残暑お見舞い申し上げます。~君と過ごしたあの日と今と~(めろめろキュート)

 雨竜菁(変更不可)あさひな村に住む学生である。このまま田舎ののどかな暮らしが続くと思って疑わなかった。だが、数年前に状況は一変。ダムの建設によって村は水の底に沈むことになったのだ。実感が湧かないながらも廃校の日はすぐ近くに迫っていた。

 めろめろキュートの新作は田舎の消えゆく村を舞台にしたアドベンチャー。村で過ごす現在とヒロインと結ばれた後の未来の二部構成が特徴です。
 購入動機は二部構成なところと最近、冒険していないなー、と思ったから。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はボーカル&サウンドトラック。

 ジャンルはごくごく普通のアドベンチャー。
 足回りはなかなか良好です。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後には使用できませんが、開始して以降なら幾らでも逆上れます。
 選択肢は思い切った仕様で、右側に各ヒロインの表情アイコンを表示させています。進みたいヒロインのアイコンを選べば間違うことなく目当てのシナリオに。盲導犬システムここに極まれりというところでしょうか。良く言えばわかりやすく、悪く言えば風情がありません。
 おまけの機能として一風、変わったものが用意されています。一度でもエンディングを迎えた後、任意の場所でメッセージウインドウ右下にあるカメラアイコンをクリックするとその時の画像がスタッフロールに表示されるようになります。なかなか気の利いた機能のようですが問題もあります。それは自作スタッフロールが鑑賞モードでしか見られないこと。各ヒロインのシナリオでこれを実行できるなら吟味のしがいもありますが、スタッフロールしか見られないのでは喜びも半減です。
 本作は残念なことに要起動ディスクな仕様。

 シナリオはなかなかに特殊です。本作は複数ライター制を採っているのですが、その弊害がこれ以上ないほど出ています。両者の差はあまりに大きく別々に解説が必要なほど。プロデューサーがいかなる意図からこのような形にしたのか理解に苦しみます。
 <撮影ルート>一ツ瀬菘奈、大瀬内アリサ、温井姉妹シナリオ
 この4本はクラスメイトとともに村の記録映画を撮影するルート。
 村での最後の夏、というメインテーマ部分が非常におざなりです。名目以上の意味が薄く、記憶に残る思い出とはとても言い難い内容かと。村がなくなる時にも効果的な演出は見られません。第二部は長めのエピローグといった感じでシナリオ的な意味はほとんどなし。
 豊富な掛け合いはありますが、その中身は総じて事務的であり、あまり楽しめません。
 主人公とヒロインが惹かれあう過程はほとんどない、もしくはそれ以前の問題だったりします。展開にも工夫がなく告白→即Hといったパターンがほとんど。
 Hシーンは現在2回、未来2回と平等に配置されています。分けられているせいか4回という言葉ほどには多く感じません。エロ度はほどほどくらい。
 <非撮影ルート>矢木沢壬生、鳴子華菜シナリオ
 この2本は撮影ルートとは趣を異にするシナリオです。記録映画に関与しないだけでなく、主人公を含めてほとんどのキャラクターの設定が変更されています。例えばヒロインの矢木沢壬生は撮影ルートでは現役アイドルですが、自身のシナリオでは元アイドルで病弱に、といった具合。テキストにも大きな違いがあり、ネタを多数、仕込んで笑わせることを第一としたかのような文章になっています。
 こちらのルートでも村に関する扱いは非常にいい加減です。そういう設定だから一応は取り入れました、程度。第二部は撮影ルートと同様の扱いになっています。
 日常の掛け合いは限定されたキャラクターのみで行われ、大多数は本当に必要な時以外は出てきません。
 主人公とヒロインが惹かれあう過程は矢木沢壬生シナリオではそれなり以上にしっかりと、鳴子華菜シナリオではあるようなないような、受け止め方次第といった感じの描写です。
 Hシーンは変則的。カウントもしづらいような内容だったりします。エロ度は撮影ルートよりは頑張りが感じられるかと。

 CGは立ちCG、イベントCGともに良いものと悪いものがハッキリ分かれてしまっています。とても魅力的なカットがあったと思えば、これは如何なものかと思ってしまうようなものがあったり。特に第二部に入ってキャラクターの外見が変わるあたりは賛否が分かれそうです。
 手描きっぽさを出している背景CGがあまり効果を上げていないように感じます。味のある背景というよりも手抜きっぽく見えてしまうような。

 音楽は非常におとなしめな印象を受けます。場面に応じた曲が用意されていますが、あまり田舎ゲームらしさをその旋律からは感じません。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は一部で気になるところもありますが基本的には高いレベルでまとまっています。なお、ルートによるキャラクターの素性の違いに一部の声優はきっちりと対応。さすがはプロの仕事と感心しました。

 まとめ。企画倒れ的な作品。ダムに沈みゆく村とそこでの思い出、これが意味あるものとなっていないので第二部にもほとんど繋がりません。シナリオ間の落差も意味不明。最低限のシナリオの摺り合わせはするべきではないでしょうか。非撮影ルートのライターが全てを担当していれば見違えるような良い作品になっていたかもしれません。実に惜しい。
 お気に入り:矢木沢壬生、カトリーヌ(おい)
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、一ツ瀬菘奈
 剣道の打ち込み時のやる気の薄い声はある意味で必聴もの。演技指導がイマイチだったのか、リテイクの末のファイナルバージョンがこれなのか。どちらにせよ力が抜けるかけ声です。エロゲーにはわりとありがちな欠点ですよね。
 ラスト2枚のイベントCGでいきなり主人公の顔が出るのでたいそう戸惑います。出すのか出さないのかハッキリして欲しいところ。
 2度目のHシーンのオチが良い感じ。聞かされる側のシーンもあるとなお良かったかも。
 立ちCGのふくれっ面はリテイク希望。恋が芽生えかけてもあっさり醒めてしまいそうなカットなんで。固そう。

2、矢木沢壬生
 えーと撮影ルート担当のライターであれば恐らくはお気に入りになることはなかったと思います。設定そのものは現役アイドルの方がいいんですけど、シナリオとしては難しいでしょうね。「元」になったのはそのあたりが理由でしょうし。
 でもまぁ、言い切ってしまえばキャラの魅力というよりはライターの手腕でしょうね。同じ設定であってもこのライターなら、他のたいていの同業者よりも印象的に書くことができるでしょう。正直、全キャラを藤崎竜太氏が担っていたなら一番のお気に入りは他のヒロインになっていたのではないかと思います。

3、大瀬内アリサ
 心底どうでもいい。バレバレ以前の問題の似非ツンデレではどうにもなりません。外人(ハーフ?)である意味がほとんどないというのも切なさを増幅させます。
 成長してメガネ化するのは嫌がらせとしか思えません。なんでオールドミスみたいなデザインになっているのやら。どうでもいいのに思わずため息が出ます。

4、温井柊子
 メガネさんなんですけど、コンタクトにしたり、裸眼なのに外していたりするせいか、あまり苦手な感じがありません。撮影ルートでは一番うまく動いているかと思いますが、それでも非撮影ルートの方が興味を引かれます。まぁ、売女のように見えてしまうのはちとアレですけどね。
 苦手な属性ほど実力ある声優さんのパワーを実感しますね。北都南さんでなければもっと印象が薄かったのではないか、そんな風に思います。

5、鳴子華菜
 出鱈目な神様っぷりが素敵。ストライクゾーンがメチャメチャ広そうで見入られると大変です。撮影ルートとは共通点の方が少なくて完全な別人。まぁ、それで良かったと思いますけど。
 巫女服HのイベントCGの使い方は激しくどうかと。ここまですごい手抜きにはなかなかお目にかかれないような。つうか無駄撃ちにしか見えません。

6、温井梗子
 スルーだお。相手したくないお。

7、カトリーヌ
 華菜よりもカー子の方が面白かったですよ。方言使いのカッパというあたりがツボに入りました。しかも、舐めていたらおかっぱバージョンがすこぶる可愛くもうどうしようかと(何を)。あの外見との言葉遣いのギャップもなかなか。