地中海交易の覇権を握り、ヨーロッパでも有数の富裕国として栄えたのですが、
もともとは資源も人口も、「乾いた地面」すら無い所だったのです。
何故そんな国が栄え、そして存続し得たのか?
その答えは、サン・マルコ大聖堂の前に置かれた『4頭の馬』を見れば分るような気がします。
大聖堂の正面に飾られた青銅製の馬は、実はローマ時代に作られたもの、約二千年前の傑作です。
西暦1204年、フランス諸候とヴェネチア共和国からなる『第四次十字軍』は
イスラム勢力からエルサレムを奪還すべく、4万人の軍勢の大艦隊をくり出しました。
ところがアドリア海を南下の途中、ビザンチン帝国の皇位継承争いに巻き込まれ、
同じキリスト教国の首都、コンスタンチノープル(現イスタンブール)を攻撃してしまったのです。
当時の戦争の常として、占領軍は三日間の略奪行為を行い、(キリスト教徒相手に!)
『東のローマ』と呼ばれたこの都市の財宝を奪い、破壊したのでした。
この4頭の馬達は、その時の戦利品なのです。
後世の私達から見れば、「盗んで来たものを堂々と飾るなんて?!」と呆れてしまいますが、
お陰様で、このローマ時代の傑作は完璧に保存され、
更にこの戦いでヴェネチアは、東地中海での覇権を確立したのでした。
『理想主義者』からはどんなに非難されようと、徹底的な『現実主義者』であること、
そして、モノの『価値』を感じ取るセンス、
交易だけで国家を存続させる、ということの「見本」のような気がします。