知らなかった、本当に知らなかった。
物心ついた時から、あなたの事をずっと「トノサマ」だと思っていた。
子供の頃、あなたは僕にとって「トノサマ」以外の何者でもなかった。
いや、僕だけじゃない、周りの友達も子供たちも、大人たちですら「トノサマ」だと思っていた。
トノサマだと、トノサマだと思っていたのに・・・。
それなのに、それなのに。
いいえ、あなたが悪いわけじゃない。
あなたは一言も自分が「トノサマ」だとは言っていなかった・・・。
だけど、だけど、だけど・・・、
トノサマだと、トノサマだと思っていたのに・・・。
あなたは、僕の一番のお気に入りだった。
池や沼や小川に、ぼくはあなたの姿をいつも探していた。
あなたを見ると、ぼくはうれしかった。
あなたをいじめた事もあった、でもぼくはあなたが好きだった。
トノサマだと、トノサマだと思っていたのに・・・。
アマでもウシでも、ましてやガマでもない、
「トノサマ」の称号にふさわしい姿、そして声、だからこそ・・・、
トノサマだと、トノサマだと思っていたのに・・・。
あなたが「トノサマ」だったから好きになったんじゃない。
でも、あなたが実は「ダルマ」だったなんて・・・。
確かにあなたは「トウキョウ」の名前を冠にいだいている、でも「ダルマ」だったんだ。
トノサマだと、トノサマだと思っていたのに・・・。
でも、ぼくはあなたがすきだ。
たとえ「トノサマ」じゃなくても。
・トウキョウダルマガエル
関東地方で「トノサマガエル」と呼ばれているカエルは、実はトウキョウダルマガエルである。
(トノサマガエルは関東地方にはいない、とされている。)
トノサマガエルとは、通常の姿勢で後ろ足の「かかと」が付いているか離れているか等で見分けることができる。
|