トロピカルKISS(Twinkle)

 草刈海人(変更不可)はビッグな男を目指す男だ(被り表現)。まだまだビッグではないだけに色々と優柔不断な過去を積み重ねてきた。思いを寄せては振られる(うまくいかない)×5でヘロヘロであったが、その度にケータイを新調して頑張っているのだ。
 今度こそアドレス帳を消さなくても良いようにと選んだ先が巨大リゾート施設ALOHAである。そこで待ち受けていたのは安易に運命という言葉を使いたくなるような麗しき×5であった。しかも、全員から告白されてしまう始末。これはモテ期(遠くないうち死語)なのか。果たして海人はビッグな男になれるのか。

 Twinkleのデビュー作はほのかに懐かしい香りのするアドベンチャー。古式ゆかしくもあり、そう遠くない昔に具体例を見たようでもあり、という既視感満載です。
 購入動機は原画買い。個人的にはこうたろ氏に「あるす☆まぐな-ARS:MAGNA-」のリベンジをして欲しいと思っていました。
 初回特典はドラマCD。予約キャンペーン特典はトロピカルKISSビジュアルファンブック「とろきす☆」。

 新規ブランドのお約束、修正ファイルが出ています。微妙な症状が出るようなのであらかじめあてておいた方が無難かもしれません。

 ジャンルは説明によるとトロピカルアドベンチャー。と言っても特に変わった点はなく、いつも通りのアレです。安心のマップ移動方式を採用。迷うことなどありえません。
 足回りはやはりというべきかデビュー作らしい不手際が目立ちます。メッセージスキップは既読未読を判別してすさまじく遅いです。推奨条件を軽く上回っているのですが余裕で読むことができるほどのスピード。加えてマップ移動とマップ移動の間のイベントは共通シナリオのためスキップの使用機会がとても多いです。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。ロード直後は使用不可。
 ワイドモニターに対応した画面の縦横比の固定機能が用意されていますが、画面両端の黒いエリアではクリックが効きません。
 他にも起動時のNOTICEが飛ばせない、毎日の日付表示が高速化もキャンセルもできない(スキップでもほとんど変わらない)のに5秒以上かかる、クイックセーブの後にいちいち「はい」をクリックする必要がある、など時間を食う仕様が多いです。

 シナリオはどっちつかず気味。本作は状況的には5人のヒロインから同時に告白されるというハーレムゲーです。それでいてこの現実離れした展開は共通シナリオの間しか保ちません。以降はごく普通の、1人のヒロインを相手にした恋愛シナリオへと変化していきます。この前半と後半がどちらも中途半端な仕上がりです。両者とも長所と呼ぶにはしんどいものがあります。当然のようにハーレムルートはありません。
 日常の掛け合いは事務的な会話が多く、文章量の割にテンポが悪いです。また、繋がりがよろしくなく、盛り上がりに欠けるケースが散見されます。基本的にノリが良いのはヒロインが直接関与しないものが多いように感じました。
 惹かれ合う過程のヒロイン側は事後説明。主人公側はあるような、ないようなレベル。作中で主人公は好きになる理由はない、と明言しています。いつの間にか好きになる、とのこと。
 Hシーンは各ヒロイン3回ずつ。尺は総じて短くエロ度は低め。さらにテキスト上では毎日最低3回、といったような描写がどのシナリオでもされるため、実際の描写が3回しかないことはどうも肩すかしの感があります。また、初Hに挑む→失敗の繰り返しがどのシナリオでも用意されていて、途中で食傷ぎみになる可能性が高いです。一体どんな意図があってのことでしょうか。

 CGは衣装デザインから背景まで作品の主旨をきっちりと表現できています。原画は頑張りが感じられますが、それ以上にCGスタッフの貢献が見事です。見応えある仕上がりは十分に本作の特徴なり得ているでしょう。
 イベントCGはハプニング系イベントのカットは画面におけるヒロイン比率も高く、構図も申し分なくエロいですが、反対にHシーンのカットはヒロイン比率も低く、構図やエロ度がもう一歩なものが多いです。
 立ちCGはイベントCGに負けないほどポーズ、表情、衣装が用意されています。ただ、なぜかどのキャラクターも照れた表情がほとんどありません。後ろ姿もありますが、使い方が少しぎこちないものを感じました。非常に残念ながら立ちCG鑑賞モードはありません。

 音楽は作品に相応しい、明るく楽しさを感じさせるような曲が多く用意されています。主題歌はとてもノリが良く、映像込みでインパクトは十分です。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。劣化「Ripple~ブルーシールへようこそ~」。リスペクトと言われた方が納得するほど部分的に酷似しています。けれどシナリオ的には後発としてはあまりにも厳しい出来です。
 未経験者はほどほどの作品と思えば問題もないかと。往年のカクテルソフトっぽい空気も感じさせてくれます。
 お気に入り:涼風ほたる、所天
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、日向花火
 一体どのへんが幼なじみなのか。顕微鏡で探さないと見つからないレベル。立夏の方がよほどそれらしい面を持っているという切なさ。性格的にも苦しく、なぜメインヒロインなのか理解に苦しみます。主人公が告白したのが花火だけってのも承服しにくいです。
 立夏シナリオでなぜ恋敵を手助けするのかとても謎。同一人物に見えません。

2、氷室立夏
 ポジションそのままに性格悪い人。競争に勝ったからといって休みの日にわざわざ仕事中の相手のところへ彼氏を見せびらかしに行くあたり……。
 終盤になぜヘタレるのかとても謎。好きなのかわからないのに相手に必要以上に執着するとか意味不明。目的はなんなのさ。
 ところで、制服はみんな少しずつ違いますけど、なぜ立夏だけショートパンツなのでしょう。

3、葵祭
 パンツ丸見えのイベントCGが示す事実に気付いた時、驚愕しました。いやぁ、あれが現実なら非常にいたたまれない空気になったことでしょう。転んだだけでアレ。パンツなら笑い話で済みますが、胸が丸見えってのはねぇ。改めて考えるとすごいデザインの制服ですよ。水着より遥かに防御力が低いっていう。
 痴女っぽいところは一体、誰が得をしているのでしょうか。しかも、動機がダイエットって……。

4、水無月泉
 なんか特徴があるようでないような不思議なヒロイン。存在は忘れないんですけど、具体的なイベントとかとなると途端に記憶が怪しくなるという。主人公の女装イベントは異常に浮いてましたよ。
 やはり、ほたるあっての泉ですね。

5、早乙女凪
 有能っぷりがもうひとつ感じにくいのが微妙に感情移入を妨げているようにも。同時にそれは高嶺の花に見えないということでもあります。それは成功なのか、失敗なのか。どちらかというと後者のような。
 泉とは違った意味でどうも印象に残らない。

6、涼風ほたる
 あからさまなファンディスク要員なのか、他のサブキャラに比べてデザインが明らかにヒロイン寄りです。メーカー通販のテレカの絵柄もほたるですし。