プリズム◇リコレクション!(Clochette)

 9月を前に久我山昌信(変更不可)は両親と妹の住む図南市に帰って来た。そこはかつてとは違って、日本の中にありながら一種の自治都市として成立している場所だった。昌信は☆☆☆部という怪しい名前の部活の代表である連城紗耶香に目をつけられる。類は友を呼ぶ。それが正しく働いたのか、部には怪しいメンツが揃っていく。もちろん、自分は常識人だと思っている昌信も十分に変人のカテゴリに入っていた。

 Clochetteの新作はまたしてもリベンジという言葉が似合いそうな架空都市が舞台の観光案内アドベンチャー? 「あまつみそらに!」の舞台、美空島に対してもなんだか魅力を伝えたい、というようなところがありました。声優が(それも2名)病気になって発売延期になるという珍しい事態がありました。
 購入動機はそろそろブランド買いと言っても良さそうな感じになってきました。
 初回特典は「プリ◇コレファンブック」。予約キャンペーン特典は「プリ◇コレ原画集」。どうやらおなじみになりそうな早期予約キャンペーン特典はその場で複製色紙。後日、ポスター配布イベントをやっていました。

 修正ファイルが出ています。それほどたいしたものではありませんが気になる方はあてておきましょう。

 ジャンルはいつも通りのアドベンチャー。
 足回りは意外なほど退化しています。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが標準程度のスピード。相対的には遅いくらいです。加えてアイキャッチが順速のままなので総合的にはとても遅いです。シーンジャンプ機能もありますが、ジャンプ距離がとても短いのでスキップ目的の場合、それほど有用とは言えません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻ることはできません。ロード直後には使用できます。シーンジャンプを使った際にログに反映されないのが地味に痛いです。選択肢の内容がそれだけではわかりにくいため、2周目以降はクイックセーブ&ロードかシーンジャンプを使う必要がしばしば出てきます。
 せっかくシステム的に2周目以降はわかりやすく、どこから遊ぶか選ぶことができてもクリア済みシナリオしか選択できないのであまり意味がありません。ひょっとしたら、このシステムに気づかず終えてしまうプレイヤーもいそうです。素直に「次の選択肢へ」機能があった方が良かったのではないでしょうか。

 シナリオはかなり問題点が多いです。まず、共通シナリオ。ここの中身が、主人公がヒロインを選ぶというより、ヒロインに選ばされる体裁を採っています。選択肢もなんだかわかりにくく、気がつけば相手が定まっている感があります。ところが、それでいざ個別シナリオに入るとなぜか仕切り直したような展開が待っています。周囲は2人を公認しているような状態なのに、当人たちは前に戻ってやり直すような。まるで出来レース状態で恋愛描写もどこか空々しく感じられます。
 次に主人公。控えめに考えてもやり過ぎです。日本中を探しても1人もいないような超人ぶりは感情移入に全く向いていません。ただの学生が007もかくやという能力を持っているのはどうかと思います。もちろん、そうした力は恋愛方面にも発揮されていて全ての登場人物が何もしていないのに攻略されているのではないか、と錯覚するくらいとんでもないです。おかげで緊張感みたいなものは一切ありません。
 さらに個別シナリオ。4本全てがほとんど同じ展開を終盤に迎えます。それも、トンデモ展開と称されそうな内容のものが。まるで漫画の打ち切りに至る過程を見ているかのようによくわからない流れでラストへとなだれ込みます。単純にワンパターンですし、イメージ的にもよろしくありません。必要性が薄いのも困りものです。
 日常の掛け合いは初心者向けオタクネタとキャラクターの生態いじりが基本で、被りも多いのでなかなかに飽きやすいです。センス溢れるとは言い難く、段々と厳しくなってきます。いつもなら長所のはずの立ちCG演出もこうなるとむやみにクリック回数が多くなり、それでも一向に進まずテンポが悪く感じる、と悪循環に陥ってしまいます。また、なぜか不思議なくらいサブキャラ(男)を排除する様子が目立ちます。まるで潔癖症の人がむきになっているかのようで不自然でした。そこまでするのなら最初から出さなければいいのでは、と感じるくらいに。
 惹かれ合う過程は少し触れたようにほとんど見当たりません。正確にはあるのですが、主人公の異常なモテっぷり(高好感度)を前提にしているので原因不明な感じでどうも座りが悪くなってます。
 Hシーンは各ヒロイン5回ずつ。エロ度は破壊力高めのCGに対して弱さを感じます。エロくしようという努力は感じますが、どうも偏ったポイント(写真とか)に重きを置いていることと、シーン単体の尺は短いこともあって行為の中身ほどエロさを感じません。

 CGはやっぱり最大のアピールポイント。可愛さとエロさの同居するカットはときに美しく、ときにけしからん按配が素敵です。差分に対する執念は半端なく、原画家とCGスタッフの妥協のなさを感じました。立ちCGは相変わらずポーズ、表情ともに実に豊富。くるくると変わって見た目に楽しませてくれます。ひとつのセリフ中に何度も変わる様子は見ていて楽しいです。ただ、シナリオの項目で触れたようにテキストに魅力を感じないと完全に逆効果です。クリックしても次の読点に飛ぶだけでなかなか進んでくれませんので。他にも立ちCGが良い出来であるために、ないキャラにとても違和感を感じやすいです。応援友情参加でどうでも良さそうなキャラに用意されていたりするので余計に。

 音楽は場面に応じた曲が用意されているものの、意外なほどおとなしめです。やはり、観光案内を標榜しているせいか、あまり派手な曲やこれぞ「プリズム◇リコレクション!」といったような曲はなかったように思います。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。バランスの悪い作品。オタクネタは初心者向けなのにエロは上級者向けとはこれいかに。物語が弱いのはそのままか、さらに弱体化。取り柄のキャラもテキストによる肉付けがもうひとつ。システムも悪くなる、とファンには悲しい最新作になってしまいました。同チームの次が心配です。
 お気に入り:特になし
 評点:55

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、連城紗耶香
 特別感があるようでないような、不思議な御仁です。巨大すぎる胸もそうですが、取ってつけたような幼い頃に会っている設定もなんだか上滑り気味。写真を撮りまくるのがエロスに繋がっている、というあたりもなんだか微妙です。プラスでもありマイナスでもあるというあたりどうもね。彼女に限った話ではありませんけど、惚れられている理由が不鮮明というあたりも地味に効いています。あまり理解しているように感じにくいとかね。

2、初咲雛乃
 ☆☆☆部の良心。他の面子が大概アレな感じなのでとても心が和みます。話が通じるってとても素敵です。建設的な話し合いができるってこれほど嬉しいことか、と何度も思いました。でも、リアルだったらメイド服には軽く引いてしまいそう。
 漏らして気づかないのはたぶんまずいと思います。大事にならないうちに病院に行きましょう。主人公に常にお尻を狙われているのだからなおさらです。

3、久我山このか
 兄の人生を記録する妹。サラッと書いてますけど、わりとホラーチックでもあります。覚えのない写真なんて朝飯前。体のありとあらゆるところの記録をとられてます。よく精神のバランスが問題なくとれてるなぁ。不思議でなりません。

4、アイナ・アシュウィン
 どこまでも自分の考えを押しつける人。ところが、自分は相手の話をさっぱり聞かない。それで、オタクなので相当に厄介。基本的に迂闊が服を着ているような人。およそ全ての場面で軍人らしくない。というか、そのへんはキャラ付けに失敗している感じ。