うそつき王子と悩めるお姫さま-Princess syndrome-(Whirlpool)

 女の子は思春期をため込むとお姫さまになる。別人格を有し重度の者は物理的な異能力さえ発揮する。それが公表されたのはわずか2年前。実際にはもっと以前からその病(?)はあったらしい。有須祐二(変更不可)はお姫さまを助ける王子と呼ばれる力を持っていた。今お姫さまたちは孤島の女子学園に集められている。祐二は日本でただひとり王子の力を持つ者として島に招かれたのだった。

 Whirlpoolの新作は新しくライター七烏未奏氏を起用したぷちリニューアル作品。
 購入動機はブランド買いと体験版が思ったよりも面白かったので。
 初回特典はリセプロモーションカード。予約キャンペーン特典はオリジナルボーカルマキシシングル。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
 足回りはさして代わり映えしません。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、スピードは相変わらず遅く内容を知っていれば十分に読めてしまうほど。使用機会もそれなりに多いので暇つぶし道具があった方が良いでしょう。ただし、シーンジャンプの機能の使い勝手が良くなりました。共通ルート最後のシーンから始めれば2周目以降はすんなり各ヒロインのシナリオに入れます。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後でも使用できます。

 シナリオはネタの節約を顕著に感じます。総数4本のシナリオですがほどほどのボリュームの本作であっても4本分とするにはいかにもネタが少なく、各シナリオで意図的にそこには触れない、といったケースが基本になってます。割りと他では見ない面白いアイデアなだけにあまり奥行きを感じないというか、膨らませられていないのはもったいなく感じます。
 登場人物がそれほど多くないながらもキャラ立ちがしっかりしていることで日常の掛け合いはとても賑やかで楽しいです。笑いの要素も忘れない程度に適度に入ってきて良いバランスになってます。ただ、中にはわかりにくいものや対象年齢高めなネタも含まれますが。ヒロインは4人ながらも主人公を含め非常にバランスがとれていて、それぞれに違った魅力を感じます。これは会話の途切れにくいテンポの良さも生んでいると感じられました。
 惹かれ合う過程はお姫さまと同居設定のせいもあってある意味、必然ではありますがそこそこ丁寧には書かれています。ただ、主人公の方は男ひとりなこともあって少しばかり説得力に欠けます。
 恋仲になって以降のいちゃいちゃ描写はなかなか濃いです。特定のヒロインに偏っているところもありますが、むずがゆさを感じるようなやりとりは最近ではあまり見られません。反面、主人公はひと昔前に主流だったかなりの鈍感くんなので苦手な人は注意が必要です。
 Hシーンは各ヒロイン4回ずつ。今回も最後のひとつは本編から切り離されてクリア後に鑑賞モードから閲覧可能になります。おまけ扱いということなのかもしれませんがどうにも釈然としません。本編では不可能なエピソードというほどはっちゃけている訳でもありませんし。一応は本編ではやりにくい、ぐらいの内容には仕上がってます。
 ヒロイン自身の魅力もあってエロ度は純愛系にしてはそれなりに高いです。ただし、オーソドックスな中身なので物足りなく感じる人もいそうです。お姫さま設定のものもありますが、そちらはむしろエロ度の低下に繋がっているような。

 CGは立ちCGが若干、安定度に欠ける嫌いがあります。特に有須星子の各ポーズや表情は慣れるまではちょっと不安を覚えるくらいです。他のヒロインがほぼ問題ないだけに際立って見えます。個性が感じられるのは救いですが。ここのブランド(原画家)の特徴である、リアル等身で顔の輪郭の中でSD調の目などを入れるのは健在であるものの、キャラと少しだけ表情を選んだことでだいぶましな印象になりました。
 イベント自体のせいもありますが、立ちCGに裸バージョンがあるのは好印象。特に本作はあるとないとでは大違いだと思います。
 イベントCGは意外とおとなしいというか、見返して何のイベントであったかわかりやすい構図が少ないです。心に残るイベント自体の有無も絡んでいると思います。逆にそれができている数少ないカットは実に印象的です。
 こもわた遙華氏が手がけるSDカット。もう断言してもいいと思いますが、メインCGよりも可愛いです。特に月丘泉は明らかに。他のブランドにも言えることですが精進しないとみんな食われてしまうと思います。そして、可愛いだけでなくキャラの魅力を大幅に底上げして笑いも提供してくれる、なかったらと思うとゾッとするような、それくらいの存在感になってます。
 Hシーンは前作よりも幾分か持ち直してエロくなりました。半脱ぎ要素も再び意識されるように。

 音楽は作品イメージである童話を感じさせるような曲は意外と少なく、普通の作品っぽい感じを受けます。各ヒロインのイメージ曲が秀逸でこれが耳に染み込んできます。オープニングやエンディングのボーカル曲はいい曲ではあるものの、あまり作品イメージと合致しないように感じました。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技はサブキャラも含めて総じてレベルが高いです。中でも栗宮みかん役の藤咲ウサさんと有須星子役の桐谷華さんの演技はインパクトがあって耳に残りました。
 ボイス登録という変わった機能が搭載されました。気に入ったセリフをクリックすることでCGなどのように鑑賞画面でいつでも聞けるようになります。テキスト次第とは思いますがギャグや決めゼリフを登録するなどプレイを楽しくしてくれそうです。

 まとめ。再出発は辛うじて及第点。基本的に良くなった要素が目立ちますが、気になるところも多いです。注力が中途半端に感じますが、まだ1本目ということで次を見守りたいです。取りあえず兆しは見えました。
 お気に入り:栗宮みかん、有須星子
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、月丘泉
 すんごい気になるんですけど、彼女の大食らい設定はどこに繋がっているのですか。シナリオ上では何の意味もなかったような気がするんですけど。知らないんですけど、まさかラプンツェルが大食いキャラとか? 属性みたいなものとしてはほとんど弄られていなかっただけにとても不可解な感じです。本人もただ当たり前なだけ、って態度でしたし。少なくとも恥ずかしがったりしないなら属性的な旨味はあまりないですよね。体重も気にしないし。

2、恋ノ河リイナ
 まわりがみんな望奏を発動させて迷惑をかけてくる中で、安定しているリイナは良き相棒というポジションで毒舌含めて密かなお気に入りだったのですが……。いざ本人のシナリオに入ると人格がかなり危うい感じの人でした。寂しさを埋めるためとはいえ、会話もあんまり通じないというのはそれまでと180度違いすぎて残念な思いの方が強かったです。会話が続かないというのは地味に効きますからねー。ラーメンやキャリバーの話ができるだけでも良かったのになぁ。ただ、あの山盛りラーメンは正直、苦手です。
 単純にリアクションがワンパターンというのも頂けませんでした。最初はいいですけど、途中から飽きてましたよ。

3、有須星子
 桐谷華さんのうざ可愛い演技がポイント高いです。確かにうざいのに、うっとうしいのに、でも可愛いという不思議。面倒であることが楽しく愛しいという謎の循環。いそうでいなかった妹キャラの新境地かもしれませんね。「星子っぽい」のSDカットネタが良かったです。ゲームオタなのが完璧に主人公のせいという段階でもう責任をとるしかないですな。
 立ちCGの空手チョップでもしそうなカットがすごい。なかなか稀有なポーズですよね。こんなん萌えゲーで原画家に指定ださないですよ。
 それにしても、星子はブラして寝るんですねぇ。性格からするとおかしな気さえするんですけど。っていうか、普通の人はしないのでは。

4、栗宮みかん
 衝撃のど饅頭。セクハラの象徴でありながらコアなオタクネタでもあり、恐ろしいことに文化祭の出し物にさえなるという文字通りの驚異。最初に餌を撒いたおかげで全編それで通じるという恐ろしさ。他の3人と自在に絡めます。当然SDカットまでそのネタばかりですよ。またそれが効果を発揮している訳ですが。
 リズムゲーのイベントCGは至福と言うしかありません。思わず拝みそうになりますよ?