最終痴漢電車2(アトリエかぐや)

 新堂巧(変更不可)は泥酔していたある日、最終痴漢電車に出会う。そこは日々、痴漢としての一面を持って生活している巧でさえ、圧倒される異様な空間であった。ゲストと呼ばれる少女が乗り込み、痴漢達がそれに群がる。巧の興奮は電車を降りた後も醒めることはなかった。
 その日以降、巧は再び最終痴漢電車に乗り込むために活動することになる。乗車に必要なゲストを求めて。

 今やエロに関して業界最高峰との評価もあるアトリエかぐやの初の続編もの。実のところ、アトリエかぐやの作品は「最終痴漢電車」しか所持していないこともあって、それが逆に買いやすく惹かれる要因でもありました。もちろん、エロそうだからという自分でもわかりやすいにも程がある理由も。

 システムは前作とは打って変わってたいへん普通なアドベンチャースタイルオンリー。音ゲーっぽさのかけらも残っていません。痴漢行為を音ゲーのようなシステムで比喩表現していたこと(楽器を奏でるようにヒロインを奏でろ?)を評価していたので個人的には残念な変更。
 ゲスト探しは痴漢ゲームには毎度お馴染みの路線図から行います。タイトルからの縛りもあってかバスなど他の交通機関はありません。男は電車一本。
 各駅にカーソルを合わせると出会えるヒロインが表示されます。複数の場合もあるので駅名をクリックしてからヒロインを選択という具合。選択は一日に朝、夕、夜の3回。
 難易度は非常に低く、面倒なフラグ立てをする必要はなし。ほとんどのヒロインは遭遇して一度目か二度目に痴漢シーンに入れます。いわゆる仕込みと呼ばれる行為はテキスト上では行っていますが、システム的にその苦労をプレイヤーが味わうことはありません。ストレスなくゲームを進められることでしょう。
 痴漢シーンは選択肢のみで進行。触る部位によって快感度及び不快度メーターが上昇します。前者が振り切れば成功、後者ならば失敗。

 足回りはなかなかに快適。メッセージスキップは既読未読を判別した上で高速。とはいえ、基本的に最後までタイトル画面に戻ることなくひたすら継続していくゲームですので、あまりその恩恵には預かれません。
 メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ロード直後にも使用可能(感心なことにいつでもスタート時まで戻れます)、ボイスのリピート再生装備、ホイールマウスにも対応と完璧なようですが、なぜか巻き戻し開始にはホイールマウスが対応していません。まさに画竜点睛を欠いた印象が惜しまれます。

 シナリオ。主人公が最終痴漢電車を運営する側の人間から参加する側の人間に変わりましたが、やることは全くもって一緒。プレイヤーが戸惑うことはないでしょう。ただひたすらに痴漢していればいいのです。ただ、説得力という痴漢ゲームにとってどうでもいい、もしくは見ないふりをしている側面はさらに薄れたような気がします。特に双子シナリオ導入部は前提を踏まえた上でもやや強引。
 正直なところ、主人公が惹かれてやまない「最終痴漢電車」の魅力というのが伝わってこなかったです。自らゲストを用意して他の痴漢に蹂躙させて満足するというのがどうも。せめて自分以外のキャラもゲストを用意するようなことがあればわからないでもないのですが(まぁ、だからこそ最終痴漢電車に乗せるか否かという選択肢が用意されているのでしょうけど)。
 主人公の痴漢以外の日常が数パターンしかなく、1人目のターゲットを狙っている最中にメッセージスキップが可能になるのはある意味で好印象。どうでもいいところに割く労力などないと言っているかのようで。ならば痴漢シーンでは大充実かというとそうでもないのが微妙なところ。

 CGはゲーム全体のエロの9割近くを占めるといっても過言ではないほど頑張っていると思います。電車内で痴漢といういつでも同じシチュエーションながら構図などもかなり工夫がされています。そのおかげで原画家の得意不得意なカットが丸わかりであるのはご愛嬌。
 痴漢ゲームに必須の部分違いCGも呆れた充実ぶりで、多いものではなんと28枚。CGモードで閲覧するのも一苦労な枚数を実現しています。原画家獅子奮迅の働き。ただ、この枚数に応えるだけのテキスト量がないのが残念。

 音楽はこうしたゲームの、あまり要素として重視されないものとしては聞けるものが揃っているかと思いますが、一部にどうも聞いたことがある曲が混ざっているのも確か。やはり似通いやすいということなのでしょうか。
 ボイスは前作とは比べ物にならず。人選が変わったとはいえ、驚くほどの進歩を遂げています。演技に関して不安になることはないでしょう。

 まとめ。良くも悪くも典型的な「2」もの。奇抜な要素を捨て、CGとボイスに飛躍的進歩というあたりが特に。痴漢ゲームにある種の馬鹿さや偏りも求める人には向いていません。あくまでもエロのみで勝負という方にオススメ。
 お気に入り:秋月美鈴(無謀な勝負を挑むあたりが)
 評点:70

 あまりキャラに対する思い入れはないのでキャラ別感想はありません。