オトメ＊ドメイン（ぱれっとクオリア）

　飛鳥湊（変更不可）は祖母を失ってとうとう天涯孤独の身の上になってしまった。これからどうしたものだろう、と途方に暮れていたところに声をかけてきた少女がいた。覚えのない相手だったが、かつて祖母がメイドとして働いていた家のお嬢さまだという。そんなかすかな縁にも係わらず彼女は湊に自分のところに来ないかと誘ってきた。「ようやくばあやに恩を返せるときが来た」と。厚意をありがたく受けた湊を待っていたのは女子しか在籍していない学園であり、むしろ自分の方こそ介護しなければならないと思わせるほどのポンコツなお嬢さまたちであった。

　ぱれっとクオリアのデビュー作は無印ぱれっとでおなじみＮＹＡＯＮ氏がシナリオを手がけるアドベンチャー。
　購入動機はライター買い。久しぶりだったので深く考えませんでした。
　初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は録り下ろしボイスドラマ＆オトメ＊ドメインＲＡＤＩＯ＊ＭＡＩＤＥＮ「オトメのヒ・ミ・ツ会議」収録ＣＤとオトメ＊ドメインＳＰＥＣＩＡＬ　ＡＲＴ　ＢＯＯＫ。

　修正ファイルが出ています。それほど重要な項目はありませんが、あてておきましょう。

　ジャンルはいつも通りの定番アドベンチャー。
　足回りは当然かもしれませんが無印ぱれっとに比べてかなりパワーアップしています。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢へ＆前の選択肢へ戻る機能が用意されています。
　バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。恐らくいつでも最初まで戻ることが可能で、ロード直後にも使用できます。この画面から任意のシーンに飛べるシーンジャンプも標準装備。
　残念ながらＣＯＮＴＩＮＵＥ機能は搭載していません。

　シナリオはミドルプライスということもあって控えめで中編くらいのボリュームが３本となっています。また、それとは別にシナリオの進捗に応じておまけシナリオが開封されていきます。それなりに時系列の関係する話なので、その都度、読んだ方がわかりやすいかもしれません。
　基本はスキルの高い女装男子がダメダメお嬢さまたちを世話するストーリーで非常に安定しています。掛け合いは人数は少なめながらもとても賑やかで、笑いの要素もなかなか多めです。ただし、お嬢さまたちのレベルはかなり低いので注意が必要ですし、逆に変態度はそこそこ高めです。雰囲気作りという面ではあまりお嬢さま学園らしくはありません。言動も普通の学園ものと考えた方がいいくらいです。
　ＮＹＡＯＮ氏と言えばクセの強いキャラクター（おもに主人公）ですが、本作でもそんな面は要所要所でちらちらと顔を見せています。しかし、中編ゆえかあまり深く物語やキャラクターを掘り下げる機会がないため、それほど目立ちません。気になるシーンは以前に比べてずっと少ないでしょう。
　惹かれ合う過程はジャンルの特異さにボリュームも関係してか、かなり怪しい描写となっています。中にはそれが仕掛けとも言えるヒロインもいるくらいなのでちょっと厳しい要素です。
　Ｈシーンはカウントが難しいですが各ヒロイン３～４回程度。エロ度は純愛系（？）にしては高いと思いますが、射精までのカウントダウン機能がある、というイメージで考えると物足りないくらいかもしれません。

　ＣＧは可愛らしくいやらしくを見事に体現しています。原画買いの方にしっかり応えるクオリティと言えるでしょう。それだけに差分抜きで５０枚はミドルプライスにしてもちょっと少なくもったいないように感じます。幾つかのイベントシーンでここであればな、と思うこともありました。
　その代わりとばかりにＳＤカットではこもわた遙華氏が大暴れしています。純粋に可愛らしいだけではなく、笑いの面でも強力すぎるくらいにサポート。効果の高い差分の多段階変化で対応する手厚さです。正直、２０枚という数字以上の存在感を感じます。
　立ちＣＧはイベントＣＧとＳＤカットをつなぐ架け橋の役目でしょうか。豊かな表情は掛け合いを盛り上げる一助になっていますし、見応えある衣装やポーズはミドルプライス作品とは思えないほど。ぱれっとおなじみの後ろ姿もしっかりと継承されています。

　音楽は無印ぱれっとの頃から続くシーンに合わせた曲作りが安定感を生んでいます。曲数もなかなか多いです。ただし、お嬢さま学園という舞台を考えるとそれらしさはやや弱いように感じました。
　ボイスはフルボイス。女装男子なので主人公にも用意されています。当然Ｈシーンもしっかりと熱演です。名前のないようなキャラも含めて演技に不安を感じることはありませんでした。キャスティングからスタッフの自信を感じるくらいキャラによく合っています。

　まとめ。ミドルプライスで良かった作品。それが勝利の鍵といっても過言ではないと思います。恐らくフルプライスであったら、あまりよろしくない方にシリアス度がぐんと上がって、湊くんのクセがもっともっと強くなったことでしょう。まぁ、ヒロインたちはもうちょっとポンコツっぷりがフォローされるかもしれませんが。
　お気に入り：大垣ひなた
　評点：７０

　以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







１、西園寺風莉
　昔から好きに決まっているのだから、久しぶりに会って寮生活が始まれば初日からペットボトルでおしっこしても平気、とか斜め上すぎます。しかも、それが主人公相手ならば誘惑なのだ、みたいに言われてもねぇ。というか、七海先生の前でもしていたのではないの？　それとも、事後に片付けだけさせていたのでしょうか。どっちにしろ最悪ですが。
　変人で変態というのは本当にきついですね。体操服のエピソードはまさにどん引きでした。もし、リアルでやられたら恩人で好きな人であっても百年の恋も覚めてしまいそう。果たして寝ている間にどれだけのことをされているのか（現在進行形）。恐ろしすぎます。
　とにかく言葉が足りない。そのくせええカッコしいだから手に負えません。手遅れになってから申告するタイプですよね。まぁ、第二寮の面々は大なり小なりそんなですが。

２、貴船柚子
　風莉に負けない残念お嬢さま。よくもまぁここまで、というくらいにてんこ盛り。冗談抜きで見た目とおっぱいくらいしか誉めるところがない。約束を守らない体質というのが地味に厳しいです。これ多分、永久に続きますからね。言うこと聞いてくれないのと合わせて厄介すぎます。
　まるで魔女のような地獄の料理スキル。壊れているといってもいいくらいに味覚音痴。そのくせ、作りたがりで無駄に旺盛なチャレンジスピリッツ。惨事の予感しかしません。実際にそれで第一寮を追放されたとかシャレになりませんよ。美結はよく友達でいてくれるものです。性格だってあまり良くないですからねぇ。親しくなるほど困る部分が出てくるし。「私がディスられてますよね……？」とか言うお嬢さまもちょっとねぇ。
　風莉の隠し撮りが発覚するシーンも流されてますが柚子の問題が端的に出ています。他の例を考えても純粋にやっていいことと悪いことの区別がついていないのでは？

３、大垣ひなた
　上２名の後だとすごい人材に見えます。ちょっと中二病なだけですからね。いつでも全開なのが困るだけでほんの少しＴＰＯを弁えてくれれば何の問題もありません。主人公もそういうの嫌いじゃありませんしね。厨房でお手伝いもしてくれるし、料理の腕前も３人の中ではぶっちぎりでトップですから。素直に可愛い後輩と思えます。あまりにも知ったかぶりが過ぎるのは直した方がいいでしょうが。
　本当の自分というのは結局のところ、気の持ちようなのでお嬢さましているひなたも全く問題ないと思います。すでに自覚があるのだから単純に新しい魅力でしょう。