■クロニクル(Chronicle)
mazdaランティスはミドルクラスのクーペ/セダンという、
コロナ/ブルーバード的な平凡なクラスに投入されたクルマである。
1993年の夏に売り出され、発売当初のmazdaの販売目標は
4,000台/月であった。
実際、8月24日の発売以来2ヶ月で8,789台が登録され
出だしは好セールスを記録している。
当時のmazdaは販売店の多チャネル化が一息ついた所であり
ランティスは、mazda、enfini、AUTOZAM、
eunosのうち、mazda、enfini、eunosにおいて扱われた。
これだけのチャネルで、同一車種を同一ネーミングで扱うのは
当時のmazdaにしては新しい試みであった。
業界bQを目指すmazdaの多チャネル化の基本方針は
「mazda」ブランドから切り離した、enfini、AUTOZAM、
eunosブランドを独自に大きく育てることにあったので
各チャネルにおいて同一ネーミングを使うことは御法度だったし
同一車種は最大でも2チャネルで扱うことになっていた。
とは言うものの、クロノス関連の不振、eunosブランドの苦戦(roadster
以外は売れず)、北米アマティプロジェクトの先行き不安(後に中止に
追い込まれる)など苦しくなってきたmazdaとしては「売るための新しい
施策」が必要であったと思われる。
その第一弾が「各チャネルにて同一車種を同一ネーミングで扱う」ことだったの
だろうと推測できる。
例えばアスティナがeunos店へ行くとeunos100というのは
差別化としてはいいが、それを客にわかってもらい認知/購入してもらうには
莫大な広告費と時間(歴史?)が必要となる。
カローラ/スプリンター、レビン/トレノのように客に分かってもらい
どっちも販売を伸ばすのは容易ではない。
余計な差別化するより、広告費用も安く済むし、取り扱いディーラーも
2倍以上増えることになる。
その先鋒をかついだのがランティスだったわけだ。
pictures(C)MAZDA
第二弾は「ランティス・アピール」であり、高性能で安全で小さくて安い
という明快な主張を持たせたことだ。
ここまではっきり主張させた例は国内では見掛けない。
また、「衝突試験」の映像を広告に使ったのもランティスが初めてである。
今でこそ、トヨタ/ニッサンが安全を前面に押し出してエアバッグだなんだと
広告しているが、長いこと自動車業界では「安全は売り物にならない」が
定説であった。
ランティスの企画担当者の先見性はさすがと言わざるを得ない。
とは言うものの、新車効果の薄れや、より買い得感のある新型カペラ、
新型ファミリアの投入によりランティスの販売は300〜400台/月と
いうレベルに落ち着いている。
95年夏に一部マイナーチェンジ、96年夏には、車種整理による
マイナーチェンジを行うものの、日本国内での売れ行きは不振を極め、
ついに97年5月で国内販売は完了となる。
好調な海外輸出については、現行のLANTIS,ASTINA HATCH,323Fという
形で継続される模様。(97年4月現在)
国内におけるランティスの撤退については、mazda社内が
97年初頭から強力に推し進めている、
「MDI(Mazda Digital Innovation)
プロジェクト」の影響というのが個人的な見解である。
97年2月19日にmazdaが発表した内容
マツダは「MDI(マツダデジタルイノベーション)プロジェクト」と銘打ち
97年4月から新車の開発体制を抜本的に改革する。企画や設計、試験、
量産準備、購買、生産まですべての開発プロセスを見直し、開発費の
2割減と期間の3割短縮を目指す。
・180億円かけ新車開発体制を刷新
・コスト2割、期間は3割削減
目玉は設計支援システムの刷新と整備。約1000台のCAD端末をすべて
EWSに切り替え、3次元CADソフトを搭載してネットワーク化し、
新しいシステムを構築する。
すでに同社は,ヒット中の小型RV車「デミオ」など3モデルの開発に
新システムを試験導入。
従来は22カ月かかった開発期間を15カ月に短縮できたという。
この結果を踏まえ新システムの全社展開を決定した。
97年4月以降に開発する新車から新システムを本格適用し、
将来は親会社の米フォード・モーターとの共同開発や
車体の共通化にも利用する方針。
マツダは96年3月期に126億円の営業赤字を計上するなど
厳しい状況が続いているが、EWSのほか約4000台のパソコンを
追加導入するなど,99年までに総額180億円を投資する。
・生産ラインの設計も画面上で行う
新システムを使えば、EWSの画面上で新車の外観デザインや室内、
エンジンルームといった各部分を設計し、試作品を作らずに
性能や機能をテストできるようになる。
生産ラインも画面上で設計でき,最適な生産プロセスの検討や
工場運営が可能になるという。溶接や塗装、組立など
各生産ロボットの動きをCGで再現し、従業員の作業環境まで
事前に把握できるようにする。
さらにNC工作機械ともネットワークで結び、設計データから
即座に試作品を作成したり、試験生産に移れるようにする。
外部の部品メーカーとは、インターネットも使い設計データを
交換できるようにする。各部品の品質やコスト、仕様を収めた
共通データベースを新たに設置したり、情報共有を狙い
グループウエアも導入する。
生産〜売り上げ推移データ(1998/Aug)
生産台数
ランティスの生産はなんと97年に上向いている。
乗用車全体はデミオなどの好調からうなづける。(編注:98年8月時点)
ランティスの生産台数/マツダの乗用車生産台数
1994年 57263台/ 821465台
1995年 63036台/ 606232台
1996年 55320台/ 599446台
1997年 57519台/ 668478台
国内販売台数
ランティスの国内販売はほとんど壊滅。
モデル末期とは言え、96年度1年かかっても
当初の月次目標台数にも届いていない。(編注:97年1月時点)
ランティス販売台数/マツダ乗用車販売台数
1994年 19097台/266711台
1995年 6988台/217799台
1996年 3108台/199618台
1997年 851台/226474台
輸出台数
海外ではモデル末期にも係わらず売れ行き絶好調。
円安傾向も追い風か?
現在生産されているランティスの殆どは海外向け。(編注:97年8月時点)
ランティス輸出台数/マツダ乗用車輸出台数
1994年 46443台/545634台
1995年 61617台/380992台
1996年 53241台/384218台
1997年 56061台/447637台
ランティスの海外組み立てがあるのはニュージーランドの
ビークルアセンブラーズニュージーランド社だけのみ。
所在地はマヌカウ(Vehcle Assembres Manukau New Zealand)。
--- 1990 (Code 55E)
デザインのコンセプトスタディが終わり、ランティスの開発開始。開発コードは55E。
--- Oct. 1990 (Code J55E ; 66F)
ランティスの開発が横浜にて進行。開発コードはJ55Eから最終的に66Fに落ち着く。
--- 18 Aug. 1993 (Version1.00) Pre Release "Blind" advertisement
発売直前のブラインド広告実施
--- 24 Aug. 1993 (Version1.00) Release
ランティス発売。真夏のクリスマスプレゼント?
発売当時のようす (Video, CD, Telephone card etc.)
比較広告( vs プリメーラ)
1ページ、2ページ全面広告
タイプ | エンジン | ミッション |
4door-coupe type-S | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-coupe type-G | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-coupe type-X | KF-ZE2.0l | 5MT/4AT |
4door-coupe type-R | KF-ZE2.0l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-S | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-G | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-X | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-X | KF-ZE2.0l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-R | KF-ZE2.0l | 5MT/4AT |
--- Feb. 1994 (Type G Limitted) Special Edition #1
タイプGリミテッドが発売。1000台限定。
詳細は、FAQのページにて。
--- Sept. 1994 (Version1.01) Minor Change #1
マイナーチェンジ。
リアヒーターダクトの廃止。
クーペのボディカラー「サンダーグレーマイカ」を廃止。
クーペのボディカラー「シルバーストーンメタリック」を追加。
車載工具の簡略化(タイヤ交換用レンチのみへ)。
<カタログ改版(2版)>
グレード構成は変更なし。
(情報 by rikiyaさん)
--- Oct. 1994 (Type G Sports) Special Edition #2
タイプGスポーツが発売。1000台限定。
詳細は、FAQのページにて。
--- July 1995 (Version1.10) Minor Change #2
マイナーチェンジ。
スパークルグリーンメタリックに標準だったグリーンの内装を廃止。
フロントドアのカーテシランプ廃止。
アシストハンドルを格納タイプから固定タイプへ変更。
クーペTYPE−Rに標準だったガーメントバッグを廃止。
ボディカラー変更。
グレード構成は変更なし。
ボディ軽量化
--- Aug 1996 (Version2.00) Minor Change #3
「New Lantis」へマイナーチェンジ。
グレード整理にてクーペTYPE−SとXを廃止。
グレード整理にてセダンTYPE−Sと2lTYPE−Xを廃止。
ABSを標準装備。
サスペンション(ショック)設定を変更。
運転席SRSエアバッグを標準装備。
ステアリングデザイン変更。
ドアインナーハンドルデザイン変更。(ごく普通のハンドルに)
シート地変更。
フルホイールキャップデザイン変更。
セダンTYPE−Rのタイアサイズ変更(205/50R16→195/60R15)変更。
セダンTYPE−Rのアルミホイールデザイン変更。
ボディカラー変更。
ボディ軽量化
タイプ | エンジン | ミッション |
4door-coupe type-G | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-coupe type-R | KF-ZE2.0l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-G | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-X | BP-ZE1.8l | 5MT/4AT |
4door-sedan type-R | KF-ZE2.0l | 5MT/4AT |
--- July 1997 The selling stop for domestic(In Japan)
国内向け販売停止。
--- Feb. 1998
国内新車登録月次実績:2台
--- Mar. 1998
国内新車登録月次実績:1台
★「国内で最後にランティスを新車登録した方」の可能性大です。
★もし98年3月に新車登録をしたのは私だ、という方がいらっしゃいましたら
メールください。
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