アストラエアの白き永遠(FAVORITE)

 月ヶ咲には2年間、雪が降り続けている。季節が移ろいでも雪が止むことはない。その理由は誰も知らない。いつまで降り続けるのかも。榛名陸(変更不可)は仲間たちとともに月ヶ咲に帰って来た。この街で起きる異常気象を調べ、ある者たちを護衛するために。その身に宿る能力(ルーン)は果たして陸に何を見せるのか。

 FAVORITEの新作はブランド10周年記念タイトルで特典も豪華。10周年つながりでALcotともコラボレーションしたキャンペーンを行っています。
 購入動機は原画の司田カズヒロ氏がメインキャラをひとりで担当していたから。
 初回特典はボーカルソングアルバム「AstralAria」。予約キャンペーン特典はいつもゆきゆきといっしょ!! アストラエアの白き永遠 ちっちゃい雪々ラバーストラップ、FAVORITE10th ANNIVERSARYメモリアルイラストコレクション。後者は早い話が歴代タイトルのパッケージイラストです。揃えている人ほど微妙な気持ちになるという面白い企画です。

 修正ファイルが出ています。あてなくてもクリア可能ですが有用な機能のひとつがうまく働かないためなるべくあてておきましょう。

 ジャンルは変わることなくアドベンチャー。
 足回りはほとんど進歩していません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢間が長いこともあって相対的に遅く感じやすいです。暇潰し道具があった方がいいでしょう。ひとつ前の選択肢に戻るUNDO機能はありますが、次の選択肢へジャンプする機能はありません。また、周回を重ねると演出が追加されるため、中途のセーブデータを使いにくくなっています。おまけに冒頭はしばらくスキップが使えないというなかなか厄介な仕様となっています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、あまり戻ることはできません。ロード直後でも使用できます。
 前回の続きから始めるCONTINUE機能はありますが、一般的に言うところのロード画面を出してから選択する必要があるので通常ロードと代わりありません。

 シナリオは特有の「優しい世界観」が足枷となって展開を不自然にしています。キャラクターは基本的に強い負の感情を封じられているので恨んだり憎んだりということができません。それがシナリオの流れを各所で阻害していて、都合が良いというかズレた展開を生み出しています。また、基礎的な設定である宇宙開発と超能力の結び付けがいささか強引でスケールの大きな場面でも小さな場面でも違和感を感じさせることがあります。
 本作はキャラクターの独り言が異様に多いです。まるで誰かに聞かせるつもりなのではないか、というくらい頻繁に各キャラが独り言劇場を開幕します。しかも、それが思わせぶりなだけであまり深い意味がないあたり、効果のほどに疑問符がつきます。
 日常の掛け合いは本作の肝である「優しい世界観」の構築に大きく寄与しています。とにかく園児の描写が多いです。笑いは繰り返し使われるネタが多く、中盤すぎには飽きやすくなってきます。
 惹かれ合う過程はキャラによって濃淡あり。しっかり丁寧に描かれているキャラもいれば、惹かれること自体が当たり前とされていて描写がないキャラもいます。
 Hシーンは各ヒロインほぼ2回。ひとりだけ3回のキャラがいます。作品の雰囲気からするとなかなかのエロさです。回数が少ないのがもったいなく感じるくらい。

 CGは本作最大の売り。世界観に応じたほんわかするCGはもちろんのこと、切なくなるようなCGも非常に良い味を出しています。そして、日常のシーンでも不意打ちのように現れるエロスなCG。やり過ぎなほどにエロいです。これを受けてのHシーンもまた絵柄からは想像しにくいくらいのエロさ。原画買いを満足させるだけのクオリティとこだわりを感じます。ただし、そんな本作にも問題はあって、メインキャラとそれ以外で原画家が異なるせいなのか、塗りにまで大きな差が感じられて立ちCGが並んだ時にやや違和感があります。また、背景にも同じようなことが言えて、特に人物画のタッチは違いすぎていて異物感を覚えるほど。これらはイベントCGに影響を及ぼしていないのがせめてもの救いでしょうか。
 立ちCG鑑賞モードが用意されているのは出来の良さからとても嬉しいところです。

 音楽は曲数も多く、雪降る街に相応しい曲も用意されています。しかし、中には雰囲気に合致していないような激しいギター曲もあります。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。キャラクターのイメージに合ったキャスティングがされていると逐一、感じます。声優陣もそれに応える演技を披露しているので聞きどころが多いです。

 まとめ。10周年記念タイトルにしては総合力に欠ける作品。総じてレベルが高い、みたいなものを期待していたのですが尖った魅力を感じる機会が多かったです。
 お気に入り:橘姉妹、夕凪一夏
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、夕凪一夏
 あまりそれっぽくない陸上少女。まさかとは思いますけど、動機が走ると頭が空っぽになって悩まなくていい、からではないですよね? 違うと言いきれないのが一夏さんの恐ろしいところ。ホントそれくらい困ったら走ってしまえ状態でした。プレイヤーはまたかよ、ってな心境でしたからねー。
 体操服突発エロが持ち味。コロナやりんねでさえブラをしているというのに! しかも、何度となく繰り返すエロ娘。そして、期待に応える体操服H。脱がさないところに主人公のこだわりを感じました。

2、橘落葉
 FAVORITEだけにまさか葉月のHシーンがあるのではないかとヒヤヒヤしてました。正直、雪々さんよりも(Hシーンがあるかもしれないことに)脅威を感じていました。落葉と姉妹丼が出現してしまうのでは、と。例の星(空間?)が出てきてより恐れは増しましたが実際にはなくて良かったです。良い妹キャラでしたので。
 落葉は葉月にいじられてこそだよなぁ、と姉妹の掛け合いでは終始ほっこりしてました。「お姉ちゃんはいつデレるのー?」(うろ覚え)が一番のお気に入り。ま、実際それくらいのポテンシャルの持ち主でありましたよ。他のキャラが歯噛みするくらいには。ウォータースライダーのイベントCGはなによりもそれを語っていると思います。単純に白の水着が凶悪すぎ。

3、水ノ瀬琴里
 スタイルの良さがもったいない残念少女。ひたすらにコミニュケーションが面倒くさい。柚子だからこそ付き合っていられるとも言えます。ひなたは肉体込みというか、それしか目当てがないくらいだからねぇ。どうでもいいですが本編中ではかたくなにメイド喫茶に入ろうとしない主人公が激不自然でした。
 アポーツ能力の都合の良さにひたすら振り回される。説明を聞いてもそこまでの無敵っぷりが納得いかないんですけど。それ以上に主人公があたかも最初から刀に狙いを絞っていたようなところに違和感を感じます。モノローグと独り言を多用する作品の欠点ですよね。考えがだだ漏れのはずなのに唯一そこだけがどの瞬間にも出てこないっていう。

4、コロナ
 謎のロボット……、ではなかった。推理パートにすっかり困惑。いや、コロナの正体を見破ってドヤ顔されてもなぁ。
 能力宇宙飛行士とか最終シナリオをやったあとだと完全に茶番になってしまってますよね。結局、事故扱いみたいなもので未来も何もない。そもそも、能力者でなければならない、という部分に説得力が圧倒的に足りていないから仕方ないんですけどね。
 最後まで互いを騙し合うカップルにほとほと困りました。

5、蛍りんね
 本来、ロリが優遇されそうなブランド、作品なのに葉月たちの存在のせいか、ひたすらにいじられて冷遇されているように見えます。コロナの存在もマイナスに働いているような気がします。ひなたからのセクハラ度でも琴里に負けていて色々と不憫です。そんな屈折してしまうような状況があのけったいな戦闘シーンを生んでしまったのでしょうか。まぁ、稀に見る発覚に感動の少ない妹キャラですから薄幸が似合っているのかもしれませんけど。主人公あんまり感情が動いていないですよねぇ。

6、雪々
 幸姉さんの方にばかり意識がいっていたのでずっと、まだかなー状態でシナリオを進めてました。他シナリオに比べて雪々に当たり前に惚れる主人公に困惑してました。そのあまりの理由の必要としなさに。