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「 手のひらの上の建築 」vol. 2
〜 小林京和のジュエリー世界 〜

2010年 9月20日(月)〜25日(土)
午前11:00〜午後7:00(無休)
AC.Gallery (銀座/東京)

「手のひらの上の建築」をコンセプトにジュエリーを制作してきました。
ステンレスやチタニウムを素材として、構造体・幾何学形態の持つ可能性、
足すことも引くこともできない「理性的な美しさ」を追求しています。

二回目となる今回は、「数学的な泡」をモチーフに、新作の幾何学形態を展開しています。
イメージの基になった文章と一緒に、会場風景をお楽しみください。



試作の模型たち





" K "
( kelvin )
choker type -1 / Stainless Steel
2010

今回の作品は『空間充填図形』の一種で、「泡の幾何学的な形ではないか?」と考えられてきた形を基本にしています。

体積に対する表面積が最も小さくなる形は「球」ですが、(したがって、シャボン玉は球になります)
「泡の形」は、空間を隙き間なく充填する多面体でありつつ、表面積が最も小さくなる多面体のパターンへと収斂(しゅうれん)していくはずです。

今から100年ほど前、イギリスの科学者・ケルヴィン卿は、
「『切頂八面体』(正方形6枚・正六角形8枚で出来た14面体)が、「泡」の理論的な形ではないか?」
との説を唱えました。(『ケルヴィン予想』)

この『ケルヴィン予想』は、厳密な数学的証明が出来ないまま、「どうやら正しいだろう」と思われて100年が過ぎました。
ですが、1993年にコンピューター計算による「反例」が見つかり、今は否定されました。

泡の形が一種類と仮定した場合は『ケルヴィンの14面体』が最も表面積が少ない多面体なのですが、
「二種類の形の泡が組み合わさっている」と仮定してみた場合に、0.3%ほど表面積が少ないパターンが見つかったのです。

この形は、発見者の名前から『ウェア・フェラン バブル』と名付けられ、
最近では、北京オリンピックの「水立方」という建物の外壁のデザインに使われています。
どうやら、自然界の「泡」は、こちらのパターンを採用したようです。

*

今回の作品" K " (kelvin )シリーズは、自然界の泡とは少し違う形なのですが、『ケルヴィンの14面体』を基本形にしています。
この形のパターンは、「一種類の部品」の組み合わせだけで隙き間なく、どんどん増殖させていくことが可能です。

作品を制作しながら、この形はとても軽く、さらに丈夫で安定した形であることを実感しています。
これはとても興味深く、何の役にたつのかはさっぱり分かりませんが、とてもワクワクした気分になりました。

今まではジュエリーを中心に制作をしてきましたが、今後はさらに大きなオブジェ的な作品も展開していこうと思っています。
作者:小林 京和


photo :  "AC Gallery "  Sep.2010

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