これは、最近「機密事項」指定が解除された資料の中から発見されたメモである。
(日時・内容から、誤って「機密事項指定解除」文書に混入した物らしい。)
1999年、軍縮の嵐が吹きすさぶ中、突如登場した「Nikon AF-S 80-200mmF2.8D」の就航に関する貴重な資料として、今回発表したい。
文中に補足説明が必要と思われる箇所には注釈を付けたので、別途参照されたい。
なお、内容が内容であるだけに、この情報は内密にするのが賢明であろう。
発:艦隊司令部
宛:艦政本部
前回の撮影会は、戦術的には大成功であったが、戦略的には大きな問題点を我々に提示した。
現在、ポートレート撮影の主力たるレンズ群では、遠距離からの撮影能力に大いに不満が残る。(注1)
今回は参加者多数の一般向け無料撮影会であった為に、従来からの戦法である「被写体と距離を調整する事によって、全身からアップまで撮り分ける」事が不可能であった。
我が艦隊の主力であるAiAF85mmF1.4D以上の焦点距離を持つレンズ配備を要求する。
艦隊司令部からの要求
80mmから200mmまでをカバーできるF2.8クラスのレンズ1本 (注2)
又は135mmF2.8クラス及び200mmF2.8クラスの計2本 (注3)
発:艦政本部
宛:艦隊司令部
前回の撮影会には、あらゆる状況に対応させる為28-200mmを随行させている。(注4)
このレンズを毎回随行させれば良いのではないか?
1本で広角から望遠までカバーでき、あらゆる撮影状態に対応できるのではないか?
発:艦隊司令部
宛:艦政本部
確かに、28-200mmは広角から望遠までカバーでき、特定条件では1本で全てを賄えるが、万能ではない。
今後の作品作製に大きなメリットをもたらすであろう80-200mmF2.8クラスレンズの配備を重ねて要求する。
(注5)
発:艦政本部
宛:艦隊司令部
艦隊司令部の回答は、「88艦隊整備計画」が事実上全面見直しされた現状を理解していない。
手持ちの兵力をもって作戦を成功させる事を検討すべきである。
(注6)
発:艦隊司令部
宛:艦政本部
艦隊司令部でも、「88艦隊整備計画」の状態については十二分に理解している。
だが、艦政本部の回答はポートレート撮影を理解していない。
我が艦隊は、作品を作るために必要な配備を要求しているにすぎない。
ISO100のポジフィルムをメインとしているポートレート撮影と、ISO400のネガフィルムをメインとするスナップ撮影では、レンズに要求するスペックは異なってくる。
艦隊司令部は、いくら高倍率であっても開放F値が2.8を超えるレンズをポートレート撮影には使用する気はない。
(注7)
発:艦政本部
宛:艦隊司令部
使用する、しないは艦隊司令部の都合である。
本件とは無関係である。
そもそも、艦隊司令部は理想を追いかけており、現有戦力を有効に使用する事を怠っているのではないか?
発:艦隊司令部
宛:艦政本部
艦政本部は作品作りを理解していない。
発:艦政本部
宛:艦隊司令部
艦隊司令部は工夫する努力を惜しんでいる。
発:統合司令部
宛:艦隊司令部、艦政本部
今後の撮影状況を考慮し、以下のスペックを満たすレンズの配備計画について検討を行なえ。
1.焦点距離200mm程度まで確保、可能であれば300mmを確保。
2.高速なAFスピード
3.将来においても陳腐化しないレンズである事。
なお、配備に関する予算は別途調達する事とする。
(注8)
発:艦政本部
宛:統合司令部、艦隊司令部
統合司令部からの指示を受け、艦政本部は次のレンズの配備を提案する。
1.AiAF100-300mm
発:艦隊司令部
宛:統合司令部、艦政本部
統合司令部からの指示を受け、艦隊司令部は次のレンズの配備を要求する。
1.AF-S80-200mmF2.8D
2.TC-16S
(注9)
発:統合司令部
宛:艦隊司令部、艦政本部
艦隊司令部、艦政本部の提案を比較検討した結果、艦隊司令部案を採用する事とする。
ただし、艦隊司令部案は非常に予算がかかるため、以下の対応を行なう事とする。
1.配備保留(優先順位2)としていた88艦隊計画80-200mmF2.8配備プロジェクト(注10)を再開する。
2.CPX(時期主力カラープリンタ)プロジェクトについては無期限延期とする。
予算は本プロジェクトに流用せよ。
3.PCX(時期主力PC)プロジェクトについては、無期限延期とする。
予算は本プロジェクトに流用せよ。
4.DCX(時期主力デジタルカメラ)プロジェクトについては、無期限延期とする。
予算は本プロジェクトに流用せよ。
5.配備保留(優先順位1)としていた88艦隊計画100mmF2.8マクロ配備プロジェクトは、引き続き保留とする。
以上
注1 この撮影会では、AiAF85mmF1.4Dで殆ど撮影された。
この為、アップがほとんど撮れず、全身やウエストアップが作品のほとんどを占めていた。
この様な状況は始めてであり、艦隊司令部は危機感を高めていた。
注2 この時点では、AF-Sと明記されていない。
AiAF80-200mmF2.8D(NEW)が候補であったことが伺える。
注3 AiAF135mmF2D DCとAiAF ED180mmF2.8Dを想定していると思われる。
注4 確かに随行していたが、スナップ撮影でしか使用されなかった。
艦隊司令が、「暗い普及ズームを使うくらいなら、85mm一本でいく」と宣言したらしい。
注5 135mm及び180mmのレンズ2本体制が消えているのは、予算を考慮しての事である。
注6 艦隊司令部の配慮(注5参照)に気がつかない艦政本部の発言により、艦隊司令部は態度を硬化させた。
注7 艦隊司令部の最終通告。
これ以降、両者の関係は非常に悪化した。
注8 詳細は不明だが、別方面での作戦が統合司令部を動かしたらしい。
注9 艦隊司令部は、「どうせ削られる予算なら」と最高水準を提案した。
注10 当所の予定は、AiAF80-200mmF2.8Dであった。
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