ITALIA ~ ITALIA  - VENEZIA-5

~ サン・マルコの馬達 ~
『ヴェネチア共和国』は、西暦697年から1797年まで1100年間も続いた「都市国家」でした。

地中海交易の覇権を握り、ヨーロッパでも有数の富裕国として栄えたのですが、
もともとは資源も人口も、「乾いた地面」すら無い所だったのです。

何故そんな国が栄え、そして存続し得たのか?

その答えは、サン・マルコ大聖堂の前に置かれた『4頭の馬』を見れば分るような気がします。

大聖堂の正面に飾られた青銅製の馬は、実はローマ時代に作られたもの、約二千年前の傑作です。

西暦1204年、フランス諸候とヴェネチア共和国からなる『第四次十字軍』は
イスラム勢力からエルサレムを奪還すべく、4万人の軍勢の大艦隊をくり出しました。

ところがアドリア海を南下の途中、ビザンチン帝国の皇位継承争いに巻き込まれ、
同じキリスト教国の首都、コンスタンチノープル(現イスタンブール)を攻撃してしまったのです。

当時の戦争の常として、占領軍は三日間の略奪行為を行い、(キリスト教徒相手に!)
『東のローマ』と呼ばれたこの都市の財宝を奪い、破壊したのでした。

この4頭の馬達は、その時の戦利品なのです。

後世の私達から見れば、「盗んで来たものを堂々と飾るなんて?!」と呆れてしまいますが、
お陰様で、このローマ時代の傑作は完璧に保存され、
更にこの戦いでヴェネチアは、東地中海での覇権を確立したのでした。

『理想主義者』からはどんなに非難されようと、徹底的な『現実主義者』であること、
そして、モノの『価値』を感じ取るセンス、
交易だけで国家を存続させる、ということの「見本」のような気がします。


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