終わった後の気だるい時間。 いつもなら風呂に入るか、そのまま朝まで眠ってしまうのに、今日は水割りなんか作ってくれちゃったりして。 「どしたの、今日は?なんか優しくない?」 差し出されたグラスをベッドの中で受け取って、警戒心を露にする。 だっておかしいでしょ。どう考えたって。 この行為に対して積極的じゃないし、楽しんではいないみたいだし。 ま、『悦んで』はいるみたいだけど(笑) 「いや・・・しばらくお前と落ち着いて話してないなと思って。」 いい機会だし、と自分のグラスに口をつけつつ、ベッドの端に腰を下ろした。 「話ィ?あ、俺達の将来のこととか?大丈夫、責任はちゃんと取りますよ。なんなら知り合いの神父に頼んで結婚式も挙げよう。バージンロードも誓いのキスも指輪交換もライスシャワーも、空き缶ぶら下げたスポーツカーで新婚旅行もしよう。二人で幸せになろうな。」 いつもなら入るはずのツッコミがない。代わりに、意外なほど真剣な眼差しが注がれていた。 口から先に生まれてきたことを、ほんのちょっぴり後悔した。 「お前さ・・・俺とするの楽しい?」 「はァ??」 思わず、力一杯聞き返してしまった。聞き返されて、耳まで赤くなってる。カワイイ。 じゃなくて。 ソレが「ゆっくり話したいこと」なのか? 「なんでそんなこと聞く訳?」 イマイチ質問の意図がわからない。いい意味にも取れるし、悪い意味にも取れるじゃないか。 「どうして俺と寝たがるのかなって。」 う・・・そりゃないんじゃない?そりゃぁ、冗談混じりの時の方が多いけどさ、もうズ――――っと前から言ってるじゃない。 確認のつもりでもう一度。 「おれ、結城ちゃんのことが好きなんだけど。」 「だから、好きだったら別に一緒に居るだけで十分だろ?」 ましてや男同士だし、って? オイオイオイ―――小学生じゃあるまいし、そいつは男として、一匹のオスとしてマズくない? 茶化し用の言葉が一通り頭を過ぎったけど、存外に相手が真面目なのを見て、こちらも少々真面目に答えを考えてみる。 「うーん・・・ホラ、アレだ。子供が好きな仕掛け絵本みたいな。自分がすることで、相手が反応するのが楽しいんだよ。好きな相手なら尚更さぁ。こっち触って『あんv』そっち触って『うんv』とか言われたら嬉しいだろ?」 理屈抜きで体は先にソノ気になっちゃうから、それ以前の問題なんだけど。 仕掛け絵本と同レベルか、という視線に、愛してるよ〜という笑顔を返してやる。 「そんなもんか?」 ちょっと疑わしげだけど、納得はしたみたいだ。 「そんなもんだって。」 やっと一口、水割りを口に運んだ。焼酎の甘さと苦味が喉を落ちていく。 はー。落ち着くねぇ。体から力が抜けていくよ。 グラスが手から滑って落ちた。ベッドにシミが広がっていく。 マズイマズイ、とシーツを剥がそうとしたんだけど、上半身はそのままベッドに突っ伏してしまった。 「あ、ら―――――?」 起き上がろうとしても、腕に力が入らない。 優しく抱き起こされて、そのまま組みしかれた。 ちょっと待て。なんだ、この体勢は?なんだ、なんだ?? 「ゆ・・・ゆうきひゃん?」 舌も回らなくなってる。 「顔に落書きでもしてやろうと思ってたんだけど・・・丁度良かったよ。」 目付きはヒトゴロシのままで、あまり質の良くない笑みを浮かべている。 昔、一度だけこの笑みを見たことがある、ということに思い至った。 あれは学生時代、学園祭実行委員で忙殺されているところへ、某F後輩のお蔭で余計な仕事まで負う羽目になったときだ。曰く『後輩のために先輩がしてやるべき指導』を思い付いた時も、同じ笑みが浮かんでいた。あの時ばかりは某F後輩に同情したっけ。 って、今まさにその状態じゃない!(汗) 「お・・・おちつけ、ゆうき。はなしあおう。」 「話し合った結果、こうなってるんだろ。おれにもお前のいう『楽しみ方』とやらを教えてくれよ。」 これ程夢オチであって欲しいと願ったことはない。って位、夢オチであることを願ったけど(混乱してきたぞ)、夢であれ現実であれ自分でどうこうできるわけでもなく、体重が移動して軋むベッドの音を他人事のように聞いた。 あ〜健三クンの運命やいか〜に〜ィ アトガキみたいなの。 頭ワルイ話でスミマセン・・・。 この後本当に夢オチになるか、そのままどうにかなっちゃうか(爆)は、皆様のご都合の良い方でどうかひとつ。 ・・・ゴメンナサイ。脱兎。 | NIGHTMARE 2002.06.20 裏WORKトップ |