ワガママハイスペック（まどそふと）
一見すると平凡極まりない鳴海幸樹（変更不可）には秘密があった。それはよほど近いもの以外には明かしていない仕事。漫画原作者「いもさらだ」が幸樹のもうひとつの顔であった。ある日、疲れていた彼は仕事の相棒であるメモ帳を落としてしまう。拾ってくれた相手は美貌の生徒会長。憧れても縁はないと思っていた相手から「２人きりで話したい」と呼び出しを受けた幸樹の命運は。完全従属の下僕生活か、それとも……。
まどそふとの新作は同時期にショートアニメ化もされた学園アドベンチャー。
購入動機は体験版がそこそこ面白かったのと設定に少し惹かれたので。
初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は兎亜のおっぱい色紙。最近の流行りなのか、シリアルコードを使用してゲームデータのダウンロードが可能です。また、購入証明書なんてものも付いてます。ＷＥＢ用の発行などもできるようです。それでどうするのか、というのはよくわかりませんが。
ジャンルは伝統のアドベンチャー。
足回りはなかなか気が利いています。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢にジャンプする機能及び前の選択肢に戻る機能が用意されています。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能。恐らくいつでも最初まで戻ることができます。もちろん、ロード直後でも使用可能。シーンジャンプの機能が用意されていて、カーソルを当該メッセージに合わせるとバックログ画面でその場面が再現されます。
前回終了時から始められるコンティニュー機能も搭載しています。
シナリオはありがちな設定ながらも基本をしっかりと押さえています。魅力的なヒロインたちとの賑やかな日常が十分に表現されています。掛け合いはノリも良く、ヒロインの個性が自然に伝わってくるので好感が持てます。惹かれ合う過程もヒロインによって差はありますが、そこそこ以上は描かれているので恋愛描写も意外と言っては失礼ですが楽しめます。突っ込みどころもそれなりにありますが、ゲームがゲームなのでそれほど気にならないでしょう。
一方で、複数ライター制の弊害も多少あります。桜木・ルーフォレット・アーシェの基本設定がぶれていたり、シナリオによって特定の状況に対するリアクション的なシーンを書いたり書かなかったり。制約が少ないのか、ライターのスタンスをそのまま通してしまって摺り合わせなし、のような箇所が散見されます。
お仕事設定を活かしきれていないシナリオも普通にあります。
Ｈシーンは各ヒロイン５回以上。ただし、このうち１つはクリア後に鑑賞モードで追加されるオマケ扱いです。純愛系にしてはかなり頑張ってエロくしています。ただ、テーマのようなものはないのか、いささか内容に散漫な印象を持ちました。それと思わせぶりな様子（衣装）を見せて実際にはなし、というお預けプレイも実装しています。今からファンディスク用でしょうか。
ＣＧは原画家が変わっても高いクオリティは変わりません。可愛いカットは徹底的に可愛く、エロいカットは徹底的にエロく、を実践できていると思います。ＣＧ鑑賞モードであえてページを分けているのがこだわりでしょうか。しかし、差分抜きで８２枚と少し寂しい数字です。
立ちＣＧは掛け合いの援護射撃と呼ぶには豪華すぎるほど多彩に用意されています。各ヒロイン５０を越える表情や８種類以上の衣装など頭が下がるこだわりぶりです。純粋に見た目も華やか。鑑賞モードでつぶさに確認することも可能です。
音楽は良くも悪くもイメージ通りといった仕上がり。耳に馴染みやすいですが、代わりに印象が弱いので記憶に残りにくいです。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は特に問題ありません。ヒロインたちはそれぞれが声質が被らないような声優を起用していると感じました。
ＨシーンのＢＧＶはテキストを飛ばし気味に読んでクリックしていると、頭出しが同じなだけにいつも同じ演技を聞くことになるという悪循環が気になります。単調になって覚めやすいのではないでしょうか。
まとめ。想像以上に良くできている作品。できることをしっかりとやった感が作品に表れています。素直に次が楽しみになる、と感じました。ただし、ここからの上積みはなかなか大変だと思います。冒険するのか、それとも堅実にいくのか。決断を見守りたいと思います。
お気に入り：鹿苑寺かおるこ、桜木・ルーフォレット・アーシェ
評点：７０
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
１、鹿苑寺かおるこ
春の新学期の時点で生徒会に２人しかいないのを誰も気にしていないのが恐ろしいです。任命権があるにしても発足から半年近く過ぎているのではないでしょうか。全員揃ってからの忙しさを考えると明らかに不自然ですよね。ま、言うほどのゲームではないでしょうけど。
なぜかリアクション系のイベントが全然なくてちと不満でした。せっかく担当編集が女性で恩人というおいしいポジションなのに基本スルーだなんてあんまりですよ。せっかく若い２人を会わせないようにしていたのにねぇ。がっかりです。
これみよがしのチャイナ服はただの煽りで中身はありませんでした……。
２、桜木・ルーフォレット・アーシェ
チョロさの鉄人みたいなツンデレさん。こんなにガードがゆるくていいんですか！？ というくらい簡単に至近距離に詰めさせてくれるので戸惑いの方が大きかったです。言いたいことやして欲しいことがあると態度に出まくりで非常にわかりやすいですしね。
生徒会室でＨしようとして先生に見つかるＳＤカットがとてもよろしかったです。優秀な副会長だけにインパクトも大きかったと思います。その後のくまたん先生の様子も良かったです。
終盤のイベントはリアルで言われたら困りますね。個人的には主人公や兎亜の理由とは違って、側に置いておいたら夢を奪った事実にいずれ耐えきれなくなる、ってな動機でしたけど。
３、宮瀬未尋
ほとんど広がりがない動物ホイホイ。店をやっている娘さんにその設定はどぎついのでは、と心配しましたが全く関係ありませんでした。そば屋の子供がそばアレルギー、くらいアレな状況かと思ったんですけどねぇ。
共通シナリオであんだけ主人公をいじっておいて好意ゼロには愕然としました。芸人ならば「フリやな？」と反応するくらいのあからさまなちょっかいなのにねぇ。
４、鳴海兎亜
生徒会に入るための兎亜の自作自演に主人公がミリほども怒らないあたり、ちょっと合わないものは感じてました。なのでかおるこ先輩の妹が素直に良かった私にはその後の展開は色々な意味で受け入れにくいもので。あんだけ図々しいのにかおるこ先輩の助言はさらっと無視するあたりもどうしようもなかったです。なんか語っていましたけど、詳細が不明なだけに理解を示すのは難しいものがありました。普通に厄介な妹だけで良かったと思いますけどねぇ。
かおるこシナリオ同様、ナース服は壮大なブラフ。かなり驚きました。