ゆにばる!PARANOMAL GIRLS STRIKE!!(ApRicoT)

 大世界下宿は一見するとどこにでもある古めかしい下宿である。しかし、ここには世界の趨勢を握る超常的な店子ばかりが住んでいるのだ。若くして大家になった近衛慎一郎(変更不可)は日々その資質を問われていく。

 ApRicoTの新作は突き抜けた設定のアドベンチャー。
 購入動機はブランド買いが妥当なところですが、微妙に揺らぎつつもあります。鳥取砂丘氏の不参加が自分でも予想以上にショックであることに後から気づきました。
 初回特典は特になし。

 ジャンルは慣れ親しんだアドベンチャー。
 足回りは経験値あるブランドとしては進歩がありません。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、立ちCGなど演出がそれほど高速化しないため、あまり速くありません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻れません。加えてエピソードの終了やシーン切り替えでログがリセットされてしまうのであまり意味がないです。当然のようにロード直後にも使用できません。バックログに関しては真剣に改善を望みたいところ。
 ワイドモニターの場合、フルスクリーンにすると左右両端に黒いエリアができ、そこではマウスが反応してくれません。

 シナリオは共通シナリオが全て、と言っても過言ではない内容です。
 本作は画面上でこそ表示されませんが話数ごとに区切られる構成をしています(セーブデータで確認可能)。具体的には5話プラス個別ルートという作り。問題となるのはこの5話のところに面白さとボリュームが集中していること。物語的にも一区切りついてしまい、以降はまるで消化試合のように盛り上がらず短いです。その様はまるでHシーンのために分岐するかのよう。
 共通シナリオは超常の力を持った住人たちの日常が一般人にとっての非日常として描かれていてドタバタ劇としてとても優秀で楽しめます。基本的には作品内で完結したネタで勝負していてギャグ度も高めです。変人である本人たちは真面目だからこそ笑える、という感じでしょうか。掛け合いにもキャラの個性がしっかりと出ています。
 一方で個別シナリオはすでに述べたようにとても短くとってつけたかのようです。短くとも複数ライター制の弊害もしっかり出ていて、共通ルートでは魅力的だった登場人物のキャラが違うなんてこともしばしば。
 恋愛に至る過程は共通ルートにおいておおよそ書かれていますがどうも不足気味です。スタートがフラットであることを明示している割には弱さが目立ちます。書こうとしている姿勢だけは伝わってくるのですが、どうにも苦しいです。
 Hシーンはメインで4回サブで3回と僅少差ながらハッキリと区別されています。全体的に尺は短めでテキストによるエロさはあまりありません。ヒロインによって状況などに差があるためにばらつきがあります。

 イベントCGは基本的に魅力あるものに仕上がっているものの、複数原画家制で同一キャラも複数で担当しているのかカットによって絵が違うと感じることが珍しくありません。とくに綾風かなえと高樹蒔絵において顕著です。
 一方で掛け合いを支える立ちCGは安定度が高く、カットも非常に充実しています。その表情の数々だけでキャラの魅力が十分に伝わってくるほど。ただし、ごく一部のキャラが手抜きにしか見えないのは残念です。
 最近では珍しく背景にモブキャラが描かれています。ヒロインたちメインキャラとの調和もとれていてモブならではの存在感がしっかりと感じられて好印象。やはり、人影があってこそ背景も映えると思います。
 Hシーンはすでに書いた理由でエロ度にもカットによって差があります。意外と半脱ぎ度が低めでせっかくの可愛い衣装を十全に活かしているとは言い難いです。「MapleClolors2」で目立った純愛なのにアヘ顔っぽいカットはほとんどなくなりましたが微妙に残っています。

 音楽は偏った設定の割に意外と基本に忠実な曲調が目立ちます。オーバースペックな住人たちだからこそ日常が大事ということでしょうか。不思議なほどなじんでいます。逆に言えば設定ほどのインパクトは感じないということですが。戦闘シーンも過去作に比べてしまうとやや迫力不足です。
 「AYAKASHI」と「AYAKASHI H」経験者にとってはアヤカシの叫び声がギャグとして高い効果を持っています。笑える人にはこれだけで笑えるから不思議です。これも受け継がれる財産というのでしょうか。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。ヒロインたちは北都南、青山ゆかり、木村あやか、草柳順子、風音、一色ヒカル(敬称略)とまるで英雄が揃ったかのようなキャスティング。誰もが名に恥じない演技をしていてキャラクターの魅力を数段、高めています。中でも一色ヒカルさんの務める紫苑のサブキャラならではの弾けっぷりは色々な意味でいっそ眩しいほどです。

 まとめ。もったいない尻すぼみ作品。典型的な1周目が最も楽しいタイプ。あるいは当初はもうちょっとボリュームある企画だったのかもしれません。スタッフの実力は感じるだけに惜しいです。
 お気に入り:アーシェス・カラミティ
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、渡瀬メグ
 時期の問題で北都南さんが攻略ヒロインを務めているというだけで諸手を挙げたくなります。相変わらず演技力はお見事。メグというキャラの魅力を声だけで支えていると言っても過言ではありません。
 乙女ネタはあまり面白くないというか広がりがない感じ。女王にはなりたくないけど、乙女の座は譲れないというのもイマイチよくわからないというか。
 ところで、なんでHシーンの一部がアヘ顔っぽくなっているんですか?

2、綾風かなえ
 片目が隠れているせいなのか、それとも原画家が複数人のせいなのかイベントCGの顔がよく変わります。両目が見えているカットはほとんどがまるで別人です。当然Hシーンにも絡む問題なので小さくはない影響を与えています。
 見た目、巨乳美女で実際はロリなのに198歳。なんだかなぁ。組合長もそうだけど、魔法使いにはそんなのしかいないのか、っていう。どの部分に反応すればいいのやらよくわかりません。エーテル使いが万能すぎるので実質、引き立て役に終始してしまう悲しい役回り。

3、フウ
 個別シナリオも含めてどうも存在意義がわかりません。設定も活かしていないというよりよくわからないので現状ではほとんど必要ない存在と化しているのが悲しいところ。メグ同様に木村あやかさんの演技でかなり救われている感じです。
 教会絡みのエピソードとか見る限り、もうちょっと規模の大きな作品だったのではないかな、という気がしてしまいます。基本何でもあり路線とはいえ、エーテルに偏り過ぎている上に教会のエピソードだけ浮いているように見えるんですよねぇ。聖騎士の娘さんがいなくなってしまうのもそれまでのノリからすると奇妙だし。あれっきりの割には存在感だしすぎというか。
 ところで、フウが下級生(学園生)ってどういうことなんでしょう。

4、アーシェス・カラミティ
 一度、敵として出ているために誰とでも絡みやすい便利なお嬢さん。敗北以降はもうちょっと貧乏だけど心は錦ネタを出した方が良かったように思います。というか、寮の食事を採っているはずなのにおかしな反応をするシーンがちらほら。これも複数ライター制の影響でしょうか。
 一番キャラがブレずに立っているかもしれません。

5、高樹蒔絵
 ポジションとしてはどう見ても個別シナリオはなさそうな(不遇さが売りに見える)のにしっかりとあるという肩透かしキャラ。
 能力的な縛りがないせいかHシーンがマニアック気味。しかし、そのせいか他のヒロインよりもエロいという不思議。
 かなえとタメ張るくらい原画が不安定。まっきーを見る限りは同一キャラを複数の原画家で描いているように見えますね。

6、紫苑
 攻略キャラじゃないと思ってやりたい放題。ついでに声優もやりたい放題。本人は不満がありそうですけど、一色ヒカルさんはサブに回った時の方が演技が輝いているような気がします。