雪桜(D.O.)
橘裕志(変更不可)は途方に暮れていた。これまでとあまりに違う生活環境。少なくとも裕志の生まれ育った地では降雪によって休校になることはない。納豆にイチゴジャムを混ぜるなんていうこともない。超放任主義の両親に放り出される形で北の地にやってきた裕志の明日は果たして。
発売日近くになってDVD版が急遽、発売中止になった本作品。D.O.のアナウンスによると今後DVD版が出ることはないそうですが、そうなると中止の理由はやはり予算に起因するものなんでしょうか。
体験版をプレイしてほどほどの期待を持って購入。
システムはいつも通りのアドベンチャースタイルをとっています。目新しい要素は特に見当たらず。
足回りは改善の余地あり。多くの機能を実行するのに4クリック以上を必要とするのはかなり不便だと感じました(1クリック以上多い)。右クリックでいきなりオプション画面を呼び出すのでは何か問題があったんでしょうか。クイックセーブ&ロードがないのもシステムの使いにくさの一因になっているかと。
メッセージスキップは標準程度の速度。既読未読を判別してくれます。既読部→未読部→既読部というテキストであっても再クリックを必要とせずスキップを実行してくれるのですが、なぜか選択肢を跨ぐと停止してしまいます。選択肢が多いゲームだけにこれは残念な仕様でした。
メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生機能も用意されていますがそれほど戻ることはできません。
シナリオは全体を通して地味のひとこと。雪国での普通っぽい、特別なところのないゲームを目指したのか驚くほど淡々とした展開が序盤から終盤まで続きます。
男女が惹かれ合う過程の描写がかなり弱く、ほぼ全てのケースにおいて疑問が残ります。言ってしまえばヒロインのほとんどは最初から主人公に惚れている印象がありました。にも係わらず主人公があまり魅力的に描かれていないのは痛恨。加えて主人公が総じて受動的であるというのも微妙さを助長しています。
日常会話の掛け合いは平均以上の楽しさ。多人数会話はテンポも良く、それほど飽きることなく読めました。ただし、ここでも普通っぽさを目指しているのか、あまり笑えるということはありませんでした。苦笑から微笑程度。カップル成立後の他メンバーによる素行調査はどれも面白かったですが。
一部のヒロインについて個別シナリオのネタが被っているのは非常に残念。5人しかいないヒロインの2人が同じでは工夫が足りないといわれても仕方ないかと。
イベント配置に関しても疑問がありました。個別シナリオ移行後にも共通シナリオがあるというのはどうかと思います。一例を挙げれば、告白して返事を保留されたのに次のイベントでは何事もなかったように接してくる、という感じ。どうしても全員に必要なイベントには見えないし、どうも意図がわかりませんでした。
シナリオ全体における共通シナリオの占める割合はかなり高く、2周目以降はかなりプレイ時間が短くなりました。総シナリオ量もけして多くはなかったように思います。
日付表示のないことを含め、間の演出というものがイマイチ。スキップ後でなくとも前のイベントからの繋がり(経過時間)がわかりにくいことが多かったです。
CGは原画家しけー氏の特色が強く出ています。ダイレクトに言えば極めて安定度に欠けています。顔の角度が変わると同じヒロインに見えないということが頻繁に起こります。パッケージ正面と背表紙を見てもそれは明らか。中でも立ちCGは同じ原画家の仕事ではないと言われれば信じそうなくらい差があります。中には良いものもあるのですが……。
どうしても気になったのは巫女さんの袴。HシーンのCGとテキストを見るにどう考えてもそれは袴ではなくスカートなのではないかと。
音楽はどこまでもおとなしい印象。シーンに応じた曲は用意されているものの、あまり強く自己主張する気がないように思いました。
ボイスはヒロインによって差があるように感じました。メインヒロイン(?)である宗谷美咲が一番、怪しかったような。反面、幼なじみキャラである橘沙紀はまさに適材適所な演技であったかと。男性キャラの三枚目的な演技にも光るものがありました。
まとめ。D.O.の台所事情が窺えそうな省エネ作品。随所に省力を感じさせるような箇所が見受けられます。ボリューム一点とっても「家族計画」と同じメーカーとは思えません。
お気に入り:強いて挙げれば男性陣
評点:52
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、宗谷美咲
パッケージを一人で任されるメインヒロインながら中身はとてもそうは思えない不遇キャラ。名前からしてライターの愛が感じられません。シナリオもキャラも散々な感じで発売前人気が高く、発売後は低い典型を地で行くヒロイン。
独占欲の権化で主人公でなくとも閉口すること必至。恥じらいをなくしてしまうのもあまりに大きなマイナスポイント。文化祭の自主製作映画がイベント的にも筋書き自体も詰まらないものであったのは彼女にとってまさに痛恨。せっかくの専用っぽいイベントもサッパリ盛り上がりません。三人称な同衾イベントだけは面白かったんですけどねぇ。
2、宗谷美里
何を考えているのかまるでわからない人。一体、主人公のどこが良くて住吉のどこが悪かったのか、激しく疑問。実際、住吉の方が人間的魅力があると思う人は多いんじゃないかなぁ。
姉妹揃って教室で失禁というのも血は争えないというか、微妙臭が漂っている感じです。公私も混同しまくりだしなぁ、この姉妹。
3、橘沙紀
青山ゆかりさんのボイスが全て。これなくして彼女の長所は何一つ輝かないといって過言ではありません。彼女が嫌いな人にとっては特に感じるところもないシナリオなのではないでしょうか。
つるぺたキャラでありながらその方面からの支持が絶望的であるのも厳しいところ。そりゃ身長149センチでバスト83のつるぺたはあり得ないだろう、と。
先生と個別シナリオのネタが被っているのが実にもったいない。印象が悪くなることこそあれ、良くなることはないしなぁ。
4、桧山こずえ
主人公は権力に弱いのか、なぜか彼女だけ名字で呼びます。先輩だけでなく先生まで名前で呼んでいるというのに。その態度は徹底していて恋人同士になっても一向に変わることはなく。
それと関係があるのかないのか、主人公はなぜか彼女に対してだけ能動的。自ら告白を行います。これには少し驚きました。だって勝手に告白してくる、がこのゲームの暗黙のルールだと信じて疑わなかったし。
生理用品プレイというなんともコアなHシーンを持つキャラ。生理中にパジャマ姿でアリバイ工作までして、深夜に主人公の部屋に入り込んでおきながらHシーンを回避できるという考えを持つヒト。このゲーム、普段は普通なのにHシーンになると唐突に変わるよなぁ。卑語とか当たり前のように使うし。
終盤、デートをコーディネイトする宗谷姉妹が弁当を作ってくれるシーンがあるんですが、ここが大きな疑問。姉はともかく妹の作るソレは致死量なシロモノだと思うのですが。胃腸薬もなく平然と食ってるし。
最大のツッコミどころはエンディング。4年だか5年も経っているのにどう見たって彼女は留学前より縮んでいます。
5、如月玲
個人的にはメガネで優等生で玲というと「ぱにぽに」という漫画を思い出さずにはいられないのですが、それはまぁともかく。
メガネさんですが意外にも印象は悪くないです。私にしては。照れる姿が可愛いキャラというのは他の要素がどうあれ、それだけで強力な武器ですな。
それだけに玲先輩の袴がスカートであるのは大ショックですよ。巫女スキーには言語道断というところでしょう。そういや昔、「侍スピリッツ」も袴とスカートを勘違いしていたなぁ(遠い目)。