ReCATION~Melty Healing~(hibiki works)

 入社2年目の楠響吾(変更可能)は地方の支社へと転勤してきた。小さなチームのリーダーとなり、責任を負う立場となって考えるのはいつも仕事のこと。新しい出会いもあったがなかなか響吾の中へと入ってくることもない。ある時、心配した上司は問いかけます。
 「君が倒れた時、心配する人はいないのかい?」
 その言葉をきっかけに響吾は今までとは違った視点で物事を考えるようになっていく。

 hibiki worksの新作はタイトルからもなんとなく、わかるように「CATION」シリーズの系統に連なる作品です。よって「いつもの」と評したくなるようなシステムを搭載しています。
 購入動機は半年以上エロゲーを購入していなかったから。どうにか手を出す気になったのが当該タイトルだったりします。色々と寂しい時代になってきました。
 予約キャンペーン特典は描き下ろしイラスト色紙。初回特典はオリジナルサウンドトラックにドラマCD。

 修正ファイルが出ています。それほど重要な内容ではないので、あてずともプレイにはそれほど支障はありません。気になる方はダウンロードしましょう。

 ジャンルはいつもおなじみのアドベンチャー。
 主人公の名前登録に伴ってヒロインからなんと呼ばれるかを選択する、「ラブリーコール」を設定します。直接的な名前から愛称、あだ名っぽいものまで240種ほど用意されています。これだけは代を重ねても変わることはないようですね。
 およそ7年ぶりにここの作品を買いましたが、足回りはちっとも進歩していません。それどころか微妙に退化しています。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢へ進んたり、前の選択肢に戻ることはできません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。シーンジャンプ機能もありません。また、ロード直後にも使用不可。
 前回の続きからはじめる、いわゆるCONTINUE機能はありますが、なぜか数回に一度、前回ではなく前々回の続きから始まります。Ver1.02でも全く触れられていないということはこの症状は私だけなのでしょうか。

 シナリオは予定調和の感がすごいです。それほどある訳でもないボリュームの中で主人公が弱みを見せてヒロインがどうにかする、というのが基本ラインなので(恐らく癒しがテーマだから)、勢い同じような流れやノリになりやすいです。作品中の時間経過も短いので「癒し」を感じ始めたらもうエンディングというのが正直なところです。春から始まって半袖を意識することなく物語が終わるあたりからもそれは窺えるのではないでしょうか。ちなみにこの短期間で結婚ないし似たようなところまで進んでしまいます。
 ヒロイン以外と会話をする機会は多くなく、にぎやかな掛け合いは期待できません。笑いもほとんどありません。プレイ中の大半はヒロインと一対一で会話するのみです。
 惹かれあう過程も上述した理由によりいささか苦しいところがあります。主人公は個性に乏しい汎用性のあるキャラではなく、母性本能を激しく刺激する、ある意味ハンターのようなキャラクターです。
 半同棲のような間柄になっても喧嘩らしい喧嘩ひとつしないのでいささか腑に落ちない面もあります。その期間がないとも言えますが……。
 Hシーンは各ヒロイン7~9回。素材数は同じでも配分のせいか、回数は平等ではありません。エロ度は現実的な描写を追及しているせいか、それほど高くありません。いたっておとなしいものがほとんどを占めています。あまり高望みしない方がいいでしょう。

 CGは各ヒロイン25枚、つまり差分抜きで75枚とかなり寂しい数字です。フルプライス、それも9800円でこれはちょっとどころでなく落胆してしまいます。SDカットは各ヒロイン2枚ずつの総計6枚。共通シナリオ部にはないので最初は突然、現れて驚かされます。この枚数では売りと呼ぶには厳しいように思います。
 立ちCGは表情が豊かで会話をしっかりと盛り上げる手助けをしてくれます。ただし、ヒロイン3人のわりに衣装は3~4種類とほぼ必要最小限で見た目にも楽しいとまではなかなか言えません。省力化を嫌でも感じさせられてしまいます。CATIONシリーズの伝統かはわかりませんが、ヒロイン以外に立ちCGはありません。

 音楽は起伏の少ないシナリオの影響を受けていて、意外に感じるような曲はほとんどなし。良く言えば邪魔をすることなくBGMに徹していますが、悪く言えばあまり印象に残りにくい曲作りになっています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。つまり、主人公に関しては(ラブリーコール以外に)名前を呼ばなくてもいい配慮がされているということです。演技の方は特に問題ありません。ただし、売りであるラブリーコールは(恐らくはパターンの少なさゆえに)前後の文脈に対して温度差を感じることが普通になっています。あまり効果的とは言い難いように思います。

 まとめ。コストパフォーマンスの悪い作品。素材は良いのですがさすがにボリュームが乏しすぎます。癒されていく作品なのに下手したら1日で終わってしまいそうな中身ではフォローも難しいです。
 お気に入り:二川晴
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、月野瀬理歩
 せっかく良キャラなのに掘り下げがもうひとつでもったいないです。ソウルフード好きのところももっと活かしてほしかった。城崎教授との絡みももっとあってしかるべきだと思います。もっと冷やかされてこそでしょう。ゲーム実況を止めてしまうのも実にもったいない。正直、「卑劣な罠」がマックスだったように思います。

2、二川晴
 妹の千夏ことちーちゃんの出番がもっともっと必要だったのではないでしょうか。仕送りを叱られたことでエロエロわんこになってしまうのは色々と問題ですよ。挙句にこれがやりたかったこと、なんて開眼されてはちーちゃんは責任を感じてしまいますよ?

3、椿日菜子
 管理人さんの響きはよろしいですが、とてもとても有名なキャラを想起してしまってハードルが高すぎます。正直、勝負にさえなっていないですからねぇ。いっそ知らない方がいいでしょうけど、その場合は果たしてこの属性にどれほど感じるものがあるでしょうか。難しいものです。