顔が見えなければいい。
いつも、その顔に騙される。


「とりあえずの処置はしておいたよ、コムイ」
『本当に‥‥ありがとう』
瀕死だった、白髪の少年を保護した。
使徒の番人が『時の破壊者』と予言した少年。
彼の存在を教団内で知らぬ者はない。

発見された時は、瀕死「だった」。

『この奇跡は予想してなかった』
「奇跡か‥」
人はそれを奇跡と呼ぶだろう。
実際、この男もそう言った。
だが、声音はそう言っていない。
「奇跡」だ、と信じている訳ではないのだろう。
単に「奇跡」という都合のいいオブジェクトで、この現象を説明しただけだ。

声だけなら、分かる。
何を感じ、何を信じ、何を思っているのか、が。

実年齢より老成した、
(その分、疲労を含んだ)
声。

顔を見ると騙される。

「本部はまだ慌ただしいのか?」
『いや、もう大分落ち着いたよ』
「ではとりあえず休む事だな。今倒れられてはかなわない。」
『‥‥ボクの体の心配してくれてるの、バクちゃん』
実に意外そうな声音が聞こえてきた。
その呼び方はやめろ!と、叫びそうになるのを抑える。
近頃堅かった声音が緩んだだけで良しとしよう。



アトガキ。みたいなの。

59夜パロ。屈折したバクちゃんの想いでした。
声だけでいいって‥‥声優さんみたいなもんですかねぇ。顔いらないって(酷)
ホント時々降りてくるんだなぁ‥‥文章の神様。
時と場合を選べないのが難ですが。
正味30分仕上げ。‥‥仕事場で(爆)


HEART TEL.xxx

2005.09.03
モドル