2001年2月24日

ファンダム、大地に堕つ


 

 今日では「伝説」と呼ばれるアマチュア制作のアニメを久々に観た。
 ELOの「TWILIGHT」をBGMに展開させるその作品は、不思議なことに作成されてからかなりの時間が経つにもかかわらず、画面から発せられる力は衰えていなかった。
 そう、まさに「この作品」を作る為の情熱が今なお閉じ込められているかのようだった。
 「良くも悪くも「アマチュア」精神が画面から伝わってくる」見終わった後の感想は今も昔も変わらない。
 分かる人には受けるが、分からない人のは全く分からないであろうこの作品は、「見る人を選ぶ」アニメでもある。
 かつて、これほどの作品を生み出すパワーが、日本のSFファン、アニメファンにはあった。
 (ちなみに、その作品に携わった主要メンバーは、今日ではその筋では著名人である。)
 今でも、ファンが持つパワーは衰えているとは思えない。
 しかし、そのパワーをつぎ込む「方向」は、どうだろうか?
 
 少し前、著名なガレージキット即売会が1回休会した。
 その時に主催側スタッフが出展グループ(全て、ではないと思うが)に対して「ぬるい」と雑誌で発言した事から大きな波紋は広がった事がある。
 「主催者側に販売の為に版権を手配してもらいながら、平気で「落とす」のはぬるいやつだ。」
 「いや、我々は趣味でやっているのであって、それに好きで落とした訳でもない。」等々、伝え聞く話なのだがその手のBBS(複数)では、具体的なサークル名まで出ての騒ぎになったらしい。
 そのガレージキット即売会の主催者側の真意は別にして、HARIは最近のファンダムは「堕ちた」と思えてならない。
 
 予め、言っておこう。
 HARIは「提供する側」になった事は、このHPを除いて、無い。
 つまり「提供を受ける側」である。
 
 「提供した事もないやつが、なに言ってやがる」と言われればそれまでだが、一言だけ言っておこう。
 
 HARIは、趣味を金もうけの手段にした事は、一度たりとて無い。
 
 最近の同人誌の世界は、酷いものである。
 プロが苦労して作り上げたキャラを使っているオリジナルストリーだけなら未だ救いがあるが、今や18禁本だらけである。
 かつて、同人誌の流通経路はファンクラブの会報レベルでしかなかった。
 しかし同人誌ブームによって、即売会が各地で開催され、ファンクラブという内輪の世界で流通していたものが、不特定多数の市場に販売できるようになった。
 その結果、どうなったか。
 かつて、ビデオが普及したのは「レンタルビデオ+アダルト物」が大きな要員をしめている、と聞いたことがある。
 それをうらずけるかのように、18禁同人誌は「怖くなる」ほどの量が出回っている。
 嘘だと思ったら、著名な同人誌ショップを覗いてみると良い。
 普通の人なら、店内に5分といられないだろう。
 これでは、「質の高い」同人誌がかわいそうすぎる。
 
 昔、ファンクラブベースで作成されていた頃の同人誌は、作品の感想やイラスト、考察、そしてオリジナル設定やオリジナルサイドストリーがメインであった。
 そこには、「自分の世界を他の人に伝えたい」との想いが強くあった。
 少なくても、同人誌で儲けるなんて事は、誰も考えていなかった。
 (赤字補填に、手軽な「キャラクター便箋」等を販売する事があっても。)
 
 しかし、今や「同人誌」や「ガレージキット」は、当人の腕次第で幾らでも儲けることが出来る。
 著名な同人誌は、中古市場であっても販売価格の数倍以上の価格で取引されることが当たり前である。
 つまり、「売れっ子」になれば「趣味の世界」で儲けられるのだ。
 しかも、「他の人が作ったキャラクター」を使って18禁本を作れば、楽なことこの上ない。
 絵さえ上手ければ、ストリーすら考えなくて良いのだ。
 (文学(^^;的に言えば、18禁物のストリーはある程度パターンが決まっている。)
 
 楽してお金を儲ける事が出来るのなら、誰だってやりたい。
 かつて、漫画家は雑誌等に作品が掲載されなければ生活できなかった。
 しかし、今では「同人誌作家」という言葉が示すように、同人誌の販売だけで生活できるらしい。
 たとえ、発表している媒体は違うが、これは十分にプロである。
 だがその実態は、18禁でキャラクターは他の作品から持ってきている、100頁に満たない同人誌。
 悪魔に魂を売った行為に等しい。
 
 確かに、今日のファンは昔に比べてお金がかかる。
 人気が出た作品はDVDやビデオで発売され、「お金の無い子供」ではなく「お金を持ったマニア」向けに発売されるグッズは凶悪的に高価な物も少ないない。
 そういった意味では、ファンの心理を知って商品展開しているメーカーは、天使の姿をした悪魔かもしれない。
 しかも、「ファンの要望」という名の「葵の印篭」まで持っているから始末に負えない。
 そういった物を、作品のクオリティを保つ為に入手していくには、少なくない投資が不可欠である。
 だから、それらを入手する為の手段として同人誌を広く販売する事、悪いことではない。
 また、購入する側も、それを期待して同人誌やガレージキットを買うのが本流であろう。
 
 誤解が無いように、付け加えよう。
 HARIは同人誌やガレージキットを否定する気は毛頭無い。
 
 もし、それが「好きな事をしてお金を儲けたい」なら、自分のオリジナル作品で勝負し、ファン系のイベントに参加するのではなく自分で販売ルートを確立すべきであろう。
 そうであれば、たとえ18禁であっても(少なくてもHARIは)文句を言わない。
 出来ないと思うのは、熱意が足りないからだ。
 ガイナックスや海洋堂だって、運や才能だけで今日の地位を築いたのではない。
 
 人が集まる場を人から安価に提供してもらって、されには人のふんどしを使って儲けるのは、甘い。
 原稿を書く苦労、原形を作る苦労、それは知っている。
 でも、アマチュアなら「それが好き」だからやっているのでしょ。
 自分の作った物を発表したいから、やっているのでしょ?
 原稿を書く苦労、原形を作る苦労、それに対する報酬が欲しいなら、それはアマチュアではなくプロだ。
 プロなら、それが仕事なんだ。
 そして、プロなら「決められた期日に完成しない」事が、どれほど信用を落とし評価を下げるか心すべきである。
 
 「あなたが今書いている原稿、今作っている原形は、何の為に作っているの?」



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