目を開ければ薄闇の中。
行燈のぼんやりとした灯りが、そのひとの輪郭を浮かび上がらせている。
ずっと、寝顔を見られていたのだろうか。

「夢でも見ていたか」

泣きたくなるくらい優しい夢。

「ええ・・・。不思議な夢でした。」

器量のいい女達に囲まれて、穏やかに過ぎる日々。
貴方がいないというのに、
日々の雑務に追われて、顧る余裕もない。

顧る?

「どうした?」

何を顧る必要があるのか。
貴方はここにいるのに。

「いえ・・・。」

本当に不思議な夢。



「おはよぅさーん!」
景気のいい音を立てて襖が開かれた。
強烈な朝日に照らされて、無意識に身動ぐ。
「あれ。珍しいなぁ、蘭兵衛はん。寝坊?」
逆光で見えないが、馴染んだ声は確かに。

「・・・極楽?」

「はいな。」
不思議そうに、小首を傾げた。
「夢でも見てたん?」

眩しくて目が開けられない。



「どうした・・・夢でも見ていたか」
変わらない薄闇の中、行燈がぼんやりと燈っている。
その姿は、変わらずそこにあって。
眩暈がする。

現実感のない、
体を、心を、
持て余して、その首に縋りついた。

気が、狂ってしまいそうだ。

眼前の喉に爪を立てる。
「どれ・・・が、現実、だ?天魔・・・」

滴がひとすじ、伝っておちた。




アトガキ。みたいなの。

夢見酒飲まされてぐるぐるしてる蘭ちゃんのハナシ。です。
ハナシっつーか・・・散文。詩?(爆)
こんなのでも、書き上げるのに2ヶ月くらいかかってるあたり・・・(汗)


狭間

2002.02.02
モドル