Renaissance(JIN)

 ヨーロッパ風の街並みを持つ神無町に住む画家志望の主人公、天童弘司(変更不可)。彼には人には言えない悩みがあった。幼い頃に亡くなった母が幽霊としてそばにいるのだ。しかも、その姿は弘司と伯母にしか見えない。
 ある日、東京に住む父が倒れたと聞いて弘司は神無町を離れる決心をする。ところが、それを境に弘司の周囲でおかしなことが起き始めるのだった。

 最初はノーマークだったんですが、原画の煉瓦氏の雑誌イラストを見ているうちに次第に気になってきて購入。なぜだかとても安かったこともその一助です。
 このゲーム、色々なところにスタッフの個性が出ているのか、割と変わっています。
 リーフレットが初回特典についているところとか、ボイスがないのに主人公の名前が変更できないとか(別に主人公の名前にシナリオ的な意味がある訳ではない)。

 期間は東京へ行くまでの2週間と少し。システムは……、これが腐っていますね。システム設計者が何を考えてこんなものにしたのか理解に苦しみます。
 毎日の終わりに主人公は翌日の支度をします(感心にも毎日、教科書を持ち帰っているようです)。その際に選択肢が現れます。
 「え~と明日は○時間目に○○の授業があったよな」
 とこんな感じで。プレイヤーは時限と科目を選択する訳ですが、パッケージの裏面には恐ろしいことが書かれています。曰く、選んだ教科によってイベントが発生します(!)。イベントが起きなかったら選択ミス(!!)です。
 こんな無体なシステムには初めて遭遇しました。
 実際には選んだ教科が画家志望らしく(?)、2色の色合いになっていてそれによりフラグを立て、各シナリオへと分岐します。つまり、意味的な関連性は全くありません。なんか、ため息が出そうです。
 しかも、ちょっと想像してもらえればわかるかと思いますが、授業の選択は週末を除いて(なぜか土曜日は選択しない)2週間と少しの間、ほぼ毎日行われます。これをどう選ぼうが自由です。
 つまり、主人公の意志によって週毎の時間割が変化してしまうんです。ていうか変化させないとフラグが立ちません。主人公は神ですか?
 1回目のプレイではロクにヒントも出ませんし、個人的には攻略情報を見てプレイすることを強く推奨します。達成感の伴うことのない、理不尽な努力を強いられるのはあまりにツライです。メッセージスキップが使いづらいこともそれに拍車をかけてます。

 シナリオは原画とも相まって独特の印象を受けます。ただ、題材が題材なので難解な印象を受けます。流し読みしているとまるで訳がわからなくなるでしょう。
 シナリオの構造は「リフレインブルー」的といえばわかる人にはわかるでしょうか。個人的にはこういう制作者側からヒロインの順位のようなものが示されるものは好きではないですね。まぁ、ゲームというより小説向けの内容だから仕方ないのかもしれませんが。

 CGはモノによっては手抜きが感じられますが、基本的には原画の魅力を損なわない良いものに仕上がっているかと思います。

 音楽はまぁまぁ、といったところですが、気になる点も。曲に限ったことではないのですが、どうもシナリオ、CG、音楽といったそれぞれの要素に協調性が感じられないのです。主人公の弘司の原画からあの性格を想像するのは困難ですし、母親が登場する時のSEは純和風的なのにその姿はまるで天使のようです。
 これらはほんの一例ですが、統一された世界観の出来事とは思えないのが正直なところです。各担当の意志の疎通が図られていないではないでしょうか。

 まとめ。結構、厳しいことを書きましたがこのゲームの場合はそれだけ気に入ったということです。問題はありますがこの独自のカラーは大事にして欲しいですね。ここのチームは次回もチェックを入れることにします。でも、無意味どころか印象を悪くするだけのシステムは勘弁して下さい。いや、本当に。
 お気に入り:雨宮麗依那、海江田羽純
 評点:55

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、海江田羽純
 唯一、自力で解いたキャラ。最初にクリアしたおかげで以降の話が非常に分かりやすかった。年上でありながらあの可愛さはちょっと反則ですよね。Hシーン前後の会話は弘司との関係がよく表れていて好きです。かすかに頬を染める立ちポーズも○。これで夢だったなんてオチでなければねぇ。

2、源優子
 麗依那との三角関係の相手としては弱いなぁ。縒りを戻さない時のほうがいいね。こいつの場合は。

3、雨宮麗依那
 国会議員が名付けたとは思えない当て字だよなぁ。これじゃ、暴走族のセンスだよ。夜露死苦。
 しかし、髪を染めた理由はなんとも可愛らしい。羽純さんに負けないものがある。まぁ、でも弘司がその理由に気づかなくとも無理ないかも。結婚の約束CGはお気に入りです(髪黒いし)。
 ラストはなんかミステリー小説のようでした。

4、エリス
 納得いきません。ええ、いきませんとも。どうしてHシーンがないんじゃあ! と叫びそうになりました。いや、ない訳じゃないけど外見があれでは駄目です。不許可です。ああ、あんなに健気で可愛い奴なのに。
I don’t need 山岡(メガネ).

5、平野深雪
 これもエリスと同じく。てっきりHシーンのために転生したのかと思ったのに。あのおかしな、でも笑える癖もほとんど意味がなかったっていうのが×。平野深雪としての意味が皆無なんだよねぇ。
 あと第一印象とシナリオの役目があまりにも違いすぎません?

6、早川紅葉
 スーツ姿がやけに似合うと思ったら……、という困ったヒト。彼女に入れ込んでると後半に恐ろしいことになる。その時の弘司のリアクションは最高でしたが。
 私は幸いにも羽純さんの方がお気に入りだったので被害は少なかったです。

7、天童弘司
 ある意味、こいつが一番の謎。あのエンドレスタイプのラストはしんどい。特に主人公=プレーヤーというスタンスでプレイする人にとっては。どう考えても天童弘司というのは自分ではなく、客観的に眺めるだけの他人だからだ(名前も変更できないしね)。
 個人的にあのラストはどうにもすっきりしませんでした。なんだか各ヒロインたちへの思い入れが偽物だと言われているようで。