SrcはTyr-527を含む抑制C末端をなくし、よって常にTyr-416がリン酸化され、常に活性である。
Ras蛋白はGTPに結合し細胞膜間の信号変換に関係するG蛋白のαサブユニットに関係している。腫瘍遺伝子変異体はGTP分解酵素活性が少なく、よって常に活性である。Rasの活性化はEGF受容体のようなチロシンリン酸化酵素の活性化により始まる連続信号変換に欠かせない段階である。この連続はERKMAPリン酸化酵素を通る。これはセリン/トレオニンリン酸化酵素であり、核と共にFosなどの転写因子のリン酸化を終わらせる。
核腫瘍蛋白は遺伝子発現の制御に直接的に関わる。これにはJunやFosがあり、Ap1転写因子の一部となっている。v−ErbAは他の転写因子、甲状腺ホルモン受容体に由来し、細胞の因子の機能を防ぐという顕著な抑制変異である。v−Relは一般的な因子であるNF−κBに関係するが、腫瘍遺伝子版の活動は分かっていない。
網膜芽腫(RB)はRB遺伝子の両方のコピーが削除されたか不活性化されたとき起こる。RB産物は核リン酸蛋白であり、これのリン酸化はS期に入るのを制御する。リン酸化されていないRBは転写因子E2Fを隔離する。RB−E2F複合体は特定の目的遺伝子を抑圧する。E2FはRBが周期物質/cdk複合体によりリン酸化された時に放出される。そしてE2FはS期に必要な産物を作る遺伝子を活性化する。この細胞は周期を通して進行を抑圧されない。アデノウィルスE1AとパポバウィルスT抗原はリン酸化されていないRBに結合し、E2Fとの結合を防ぐ。
p53はもともと腫瘍遺伝子と分類されていた。なぜなら間違った変異が腫瘍遺伝子であるからである。これは今は腫瘍抑圧物質として分類されている。なぜならこの間違った変異は実際は野生型のp53の活性を防ぐ機能を持つからである。両方の野生型対立遺伝子の欠如により同じ発現型が生産される。p53のレベルは普段は低く、しかしDNAへの損傷に対応しp53の活性は増大し、細胞周期段階と細胞発現型に依存する二つの経路のどちらかを開始する。周期の初めではこれはこれ以上の進行を防ぐ監視点を提供する。これは損傷を受けたDNAを複製前に修正させる。周期の後の方では、これは自己死を引き起こし、よって損傷を受けたDNAを持つ細胞は生き残る代わりに死ぬ。p53機能の欠如は細胞糸の構築にとって一般的な方法で、生体外で生き延びさせるのにも重要である。p53の欠如は人の腫瘍では一般的であり、細胞型の特異性に関わらず多くの種類の腫瘍の進行に関わる。
p53はSV40T抗原などのウィルス性の腫瘍遺伝子に結合する。SV40T抗原の腫瘍遺伝子の特徴は少なくとも一部にはp53の機能を阻害する能力による。p53はまた細胞の原始腫瘍遺伝子Mdm2に結合する。Mdm2はこの活性を阻害する。p53とMdm2は相互拮抗物質である。 INK4A座は重要な腫瘍抑制経路を共に制御する腫瘍抑制物質を含む。p19ARFはMdm2を阻害し、よってp19が実質p53を働かせる。p16INK4Aはcdk4/6リン酸化酵素を阻害する、この酵素はRBをリン酸化する。よってINK4Aの削除はMdm2の活性化を導く(p53を阻害する)こととcdk4/6(RBを阻害する)という二つの方法で両方の腫瘍抑制経路を妨害する。
p53の欠如は不死化に必要である。なぜならG1監視点と自己死の引き起こしの両方が不活性化されるからである。テロメアーゼは分化細胞では常に働かないが、正しくない成長を防ぐことにより主要を抑える機構を持つ。テロメアーゼの再活性化は腫瘍細胞が継続的に増殖するのに常に必要である。
第二十九章 勾配、連続反応、信号経路
Drosohilaでの卵割の発達は胎児において徐々に小さな領域を描写する卵割遺伝子の活動により起こる。卵母細胞と回りの細胞の相互作用により母親の遺伝子産物の分配が非対称になる。このため胎児の4幅広領域において割れ目遺伝子の発現が起こる。割れ目遺伝子は今度は対規則遺伝子を制御し、対規則遺伝子のそれぞれは7帯に分けられる。そして対規則遺伝子は卵割極遺伝子の発現パターンを規定し、卵割極遺伝子は個々の構造体を描写する。発現のそれぞれの段階で、関係する遺伝子は前段階で発現した遺伝子の産物とそれらの相互作用により制御される。卵割遺伝子は変位遺伝子に作用し、変位遺伝子は個々の構造体の特性を規定する。4母性機構のそれぞれは局所的に分配され活動する形態制御物質の連続により構成される。形態制御物質は転写要素であるか転写要素を活性化する物質である。転写要素はそれぞれの経路の最後の構成体である。
重要な前後軸は二つの機構により作られる。前方の機構は前極からのbicoidの勾配により作られる。後方の機構は卵の後半にあるnanos蛋白により作られる。これらの機構は後半卵のknirpやgiantの幅広い帯と共に前末端からの後彎蛋白の勾配を規定する機能をもつ。末端機能は両末端において局所的反応を起こす。背腹機構は腹側において背側蛋白の核局所化の勾配を起こし、dppとzenの発現を抑える。
初期の胎児は多核体であり、そこで核は普通の細胞質にさらされている。これは全ての4つの母機構が前後背腹軸においてその場所の同等体に従い核の機能を制御する特徴をもつ。細胞の胞胚葉では、接合子RNAが転写され、発達している胎児はその遺伝子によるようになる。細胞は胞胚葉段階を形成し、転写制御の連続に関わる続いた相互作用を起こす。
三つの割れ目遺伝子は亜鉛指蛋白であり、一つは基本的なジッパー蛋白である。これらが集まると対規則遺伝子の発現を制御し、対規則遺伝子はまた転写要素である。特に、eveとftzの発現により構造体の境界が制御され、他の全ての卵割に機能する。卵割極遺伝子は転写因子以外の機能に関わる発達連続反応の最初の段階を表現する。卵割遺伝子間の相互作用によりそれぞれの卵割での遺伝子発現の特異的な結合を規定する。
変化遺伝子はそれぞれの卵割の特異的な違いを規定する機構を強制する。ANT-CとBX-C座の複合体はそれぞれ機能を持つ集合体を持ち、それぞれの前後軸での場所的な発現は集合体の遺伝的場所を反映する。それぞれの集合体は他の小さい単位と同様に一つのとても大きい転写単位を持つ。(もっとも大きい遺伝子であるUbxやAntpを含む)多くの転写単位はほかの連結パターンを持っているが、これがなにに重要かは分かっていない。それぞれの集合体での左から右へ進むにつれ、遺伝子は後ろの組織を発現する。遺伝子は後ろの新しい特徴を終える機能を付け加えるという方法でパターンを重ねて発現する。機能の欠如により変化遺伝子は後ろから前の方の発現形へと変化する。遺伝子は多くの領域に広がる一連の制御部位により複雑な方法で制御される。それぞれの部位での変異は分子内作用であり、機能欠如と機能取得の両方になる。分子内作用変異は変化蛋白の発現制御によりハエの連続した卵割に作用しやすい。
ANT-CとBX-C座の遺伝子と多くの(母遺伝子bicoidと多くの対規則遺伝子を含む)卵割遺伝子は保存された形、ホメオボックスを含む。ホメオボックスは虫、蛙、哺乳類を含む他の真核生物の遺伝子にも見つかる。それぞれの場合においてこれらの遺伝子は初期の発生において発現する。哺乳類では、(Antennapedia綱でのホメオドメインを記す)Hox遺伝子は集合体として組織されている。人とネズミには共に4つのHox集合体がある。これらの集合体はANT-C/BX-C集合体と共に遺伝子間で似た認識をするように同じ位置に置かれ並べられている。Hox集合体の中で右に進むにつれ、遺伝子は胎児の後ろを発現する。Hox遺伝子は卵割中の脳と骨(と他の組織)での特性を与える役割を持つ。似た集合体は哺乳類とハエにおいて胎児遺伝子の制御を行う。Hox集合体は全ての動物で特徴的である。
Drosophilaの遺伝子は複雑な制御網を作るホメオボックスを含む。この中で一つの遺伝子は他を活性化したり抑制したりする。ホメオドメイン配列、それが認識する目的DNA、その結果の制御系の関係はまだ解明すべきことが多い。目的の選択特異性は大きくホメオドメインにあるらしい。特定のホメオ蛋白がそれぞれの目的に対し遺伝子の転写を活性化するもしくは抑制する能力はまだ説明できていない。卵割とホメオ遺伝子は転写連続反応に関与し、そこで制御蛋白間の一連の階層的相互作用が体の部分をコードしている構造遺伝子の活性化を進めるという一般的原則がある。