ごろごろと卓の上に転がされたそれは、季節外れの

映日紅(いちじく)

「珍しいな。どこで見つけた?」
手に取れば、今にも潰れてしまいそうなほど。
紅く、熟した実。
「この裏の谷で見つけたんだ。まぁ、食えよ。」
「今、みんなも呼んで…」
「食え」
夕暮れ。
逆光でも黄金(こがね)に発光して見える瞳に逆らえず、紅い実を剥く。
紅い外見からは想像し得ない白い身。

ひとくち。

甘い苦味が口蓋に広がる。

ふたくち。

白い身に包まれた紅い肉に辿り着く。
毒のような甘さが喉に広がって。

みくち。

食す様をずっと、見つめられて、いる。
嚥下される紅い肉を追って、喉を食まれて。

よくち。

「ぜんぶ、きれいに食えよ。」

手に付いた滴まで嘗め取れば、もうひとつ、差し出される。

「すべて、お前の血肉にしてくれ。」

また紅い実を剥く。
日の紅さを映す実を。




アトガキ。みたいなの。

既刊のタイトルを思い直してみて、唐突に思い付いたいつも通りの散文です。
なんかこう…素手で果物食べてる様とか、割とエロいなぁと思いながら書いてみました。笑。
正味20分仕上げ。いつもこのくらいで描けたらなぁ…。

おっと。書かないと分かりませんね。日×月ですヨ。


映日紅

2004.09.20
モドル