School ぷろじぇくと☆(アトリエかぐや)

 所属していた学園が潰れるという身も蓋もない理由で転校してきた宮前圭太(変更可)。唯一、空いていた寮は風紀委員専用であったので圭太も否応なく風紀委員に。
 学園に慣れる暇もなく圭太は自分たちが窮地にいることを知らされる。この学園で風紀委員は存在感がなく必要と思われていない。このままでは次回の予算がおりずに風紀委員は消滅、古い寮も取り壊しになってしまうのだ。そうはさせじと風紀委員たちは合法非合法問わずに存在をアピールしようとするが……。

 はや5周年となるアトリエかぐやの新作はチームBerkshireYorkshireの学園アドベンチャー。
 購入動機は原画のデザインが気に入って、というところでしょうか。
 初回特典はサウンドトラック。

 ジャンルはわかりやすいいつも通りのアドベンチャースタイル。作戦選択画面なんてのもありますが、いつもの選択肢と同じです。
 足回りはさすがの充実度。まさにかゆいところに手が届く親切設計になっています。メッセージスキップは既読未読を判別して非常に高速。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。戻れる量はほどほどといったところ。ロード直後にも使用できるのはなかなか便利。

 シナリオはあらすじからも窺えるように狙い定めたお馬鹿路線。風紀委員たちが毎日、立てる作戦は目的のために手段を選ばぬものばかり。風紀を乱す者がいないなら知恵とロボットで強引にでも校則違反へと導くのだ。新築の寮を得るために、という感じのノリ。さらに終盤はトンデモ展開へと広がる芸の深さ(?)を見せています。
 基本的に全編ボケ倒しなのでツッコミ無用という空気が漂っています。いちいち突っ込もうものならきっと疲れ果ててしまうでしょう。凡例を挙げるなら全学園で5人しかいない風紀委員が一クラスに4人集中して在籍している、とか。
 馬鹿とボケばかりかと言えばそうではなく、意外にも恋愛描写は秀逸。好意に気付いてからお互いが徐々に近づいていく様子が丁寧に描かれています。特に日向遥シナリオは本末(風紀委員関係)が転倒してしまいそうなほど力が入っていて印象深いです。アトリエかぐやらしからぬといっては失礼でしょうか。
 Hシーンは各ヒロイン3~5回程度。アトリエかぐやにしては珍しいことにシーンそのものは終盤に集中して配置されています。さらにこれも珍しいことに複数人プレイ、ハーレムルートはありません。
 エロ度は上に書いたようにいつもに比べれば若干、低いですが一般的な作品と比べれば充分なエロさです。

 CGはひたすらに可愛さ重視といった方向性でまとめています。SDカットの他にもアイキャッチにはヒロインの飼う謎の愛玩生物の癒しカットを持ってくるなど(きっと)徹底しています。
 ヒロインのスリーサイズに対する情報がないので推測ですが、ヒロインの中には貧乳の人がいます。絵的に巨乳ヒロインと描き方が異なることからなんですが、これらのカットがやや微妙です。巨乳をそのまま小さくしたような貧乳なので違和感があります。率直に言うと原画家が不得手なのではないかと。
 立ちCGは本作の看板と言っていいほどに良い出来。イベントCGにも負けない可愛らしさでヒロインの魅力を見せています。衣装、ポーズ、表情とも豊富です。それだけに相変わらず立ちCG鑑賞モードがないのは残念。
 Hシーンは一部にアニメーション処理を採用。空中に浮かぶ舌や指がウネウネと動きます。効果は人によって差がありそう。

 音楽はのんびり系の曲が多いです。シナリオのノリほどには馬鹿っぽい曲はありません。しんみりするような曲も意外に多く、じっくりと聞かせてくれます。
 ボイスは主人公以外フルボイス。適材適所という言葉が相応しいキャスティングで弱点らしい弱点は見当たりません。ちなみに主人公はデフォルトネームだとボイスのフォローがあります。
 パッケージに声優表記の間違いあり。先生を除いて左回りにひとつずつずらすと正しくなります。

 まとめ。かぐや流の萌えゲー?的な作品。新たな可能性が垣間みえたようにも思います。マンネリから脱却を図ろうという気概が感じられました。恋愛描写は良かったですし、お馬鹿なところもなかなか。このまま良いところを延ばしていけばそこらの萌えゲーメーカーが気の毒になるような作品が生まれるのではないでしょうか。
 お気に入り:日向遥、神代雫
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、桜小桃
 パッケージヒロインだしCG的にも優遇されているっぽいんですがシナリオは最も面白味に欠けるという厳しい現実。作戦も馬鹿度が足りないがそれ以上にカラオケ作戦とか工夫がなさすぎ。しかも、2回もやるほどのことじゃない。キャラが悪くないだけにもったいないところ。
 ラストのジェシカ作戦も正直、笑えばいいのか呆れればいいのか悩みます。そういやこれも2回ありましたな。

2、文月蛍
 本人のシナリオでは魅力が出ているが他のシナリオではものすごい勢いでにぎやかしになってます。テンプレートに合わないことはわずかたりともしないという。いたってわかりやすい複数ライター制の症状です。
 で、自分のシナリオとなると可愛さ全開。要は細かい心情やリアクションが描かれているからなんですが、恥じらいがあるとないではここまで違うという典型的な例。
 しかし、基本的に何を考えているのかよくわからないキャラなので好きになる理由とか結構いい加減だったり。
 真っ当な意味での作戦は馬鹿馬鹿しくてなかなか面白いですが、代わり(という訳でもないんでしょうが)にあまりにエロさに繋がっていないという悲しい点も。下手すればラブホのCGが一番エロいかも知れないですよ?
 蛍は私服のワンピースが可愛いだけにこれを有効活用したHシーンがないのは痛恨。もったいないことです。

3、芦沢すみれ
 意味があるのかないのか自分のシナリオ以外では全くというほど出番がない。担当のライター以外は存在を忘れていたのではないかというくらいに。CGモードのすみれページを確認していなければ攻略できないのではなかろうか、とか思ったかもしれません。
 シナリオの馬鹿度はこれが一番ですかね。短い分だけ強い印象が残ります。エネルギーチャージHはありがちとは言え、こういったものには欠かせません。

4、神代雫
 毒舌ツンデレとでもいうところでしょうか。蛍同様、自分のシナリオとそれ以外で大きな格差がある。まぁ、性格と役割を考えればこちらは止むを得ないですが。
 歯牙にもかけない、なんて態度の割りにはあっけなく主人公のことを好きになってしまいます。しかし、雫の見所はここから。好意を認めたくない、ただそれだけから暴走する様はそれまでとのギャップもあって実に可愛らしい。逆境に弱くひたすらに墓穴を掘るタイプですな。
 少女漫画を彷彿とさせるようなイベントCGがナイス。

5、日向遥
 作戦の方はほとんどそっちのけでありますが、幼なじみとのシナリオは本作で最も読み応えがあります。数年ぶりに再会する幼なじみ同士が再び気心が知れていく様子は丁寧に描かれていていい感じ。
 さらに恋仲になっていく過程も過不足なく描かれていて申し分ありません。本音作戦とかまるっきり恋仲に繋げるためだけに用意されたもので、この開き直りが素晴らしいです。
 他のシナリオと最も異なる点はヒロインだけでなく主人公の方も相手をどのように好きであるかをしっかりと語ってくれるところ。これがあるとないでは大違いです。結局はそれがヒロインの魅力を上げることにも繋がります。
 幼なじみのシナリオとしてもコンパクトサイズではありますがよく書けているかと。実際、これを明らかに上回る幼なじみシナリオってそうはないと思います。特に2人がどういう関係かってのがうまく表現できているかと。