Hour of the Pig / The Advocate

    

    不遇だった「ティリー・イヤーズ」に撮った1作ではありますが、コリンお得意の

    コスプレだし、相当お金かけてるし、豪華な脇役陣といい、ユニークなストーリー

    といい、お蔵入りするにはもったいない見応え十分の力作。

    もし、「未公開ビデオを1本だけ買いたい」という人がいたら、私なら間違いなくこの作品を

    おすすめします。なんてったって、コリン自身が「日本の皆さんにも見てもらいたいな」とプ

    ロモートしていたんですから!*

    (*93年12月に国際学生映画祭の審査員として、メグ・ティリーを伴って来日した時

    のインタビューでのコメント。)

    

    コリンのフィルモを調べた方はお気づきでしょうが、この映画はヨーロッパではHour of the Pig 、

    アメリカではthe Advocateとタイトルが違います。先行封切りしたヨーロッバ版は

    その大胆な性描写のためアメリカでは成人映画指定(NC-17)になってしまうということで、

    やむなくあっちこっちをカットしてやっと全米公開にこぎつけたという「曰く付き」の作品。

    たしかに中世の猥雑な風俗を忠実に再現したいという監督の意図を反映して濡れ場も裸も

    たくさんありますが、どちらかというと大らかでユーモラスな感じです。

    日本のビデオプレーヤーで再生できるのはアメリカ版ですが、カットされたのはあまりプロットに

    差し障りのないところばかりなので、悔しがらずにこれで我慢しましょう。ただ、アメリカ版は

    ご親切にもキャプションやナレーションで時代背景などの説明を入れたため、お手軽な感じになってしまい、

    ミステリアスな雰囲気が薄められたように思います。なお、ノーカット・ヨーロッパ版ではコリンの背中に

    引っ掻き傷が見え、これは撮影中についたのか、はたまたプライベートでついたのか、とあらぬ想像を働かせる

    不埒な輩が大勢いました。と、ここまで書くからには私は両方見ています、ハイ。

    
    これは、一応ミステリーですので、ご自分で見る予定のある方はこれから先は読まないで。

    

    「暗黒の時代」と言われた中世15世紀、フランスの片田舎アヴェビーユへ一人の若き弁護士が

    やってくる。この弁護士リチャード・クルトワ(コリン)は、虚飾と欺瞞に満ちたパリの生活に飽き、

    これからは田舎の素朴な生活を楽しみながら、弱き庶民のためにその才能を捧げようという理想も志も高く、

    そしてちょっと単純な青年。しかし、田舎の生活は思ったほど牧歌的でもなければ、

    人々も素朴で人がよいというわけでもなかった。また彼が担当する裁判は、どれも都会の常識では

    考えられない奇妙なものばかり。最初の裁判こそ都会で修得した知識と経験で成功したクルトワだが、

    人々の無知と迷信、それに正義など無視した法廷にはそれも通用しないことが次第に分かってくる。

    

    クルトワの依頼人の中には、なんと一頭の黒豚がいた。(当時は動物にも人間と同じ法律が適用されていた。)

    この黒豚、もともとジプシーに飼われていたものだが、ユダヤ人少年殺害のかどでしょっぴかれたらしい。

    豚の弁護なんてばかばかしい、とやる気のないクルトワだったが、飼い主のジプシー娘からは色仕掛けで

    弁護を頼まれるし、領主(ニコル・ウィリアムソン)からは「ルールと秩序を守るために」さっさと

    豚を片づけろと圧力をかけられ、さらに世故に長けた坊さんアルベルトゥス(イアン・ホルム)も

    「何も疑わずに豚を犯人に仕立てた方が身のため」とほのめかす。しかし、ひょんなとこから過去にも

    同様の事件があったことを知り、明らかに人間による悪意に満ちた犯罪の臭いをかぎつけるクルトワ。

    そして、周囲に翻弄されながらも、彼はのどかな田舎に潜む暗部を知ることとなる...

    

    さすが、「コスプレの帝王(おお〜なんかあやしい)」コリンであります。

    変ちきりんな中世のコスチュームもおかっぱヘアもカッコよく見せて花マル。

    また、法廷シーンでの堂々とした弁護士ぶりも実にはまっていて、いつか現代物で弁護士役を

    見てみたいと思わせます。それにそれに、ウッシッシ、「だって〜中世なんだも〜ん♪」と気前よく脱いじゃう

    コリン君でありますよ。でも、一番の収穫は、コリンのコメディーセンスを堪能できることでしょう。

    本人はいたって真面目なのに周囲とズレてておかしいというボケ演技は、実はコリンの得意とするところで

    ありまして、「アパートメントゼロ」や「フィーバーピッチ」でもそのセンスは生かされています。

    

     また、脇を固める演技陣がすごい。免罪の代償をちゃーんと頂戴する生臭坊主にイアン・ホルム、

    「富こそ権力と秩序」という実利主義者でありながらその裏にもう一つの顔を持つ領主に

    ニコル・ウィリアムソン、かつてはクルトワと同様に理想に燃えた法律家でありながら、

    しだいに腐敗した風土になじんでいった老検察官にドナルド・プレゼンス、それにクルトワの助手に

    「ひと月の夏」のお人好し駅長でお馴染みのジム・カーター。ついでに、共演の黒豚ちゃんはとっても

    気むずかしくて、よく周囲の人間にかみついたり、後ろを向いて「ブッ」とかましたらしいですが、

    「相手役」のコリンにはそんなことは一切せずにとてもよくなついていたそうです(この豚ちゃん、メスです)。

    お膝の上でスヤスヤお昼寝までしたそうな! コリンの膝の上でだよ〜。たとえ豚といえども、

    これは職権濫用というべきではなかろうか。

    

    ジャンルとしては、ブラックコメディー&ミステリーでしょうか。ジットリとした中世の雰囲気の中で、

    お色気も風刺もミステリーもロマンスもごった煮にした作品。突飛な内容ながら、

    実話に基づいているというところがまた驚きです。真犯人がすぐに分かっちゃうのはご愛敬。

   

    FoFのRole Projectでも紹介されていますので、フィルモグラフィーのページから

    たどっていって下さい。

    Thanks to Sharon and Barbara for the use of information and review.

       


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