第十二章 複製単位
全ての細胞分裂サイクルで全染色体が一度複製される。細胞分裂は複製の開始に依存する。複製の完了は実際の分裂過程の開始要素となる。バクテリアの染色体は一つの複製体からなるが、真核生物の染色体はS期の遅延段階で機能を終えるたくさんの複製体に分けられる。一連の複製体の両端を複製する際の問題点は様々な方法で解決される。一番よくあるのは複製体を環状に変異させることである。ウィルスの中には末端を認識するものもある。真核生物の染色体は末端複製体でその問題に出会う。真核生物の複製は(少なくとも)バクテリアの複製よりもオーダー的に大きく遅い。起点は双方向複製を開始するが、そして大抵S期に決まった順序で使われる。真核生物の起点ではS.cerevisiaeだけが配列レベルで同定された。これは主にATからなる11塩基対からなる中心的な一致した配列を持つ。
もっとも小さいE.coliの起点は〜245塩基対からなり、双方向複製を開始する。この配列をもつ全てのDNA分子はE.coliの中で複製できる。起点の後ろには二つの複製フォークが出来て染色体を回る。たとえ後にフォークを終らせるter配列が見つかっても複製フォーク同士が出会うまで進む。転写単位は大抵転写が複製と同じ方向に進むように作られる。
回転環は起点が終点の開始因子となるように切れ目が入れられている環状DNA分子の複製という別の形である。この終点から一本のDNAが合成され、元々の相手の鎖から置き換わり、尻尾として外に出る。この一巡が繰り返されることでたくさんのゲノムが作られる。
回転環はあるファージの複製にも使われる。ΦΧ174起点で切れ目の入るA蛋白は分子内行動というあまりない特徴を持つ。これはそれが合成されたDNAにのみ関与する。これは全ての鎖が合成されるまで置換わった鎖に取り付いており、その後起点に切れ目を再び入れ、置換わった鎖を放し、再び複製サイクルを開始する。
回転環はまたバクテリアの接合にも関与する。このとき、F-piliの働きで細胞同士の結合が開始した後、Fプラスミドが供与体から受容細胞に移動する。自由なFプラスミドは新しい細胞に以下の方法で感染する。統合したF因子が染色体DNAを伝達するHfr鎖を作る。接合の場合、複製は供与体に残っている一本鎖と受容体に伝達された一本鎖とで相補鎖を合成するために行われる。しかし起動力は与えない。
E.coliの染色体の複製には常に40分が必要であり、細胞が分裂できるまでに更に20分を要する。細胞が60分よりも早く分かれるならば、複製サイクルはその前の分裂サイクルが終る前に開始されている。これは多フォーク構造の染色体を生む。開始段階は細胞質量の滴定おそらく開始蛋白質の蓄積による。開始は細胞膜で行われる、ここでは起点は開始から少しの間だけ膜に結合している。
未だ特徴づけられていない付加配列は分離を含む。例えば二つの娘染色体がほぐれるのに必要な酵素のように、正しい分離を防ぐ多くの変異は補助機能に乗っている。分離に直接影響を与えるような一つの変異は染色体をまとめるのに繋がる蛋白質か原動力を同定し得る。細胞を分ける隔壁は先に出来た周隔壁環により決められた場所に育つ。三つの遺伝子座が中期細胞の周隔壁環か先の環に由来する極位のどちらかが隔壁形に使われるかを制御する産物をコードしている。隔壁形がなければ多核繊維を作る。隔壁の多すぎる形は核のない小細胞を作る。バクテリアの中にはプラスミド分割に関係する機構を持っている。この中で一対の蛋白質が起点近くのDNA配列に結合し起点を極に集める。
プラスミドは分裂を確実にしたり促進したりする多くの機構を持っている。そして一つのプラスミドはいくつかのタイプの機構を持つ。プラスミドのコピー数はこれがバクテリアの染色体(一つの細胞に一つ)レベルで存在するか、もっと多く存在するかを示す。プラスミドの不和合成は(一コピーのプラスミドに対し)複製か分裂に関係する機構の結果となり得る。二つのプラスミドが同じ複製システムを制御する場合、これらは不和合成である。なぜなら複製状態の数はそれぞれのバクテリアのゲノムの中に一つのプラスミドしかいないことを裏付けるからである。
十三章 DNAの複製
DNA合成は半不連続複製である。つまり5'→3'に伸びるリーディングDNA鎖は連続的に伸びるが、全体的に逆の3'→5'に伸びるラギング鎖は、それぞれは5'→3'方向に合成される短い岡崎フラグメントとしてつくられる。リーディング鎖とラギング鎖中のそれぞれの岡崎フラグメントはRNAプライマーにより開始し、DNAポリメラーゼによりそこから伸ばされる。バクテリアと真核生物は複数のDNAポリメラーゼ活性を持つ。DNAポリメラーゼIIIはE.coli中のリーディング鎖とラギング鎖の両方を合成する。DNAポリメラーゼIIIの活性には数多くの蛋白質が必要だが、これらは複製体の一部を構成し、機能を持つ。複製体はDNAポリメラーゼIIIの非対称な二量体を含む。それぞれのDNA鎖は触媒(α)サブユニットを含む異なる中心複合体により合成される。中心複合体の校正活性はβかすがいにより維持される。これはDNAを取り巻いた輪の形をしている。複製フォークのループモデルは以下の通りである。二量体の片方がリーディング鎖を合成しつつ進み、二量体のもう片方がラギング鎖の鋳型となるDNAを一つの輪となるように引っ張る。一つの岡崎フラグメントの完成から次への移行には、DNAからラギング鎖触媒サブユニットが解離し、次の岡崎フラグメントの開始点にあるβかすがいに再結合する必要がある。
DnaBは複製フォークでのヘリカーゼ活性を持つ。これはATPの解離を必要とする。DnaBはOriC複製体においてそれ自身でDnaGと周期的に相互作用し、開始体に活性を与える機能を持つ。DnaGはRNAを合成するプライマーゼを供給する。
ファージT4は大きな複製体をコードしていて、7つの蛋白質から成る。DNAポリメラーゼ、ヘリカーゼ、単一鎖結合蛋白、開始活性体、修飾蛋白である。SV40DNAを複製するHeLa細胞機構などの他の複製機構でも似た機能は必要である。DNAポリメラーゼαやDNAポリメラーゼδなどのほかの酵素は新しいDNA鎖を開始したり伸ばしたりする。
開始活性の一般的なものは、一部分での二重らせんの解離に続き、もっと広い範囲での巻き戻しによる一本鎖の生成である。E.coliの起点ではいくつかの蛋白質が連続して活性を持っている。DnaAが一連の9塩基対の繰り返しと13塩基対の繰り返しに結合し、解離した13塩基対の繰り返しのDNAと共に20〜40単量体からなる集合体を作る。DnaBはDnaCと共にヘリカーゼ活性を持ち、DNAをさらに解離していく。同じようなことはλ起点でも行われ、そこではバクテリア蛋白のDnaAとDnaCの代わりにファージ蛋白OとPが使われる。SV40の複製ではこれの活性のいくつかはT抗原の機能に結合している。
ΦΧの開始にもDnaB、DnaC、DnaTが必要である。PriAはΦΧ複製体が開始体に結合する場所(pas)を決める構成要素である。これはDNAからSSBを解離し、これにはATPの解離が必要である。PriBとPriCは開始体の付加的な構成要素である。
DnaAが結合する13個の単量体からなる結合サイトなどのE.coliの起点に存在するDamメチラーゼによりいくつかの場所はメチル化されている。複製サイクルの開始に続き、起点は半メチル化され〜10分だけ隔離された場所にいる。この時に起点は膜に結合し、複製の再開が抑えられる。
細胞分裂の後、真核生物の核は複製を開始するのに必要な認可要素を持っている。複製の開始の後にこれが壊れることで酵母では複製サイクルがもう一度起こるのを防ぐ。認可要素は細胞質から核に入ることはなく、有糸分裂の際に核膜が壊れる時にのみ置換わる。
第十四章 組み替えと修復
組み替えは関係するDNA分子同士による部分的物理的な交換である。二人の親鎖を先祖とするDNA二重らせんの結果は、それぞれの親鎖に由来する一つの鎖という混成(他二重らせん)DNAの結合により繋がる。修正は混成DNAの合わない場所において起こり得る。混成DNAはそれぞれの側にある標識間で組み替えが起こること無しに作られ得る。遺伝子変換は通常の(もしくは異常なやりかたで対立していない遺伝子間での)組み替えの間、幅広い領域の混成DNAが形作られている時に起こる。そしてただ一つの親鎖の配列に直される。そして一つの遺伝子はもう片方の配列を獲得する。組み替えはDNAで二重らせが壊れることで始まる。この壊れた場所は一本鎖末端をもつ溝が出来るまで拡大される。それから解離した一本鎖末端は対立配列と他遺伝子二本鎖を作る。解離が起こったDNAはそれが侵略している染色体の配列と実質的に結合する。よって開始DNAは複製体といわれる。組み替えの頻発地帯は二重らせんの解離が始まるところである。遺伝子変換の勾配は、一本鎖に変換される自由末端の近くの配列の類似性による。これは解離位置からの距離が遠いほど減る。
組み替えは染色体レベルではよく分かっていないが、酵母の変異の性質や減数分裂期の出来事間のタイミングの関係やら、接合子複合体は組み替えの開始の、先行条件というよりはむしろ結果であると分かる。
組み替えにより活性の特徴をもつ唯一の酵素はE.coliのrecとruv lociにコードされている。RecAはDNA分子の片方の鎖がもう片方の鎖に侵入する反応を支援することでDNA分子の相当組み替えのシナプスとなる能力を持つ。合っていないDNAは二重らせんの元々の鎖の内片方が置換わることで生まれる。RecBCDヌクレアーゼがDNAの片方のchi部位に結合し、chi配列に向かって進み、その間にDNAを巻き戻す。一本鎖の解離はchi配列において行われる。chi配列は組み替えの頻発地帯となる。RuvAとRuvBは合っていないDNAに作用し、RuvCはホリデイ結合を切る。
組み替えは、複製と(おそらく)転写と同じように、DNAの空間構造の変化を必要とする。トポイソメラーゼはDNAの超らせんをゆるめる(もしくは導入する)。そして組み替えや複製により連鎖したDNA分子のもつれを解く。
特定部位の組み替えに関与する酵素はこれらのトポイソメラーゼに関係した反応を持つ。ファージλの統合はファージInt蛋白とホストIHF蛋白を必要とし、DNAの合成をすることなしに正しい解離と再結合をする。この反応はファージDNAのattP配列がインタソームのヌクレオ蛋白構造へ巻き付くことを含む。インタソームはIntとIHFのいくつかのコピーを含む。そしてホストattP配列に結合し、組み替えが起こる。逆方向の反応にはファージ蛋白Xisが必要である。
バクテリアには、DNAの傷害や複製ミスに対しDNA配列を完全に保つ機構や、外部から来た配列を持つDNAを見分ける仕組みがある。
修復機構はDNA中の塩基の中で対を成していない、変えられた、欠損したものを見分ける。もしくはその他の二重らせんのねじれの間違いを見分ける。除去修復機構は損害を受けた近辺のDNAに溝を空け、一本鎖を除去し、除去されたものに置換わる新しい配列を合成する。E.coli中の三つの除去修復機構は除去される領域の大きさによって見分けられる。dam機構は複製中に正しくない塩基が結合したことによる不適合を修復する機構である。そしてuvr遺伝子は他の二つの一般的な修復機構に関与する。再結合修復機構はDNA二重らせんから情報を手に入れ、それを使って両方の鎖に起こった配列の傷害を直す。recBCとrecF経路は二つの異なる機構を定義する。recAの産物はその能力のうち片方の経路を修復し、DNA分子のシナプスとして働く。
recAのもう一つのSOS応答を引き起こす能力を持つ。RecAは傷害を受けたDNAにより活性化されるが、その仕組みは分かっていない。これはLexA制御蛋白が裂ける引き金となり、よって多くの遺伝子座の抑制を解き放ち、除去修復と再結合修復経路の両方の酵素の合成を引き起こす。LexAの制御下にある遺伝子はSOS開始ボックスを持つ。RecAはまたある修復活性体を直接活性化する。溶原ファージの抑圧物質の裂け目によりファージは溶菌サイクルに入る。
第十五章 移動遺伝子
原核細胞にも真核細胞にも、DNA配列が動いたりコピーしたりすることにより可動性をもつ、様々な移動遺伝子が存在する。移動遺伝子はゲノム内の存在としてのみ認識される。この可動性は独立した状態で存在しない。移動遺伝子は利己的DNAでありうる。利己的DNAとは、その存在しているゲノムの中でそれを永続するもののみに関係するものである。もし移動遺伝子がゲノムにある選択的利点を与えるなら、これは間接的に違いない。拘束されていない移動遺伝子はかなり損害を与えるため、 全ての移動遺伝子は移動のの幅を制限する機構を持っている。しかしその分子機構はそれぞれの場合において異なる。移動遺伝子の原形は終結領域での歪められた繰り返しと挿入領域での短い配列の直接的な繰り返しがうまれる事である。もっとも単純なタイプはバクテリアの挿入配列(IS)で、これは移動遺伝子活性を与える産物を持つ暗号読み枠の側面にある転化した終結配列からなる。混成移動遺伝子はIS要素からなる終結部分を持っている。ひとつ、もしくは両方のIS部分は移動遺伝子酵素活性をもち、それっらの間の配列(しばしば抗生物質耐性をもつ)は乗客として扱われる。
移動遺伝子に隣接する目的繰り返しの発生は遺伝子移動の一般的な特徴を反映している。目的部位はそれぞれのDNAである決まった距離(しばしば5か9塩基対)でよろめいた地点で空けられる。この移動遺伝子は実際的によろめいた切断面により生まれたはみだした一本鎖の間に挿入される。
IS要素は、複合移動遺伝子で、P要素は複製を伴わない遺伝子移動で移動する。つまりこの要素は供与部位から受容部位に直接的に移動する。ひとつの遺伝子移動酵素がこの反応に関与する。これは、"切断と配置"の機構で行われる。そこでは移動遺伝子は隣接するDNAから分けられる。移動遺伝子末端の溝は目的部位で切れ目が入れられ、そのずれた切れ目と移動遺伝子の末端が結合する。全ては遺伝子移動酵素を含む核蛋白複合体でおこる。供与体からの移動遺伝子がなくなると二重らせん破壊が起こるが、この後どうなるかはよく分かっていない。Tn10の場合は、遺伝子移動はDNA複製のあとすぐに起こり得る状態になり、その部位がdamに認識された時、メチル化機構が過渡的に半メチル化する。これは供与体が二つコピーを作ることを要求し、細胞が生き残る可能性を増す。
移動遺伝子のTnA族は複製的遺伝子移動によって移動する。供与部位の移動遺伝子が目的部位に結合するようになると、移動遺伝子二コピーを含んだ統合分子を生産する。二つの特定部位の間の再結合を含む解離反応がそれから移動遺伝子の二つのコピーを解離し、ひとつが供与部位に残り、もう一つが目的部位に行く。移動遺伝子にコードされた二つの酵素が必要である。遺伝子移動酵素は移動遺伝子の末端を認識し、目的部位に結合させる。そして解離酵素が部位特定的な再結合機能を与える。
ファージμはTnAと同じ機構で複製的遺伝子移動を行う。これは移動遺伝子との統合媒体を非複製的機構で使うことが出来る。この反応とIS要素の非複製的遺伝子移動との違いは溝を空ける過程が異なる順序で起こるということである。
植物の中でもっとも特徴のある遺伝子移動はトウモロコシの制御要素である。これはいくつかの族に分けられる。それぞれの族は一種類の自律要素を持っており、バクテリアの移動遺伝子が移動する能力に類似している。族はそれぞれたくさんの異なる自律的でない要素を持っている。これは自律要素の変異(主に欠如)に由来する。非自律要素は遺伝子移動の能力が欠けているが、もし自律要素がいて必要な分子間活性機能を与えるならば遺伝子移動活性やほかの自律要素の能力を示す。
挿入と切除の直接的な結果に加え、とうもろこしの要素はまた挿入した部位、もしくはその付近の部位の遺伝子の活性を制御することもある。これは発生制御となりやすい。遺伝子に挿入されたトウモロコシの要素は転写体からは削除されることがある。これはそれが単純に遺伝子活性を抑えていないという証拠になる。目的遺伝子表現の制御はたくさんの分子の効果が絡み、それには活性化物質の供給による活性化と転写後の出来事による干渉物質による抑圧を含む。
トウモロコシの要素(特にAc)の遺伝子移動は非複製的であり、おそらくその要素にコードされているひとつだけの遺伝子移動酵素が必要である。D.melanogasterのP要素は混成発育不全に関係しており、これは種分化の前駆体となり得る。P要素を運ぶ雄とそれの欠けている雌との交配は不妊の混成体を作る。P要素は四つの開いた読み枠を持ち、イントロンで分けられている。最初の三つの読み枠を接合すると66kDの抑圧物質が生まれ、これは全ての細胞で起こる4つ全ての読み枠を接合すると87kDの遺伝子移動酵素が生まれる、これは生殖細胞系において、組織特異的な接合過程を経て行われる。P要素は抑圧体がない細胞質において移動できる。これらは非複製的な"切り貼り"機構によって遺伝子移動を起こす。この爆発的な遺伝子移動により無作為な挿入がおこり、ゲノムは不活性化する。完全なP要素だけが遺伝子移動酵素を生産できるが、欠陥のある要素もこの酵素により分子間で移動できる。
古ウイルスと古遺伝子
逆転写は古ウィルス再生や古遺伝子の挿入についての統一された機構である。それぞれの要素タイプでのサイクルは原則的に似ている、しかし古ウィルスはたいてい自由なウィルス(RNA)の形で見られ、一方古遺伝子は遺伝子(二本鎖DNA)の形で見られる。古ウィルスは二本鎖DNAを媒体として複製される一本鎖RNAのゲノムを持つ。個々の古ウィルスはゲノムを2コピー持っている。そのゲノムはgag,pol,envの遺伝子を持っており、ポリ蛋白により翻訳される。ポリ蛋白は小さな機能蛋白に分けられる。Gag、Env構造体はRNAを梱包すること、成熟ウィルスを生産することに関係する。Pol構造体は核酸合成に関係する。
逆転写酵素はpolのしぃ用構造体である、そしてウィルスの(プラス鎖の)RNAのコピーとして(マイナス鎖の)DNAを合成する役割を持つ。生産されたDNAは鋳型RNAより長い。鋳型鎖を変えることで逆転写酵素はRNAの3'配列をDNAの5'末端に、RNAの5'配列をDNAの3'配列にコピーする。これは特徴的なDNAのLTR(長末端反復)を生む。DNAのプラス鎖がマイナス鎖を鋳型として合成される時も似たような鋳型の変化が起こる。直線二本鎖DNAは統合酵素により宿主ゲノムに挿入される。統合されたDNAの残りのLTR内の開始因子からの転写によりさらにRNA配列がコピーされる。
核酸合成中の鋳型の変化はコピーの選択で再結合をするかどうかを決める。感染サイクルでは古ウィルスはその普通の配列を細胞の配列に取り替える。その結果ウィルスは普通は複製欠陥となり、しかし助けとなるウィルスとともに共同感染により挿入される。多くの欠陥ウィルスは細胞遺伝子(c−onc)のRNA版(v−onc)を持っている。onc配列はv−oncの中で発現すると細胞が不妊表現形と変わるような多くの遺伝子の一つである。
(DNA経由の移動可能な移動遺伝子のように)挿入過程は直接的に目的の繰り返しを生む。挿入された原始ウィルスはそれゆえ直接的なLTRの末端の繰り返しを目的遺伝子の短い繰り返しの隣に持っている。哺乳類と鳥類のゲノムは遺伝子内の(不活性な)そのような構造を持つ原始ウィルスを持っている。この組織の他の要素は多くのゲノムで見つかる。もっとも有名なのはS.cerevisiaeとD.melanogasterである。酵母のTy要素と蝿のcopia要素は逆転写酵素に類似した配列を持っているそしてRNA形を経由して移動できる。それらはウィルスに似た分子を生産するが感染能力を持たない。哺乳類ゲノムのLINES配列は古ウィルスから大昔に除去されたが、同じ起源を持つというのに十分な類似性を保っている。
古遺伝子のほかの階級はRNA経由で遺伝子移動をしたという特徴がある。しかしなにもコードしていない(もしくは少なくとも古ウィルス機能に似ていない)配列である。それらは古ウィルス風の遺伝子移動過程を経て乗客として複製開始をする。その中でRNAは逆転写酵素のために標的とされる。加工された偽遺伝子はこの過程を経て生まれる。加工過程から複製開始するらしい特に優勢な族は人のAlu族を含む哺乳類のSINESである。7SLsnRNA(SRPの構造体)を含むsnRNAの中にはこの族に似たものがある。
第十七章 DNAの再配列
酵母の接合形はMAT座がa配列を持っているかα配列を持っているかによって決まる。染色体が半数の細胞のMATでの配列の発現は接合形の特異性を表す遺伝子の発現を促し、もう片方の接合形の特異性を表す遺伝子を抑える。活性化と抑制は転写の制御により達成され、MATの産物と同様に接合形に特異的でない要素を必要とする。どちらかの接合形が活性化される機能には、適切なフェロモンの分泌と細胞表面に反対の形のフェロモンを受容する受容体が発現することも含まれる。どちらかのフェロモンと細胞の受容体の相互作用は膜上のG蛋白の活性化を引き起こし、続いて細胞が胞子形成する準備をする一般的な経路を繋ぐ。二倍体細胞は接合形機能を発現しない。加えて、接合形配列の隠れたコピーがHMLαとHMRa座で運ばれる。それらはsir座の活動により抑圧されている。HOエンドヌクレアーゼを運ぶ細胞はHMLαの配列をMATのa配列に置き換え、HMRaの配列をMATのα配列に置き換えるという一方向の転位過程を見せる。このエンドヌクレアーゼはMATでの二本鎖の解離を引き起こし、自由末端がHMLαかHMLaかに侵入する。MATはこの転位過程を開始するが、新しい配列の受容体でもある。HOエンドヌクレアーゼは母細胞で転写されるが娘細胞では転写されない。そして細胞周期制御下にある。よって交換は分裂の産物としてのみ見付けられ、両方の娘細胞で接合形は交換される。
べん毛虫の一種は>1000の表面抗原をコードしている配列を持つ。ひとつの可変性表面糖蛋白のみが染色体末端に近い活性部位からひとつの細胞で発現する。可変性糖蛋白は遺伝子転換過程を経由して活性部位において新しい暗号配列と置換わるか、発現部位を他の染色体末端に変えることで変わる。発現の交換は1000〜100000の分裂毎に起こる。
Agrobacteriaは傷ついた植物細胞の中で腫瘍の形で感染する。傷ついた細胞はバクテリアのTiプラスミドが運ぶvir遺伝子を活性化するフェノール性の化合物を分泌する。vir遺伝子の産物はこのプラスミドのT−DNA領域から作られた一本鎖DNAを植物細胞核に転移する。転移はT−DNAの一つの境界から開始するが、終るのは様々な部位である。この一本鎖は二本鎖に転化し、植物ゲノムに挿入される。T−DNA転位体を含む遺伝子は植物細胞を変異させ、特別なオパイン(アルギニンの誘導体)を生産する。Tiプラスミド中の遺伝子はagrobacteriumに変異した植物細胞が生産するオパインを代謝させる。
遺伝子中の配列は培養細胞では増幅されることがある。メトトレキサート(訳注:薬の一種)にさらすと蓄積した細胞はdhfr遺伝子のコピーを余分に作る。このコピーは余分な染色体列、二重微少"染色体"として運ばれる、もしくはdhfr対立遺伝子の一つの部位においてゲノムに挿入される。二重微少染色体は不安定で、選択的な圧力がなくなればすぐに細胞列から消える。増幅されたコピーは再結合過程に連動した付加的な複製周期により開始される。
DNAの新しい配列は培養細胞にトランスフェクションで、もしくは動物卵にマイクロインジェクションにより導入される。外来の配列は大きな直列配列としてゲノムに挿入され得る。この列は培養細胞のなかである単位として遺伝される。挿入の部位は無作為に見える。遺伝子感染動物は挿入過程が生殖系列に入る遺伝子に起こった場合生まれる。感染遺伝子もしくは遺伝子列はメンデルの法則に従い遺伝するが、コピーの数や遺伝子の活性は子孫によって異なる。しばしば感染遺伝子はゲノム内の遺伝子と同じような方法で組織や一時の制御に対応する。同一原の再結合を促進する環境を使うと、不活性な配列が機能を持った遺伝子に置換わり、よって無駄な座を作る。遺伝子感染ネズミは受容胚盤胞に感染DNAを持つES細胞を注入することで生まれた。