2001年 9月16日

プロジェクトX(バツ)〜敗北者たち〜制作秘話


 NHKで放送されている「プロジェクトX 〜挑戦者たち〜」が、国内だけではなく、海外在住の邦人の間でも人気だそうである。
 この番組を見る都度、「こんなプロジェクトに参加できるなら、苦労もいとわないのに」とか「同じ苦労をするなら、こんな仕事で苦労したい」と思う人も、少なくないだろう。
 (当然、HARIもその一人だ。)
 
 その考えは、今でも変らない。
 だが、ちょっとカッコ良すぎる事が気になりだした。
 
 「プロジェクトX 〜挑戦者たち〜」は、プロジェクトの中心となった、又はポイントとなった部分を担当した数名のメンバーを中心に話が進んでいく。
 だが、その影にはさらに多くのメンバーが参加している筈であり、そのメンバーも苦労している筈である。
 (番組に取り上げられた数名のメンバー以上に苦労しているメンバーも存在しているだろう。)
 又、プロジェクトは成功しても、プロジェクトに敗れていったメンバーだって存在しているはずだ。
 (H2ロケットのエピソードでは、事故の責任を取って現場を退いた方のエピソードがあるが、そんな「日本人好みの退場」では無く、「プロジェクトに負けた」「自分に負けた」あるいは「プロジェクト(会社)に潰された」人達も存在しているだろう。)
 そういった人達は、語られる事は少ない。
 ましてや、「プロジェクトX 〜挑戦者たち〜」で放送されているプロジェクトは、成功したからこそ取り上げられているのであって、その影には「失敗した無数のプロジェクト」が存在しており、失敗したプロジェクトの参加メンバーは「成功したプロジェクトと同じ、またはそれ以上の苦労をしている」のだ。
 
 実は、コンピューター雑誌で「失敗したプロジェクト」を取り上げている企画があった。
 「日経コンピューター」の「動かないコンピューター」である。
 (現在もその企画が続いているかは、HARIが日経コンピューターの購読を辞めたので定かでは無いが。)
 ソフト業界に勤めている方の間では有名な企画であり、HARIは「日経コンピューター」で一番の企画だと思っている。
 (実際、この意見に賛同してくれる知人も少なく無い。)
 もちろん、失敗したプロジェクトのメンバーの苦労談だけが掲載されている訳ではない。
 失敗の原因、失敗に至る経緯、記事に書かれている事は、少なくても「成功事例」よりよほど参考になる。
 (そういった意味では、最初のWindowsNTであるNT3.1開発物語「闘うプログラマー」は「泥臭い話」も書かれており、好感がもてる。)
 
 通常、コンピューターのシステム開発プロジェクトは「ソフト開発会社やシステム・インテグレーター」に発注される。
 そして、受託した「ソフト開発会社やシステム・インテグレーター」はユーザーと打ち合わせをしながらシステムを設計しプログラムを作り、納期迄に納品する。
 当然、受託した「ソフト開発会社やシステム・インテグレーター」は責任がある訳で、小規模なプロジェクトでもカットオーバー直前では「休日出勤」「徹夜」となる事が珍しくないし、大規模な物ではこれに加えて「倒れる」「病気になる」果ては「出社拒否」から「行方不明(会社に内緒で引っ越しして、行方をくらます)」になる者が発生するのが常である。
 (もっとも、「行方不明になる」のは、受託した「ソフト開発会社やシステム・インテグレーター」の「協力会社(つまり、受注会社の下請け)」の社員の場合が殆どであるが・・・。)
 これは、決して冗談ではない。
 もし嘘だと思うのなら、それなりの規模を持つシステム開発プロジェクトに参画した事のある人に確認してみると良い。
 (ただ、ごく希に「そういった修羅場を経験した事が無い人」が存在する様ではあるが・・・。)
 そういった「苦労」はプロジェクトが無事終了してこそ報われるのであって、失敗したらまさに「無駄な時間」にしかならない。
 
 今回、「HARIの妄想ライブラリ」に掲載した「プロジェクトX(バツ)〜敗北者たち〜」に出てくる会社、人物、プロジェクトは、全て架空の物である。
 従って、実在する会社、プロジェクト、システム、人物とは一切関係がない。
 しかし、全くのフィクションでは無い。
 
 「プロジェクトX 〜挑戦者たち〜」で取り上げられたメンバーの裏には、多くの「語られることの無いメンバー」が直接的・間接的に彼らを支えており、「成功したプロジェクト」の栄光の陰には、さらに多くの「失敗したプロジェクト」が存在する。
 
 そういった人達、プロジェクト達に、「HARIの妄想ライブラリ 妄想設定」にある「プロジェクトX(バツ)〜敗北者たち〜」を捧げたい。
 
 ・・・、彼らは迷惑かもしれないが・・・。
 



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