Orange Poket-オレンジポケット-(HOOK)
せっかくの連休中に江田秀晃(名字は変更不可、名前のみ変更可能)は人使いの荒い独身担任(女性)に呼びつけられていた。ご用命の内容はパソコンのセッティング。一通りテキトーに配線していたこともあって作業は進まない。いい加減、飽き飽きしていたところに制服の違う女生徒が現れる。転校生だという少女に秀晃は見覚えがあった。それは遠い日に別れた幼なじみに違いなかった。そしてこれを契機にするように秀晃の周囲はこれまで以上に賑やかになっていく。
HOOK第3弾。しかし、私はこのブランドの存在を知らず、てっきりこれがデビュー作とばかり思っていました。延期の仕方もいかにも新規ブランドという感じだったんで。結果的には毎年6月に新作を出していますね、ここは。果たして4作目はスピードアップなるんでしょうか。
購入動機というか。この作品を買えたのはひとえに延期のおかげだったりします。本来の発売日であればちょっと買えそうにありませんでした。目についた理由はやはり原画でしょうか。最終的な決め手は体験版でした。
初回特典はオリジナルサントラ。ボーカルのフルバージョンも収録されてます。世の中、商売するメーカーが多い中で嬉しい特典です。しかし、音楽がいいメーカーほど商売しているんですよねぇ。
避けられないのがこのお友達(バグ)の存在。色々と修整点があるのでさっさと落としてしまいましょう。今後もバージョンアップする可能性がありそうなので要チェック。
システムは通常のアドベンチャースタイルにちょっと変わった小技を盛り込んでます。その名もR.T.C(リアル・タイム・クリックシステム)。新システムと称して英語の頭文字をとって命名するものはクソゲーというのがコンシューマーでは常識っぽいですが、エロゲーである本作はどうでしょうか。
R.T.Cとは選択肢が出た時にクリックする(あるいはしない)までの時間によってヒロインの対応が変わるというシステムです。例を挙げれば、ヒロインの前で「恋人かい?」と聞かれた時に即座に否定するか、躊躇してから否定するか、それとも無言でいるか、といった感じになります。個人的には突っ込みシステムと呼んだ方がいいような気がします。使い方も広がりそうだし。
ただし、「サクラ大戦」や「とらいあんぐるハート3」に代表されるような選択肢に残り時間を示すメーターがないので使い勝手はあまりよくありません。当然のようにこの時はセーブ不可。まるでそれを考慮するかのように、このシステムはあくまでヒロインの反応を楽しむためのものでルートが変わったりしません。一部プレミアHと呼ばれるシーンが登場するかしないかのフラグにはなってますが。
で、実際問題としてR.T.Cはどうなのかと聞かれれば微妙としか答えられません。何と言っても真面目にとらえればプレイ中は少しも気が抜けない訳ですよ。R.T.C選択肢がいつ出るかわからない上、出た時も見た目にはタイミングが早いか遅いかわからないんですから。クリック後はテキストによってわかりますが、それはプレイヤー的な本意ではないでしょう。
ルート変化が起きないという意味では緊張感もあまりありませんし(ぶっちゃけどっちでもいいんですから)、思ったほどリアクションに差がある訳でもないです。正直に言えば同じケースで相手の違う反応を見るよりも、異なるケースで相手の違う反応を見た方が豊富な側面が見られていいように思います。そもそも選択肢だけで相手の反応の違いは見られますしねぇ。意味をもたせるにはやっぱりルート変化くらいの重みがないと。
他にも移動場所選択時に時間によってその内容(いるヒロインとか時間とか)が変わるシステムを備えてます。変化は1回だけ。
このシステムはさらに微妙。単純に変化に時間がかかるということもありますが、こういうシステムがあってもヒロインの出現率はかなり低いんですよ。場所移動するゲームでは通常、毎日のようにヒロインが出現するものですが、このゲームではさっぱり出てきません。前触れもなく数日現れないなんてのはごく当たり前のように起こります。
結果的にこのシステムは無闇にプレイ時間を増加することに貢献してしまっています。そもそも時間の変化をプレイヤーがあんまり体感できないという根本的な問題もあります。というか、夜の前の放課後に時間差を作ることにそんなに意味があるんでしょうか。いきなり夕焼けでも別に異議有りとするプレイヤーはほとんどいないと思いますが。ちなみに私は2周目が終わるまでこのシステムの存在に気付きませんでした(気付かなくてもクリア可能なキャラもいる)。
さらに本作ではメッセージウインドウの上に時間の変化を示すバーがあったり。右から左へ現在の時間を「授業中」とか「昼休み」とか示しながら進んでいきます。スタッフが何のためにこれを用意したのか私にはわかりませんでした。あえて言えばスキップを止めるためでしょうか?
システムに関して付け加えるならもうちょい詳細を書いたマニュアルが欲しかったです。それが無理ならオンラインマニュアルくらいは用意できなかったんでしょうか。
足回りはデザインこそ頑張っているのですが、使い勝手には甚だ疑問を感じます。メッセージスキップは既読未読こそ判別してくれますが、スピードは程々な上にシーンが変わるごとに(変わらなくても)止まります。おかげでプレイ時間は2周目以降もあまり短縮されません。
メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ホイールマウスにも対応、ボイスも再生可能と一見、頼もしいですが戻れる量は少なくシーンが変わるとクリアされてしまったりします。
シナリオは4人のライターによる分担制。残念ながらそのための弊害もチラホラと見えます。特定のヒロインだけ毎日の出現頻度が高く、あるいは低くシナリオサイズが異なるとか、Hシーンでキャラが大きく違ったり(これは同一ライターなのに違うという可能性もありますが)、プレミアHではいきなり卑語を使ったりとか。それでも4人という人数を考えれば違和感は少ない方だと思います。
キャラ立てがしっかりしていて、その人数も多いのに3人以上が絡むイベント(共通、個別問わず)が少ないのはかなりもったいない感じを受けました。それができればもっと楽しいゲームになったと思うのですが。
日常会話はほどほど。人数がなかなか揃わないこともありますが、本作では突っ込み役が不在気味であることもイマイチ会話が弾まない原因かと。唯一のそれらしいキャラもメガネで引っ込み思案(矛盾しているようですが本当)という頼りなさですし。
シナリオ展開には微妙な点も。ほとんどのシナリオで主人公とヒロインが結ばれた直後に都合よく新しい障害や困難が発生する(しかも、2人が結ばれたこととは関係ないことが多い)のはどうにも。
また、それに関連して主人公の心情描写の弱さも挙げられます。何らかの事実に遭遇しても主人公が正直な心情をなかなか語ってくれません。そのままシナリオは進み、結果が出てから推測するしかないというパターンがほとんど。ライターの好みにしてもさすがにこれはどうかと思います。
本作にも他作品同様、主人公の悪友が存在しますが、これがいくらなんでも便利すぎ。障害や困難は全てこの友人の存在によって解決するといっても過言ではありません。また、この友人は非常にキャラが立っていて、さらに完全無欠の妻までいたりします。正直言って、組み合わせでも存在感でも主人公とヒロインズは負けていると思います。あまりに食われすぎ。そして、主人公の立場なさすぎ。
CGは売りになるくらい可愛らしい出来ではあるんですが、長い製作期間の影響でしょうか、原画家さんの絵が明らかに変化してきてます。初期、中期、後期って感じで。おかげで同キャラでは別人チックなのに違うキャラで同キャラ(表情)に見えるような事態も。
立ちCGはキャラによって若干の差があるものの、表情、ポーズ共に多彩なものが用意されてます。特に黒崎恵留、七緒美典の下級生コンビは良い仕上がりかと。
本作には特定の条件を満たすことで発生するプレミアHというものが存在します。位置づけとしては特別なコスプレHシーンということではないかと(名前からは)思うのですが、実態は寂しい感じ。まずCGは新規描き下ろしではなく使い回しというか、部分違いに過ぎません。ほとんどのキャラにおいてテキストが基本的に同じものを使用というのもがっかり度を上昇させています。
本来コスプレというものは意外性が全てといっても間違いではありません。見慣れた格好をしているヒロインが違う格好になることに新鮮さやギャップを感じる訳です。にも係わらずテキストが同じでは意味がないんですよ。そもそもCGが部分違いというだけでもボーナス的な意味合いは減少すると思います。
音楽は単体ではやや厳しいかもしれませんが、ゲーム音楽としてはなかなか優秀ではないかと。各ヒロインのテーマ曲は聞くだけで本人を想起しやすかったです。
ボイスは相当に有名な方が揃っているので基本的には安心して聞けます。声優のレベルには関係のないことですが、「学校」を「学園」と読んだり変えたはずの主人公のデフォルトネームを呼んだりと作り込みの甘さが各所で目立ちました。修整ファイルをあててなお、ボイスが出ないこともありました。
まとめ。延期の割には完成度の低い佳作。少なくとも企画段階ではもっと高いところを見ていたと思うだけに残念。過度の期待を抱かなければ程々に楽しめると思います。
お気に入り:七緒美典
評点:58
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、綾瀬ナズナ
本名派の方にHシーンで支持率を急降下されたと評判のメインヒロイン。やっぱ違う男の名を呼んじゃいけませんわな。まぁ、プチ浮気気分を味わいたい方にはいいかもですが。
理由はわからないでもないですがブルマーが苦手と。そのくせHシーンがまさにそれであるのは因果応報というべきなのか微妙なところ。
主人公曰く、完璧超人の名を欲しいままにする女、だそうですが、どう考えてもそれは柊の方だと思われます。
シナリオ終盤で明かされる彼女の心情にはそこはかとない疑問が。主人公の転校先を知っていたんなら会いに行けば良かったんじゃないですかね。少なくとも自分を見失ってしまうくらいならそれぐらいはできるんじゃないでしょうか。
Hシーンでは一人で大車輪の如く活躍といった印象。特にプレミアHは常軌を逸するほどのコア度。ブルマーからロリサイズのスクール水着へのお着替え、しかも紺のソックス付きというのはどんなマニアックぶりなのか。サイズが小さいからスクール水着がハイレグになっているんですが。間違いなく本作のエロ大王。
2、小見川円
オープニングのやり取りを聞いた時はすかさずオプションをチェックしましたよ。キャラごとのボイスのオンオフが可能なら間違いなくオフにしていたことでしょう。柊のすぐ後に登場というタイミングも悪かったと思いますが、正直うざさはかなりのものでした。第一印象最悪ってやつですね。相方がメガネというのもそれに一役も二役もかってました。
本編突入後はそれほどではなくて露骨にホッとしました。実際どう見ても円がサブキャラで柊がヒロインでしたからねぇ。や、今でもその方が良かったと思ってますけど。
取りあえず金持ちの娘らしくないからって付き合うことにそのあたりの苦労が一切ないのはどうかと。あんだけ騒いでおいて。
3、藤木咲乃
なんとも強敵でした。やはりメガネは私の敵だと再認識させるに充分なパワーでした。このベタベタなメガネ具合が厳しかったです。つーか、立ちCGの顔に立体感がないんですよ。
どーでもいいですが、私なら意味もなく教室の床でHしたくありません。どう考えても汚いし。
4、綾瀬ユーキ
ナズナの従姉妹である意味はどこにあるのかと問いたいところ。まぁ、それがナズナにスクール水着を着させたのであれば勲一等ものですけど。やっぱロリは苦手ですよ。
5、黒崎恵留
モノローグとはいえ彼女を家政婦呼ばわりする主人公はいい度胸だと思います。しかも、特別エルが主人公宅に来る理由はないんですよねぇ。あえて探せば主人公の母親に世話を頼まれたってとこですが、それだけで毎日来てくれるんだから女神のような優しさですよ。
共通シナリオで発生する休日のお買い物→お料理のコンボイベント。いつの間にか私服から制服に着替えている彼女が素敵です。気付かなかったのか手抜きなのか微妙なところですが、まぁ後者でしょうね、恐らく。
プレミアHで実現はしましたが、やっぱり髪解きイベントは初Hの時に用意して欲しかったデスヨ。せっかく前振りのような会話があったんですから。ああ、もったいない。
6、前原羽弥
やっぱりシナリオがどうにもねー。キャラは悪くないだけに無闇に印象を悪くしたようでもったいなかったです。ありかとの喧嘩とかあまりにも描写が適当でゲンナリでした。もっと中間点の描写が欲しいです。
7、神沼桐子
先輩とは違ってシナリオは悪くないです。ただ一点、このシナリオだけ理由もなく主人公がやけに頼りになることに目をつぶれば。ホント、この頼もしさが他シナリオにもあれば苦労もずっと少なかったでしょうに。それぐらいあまりにも素早く、そして的確なフォローでした。
結局は彼女が惚れっぽいってことなんでしょうねぇ。確かに助けられはしましたけど、他のキャラに比べれば重みのある手助けではないですよね。
8、七緒美典
イベントそのものは少ないんですが、時間の共有の仕方が実に自然で説得力にあふれてます。もしかしたら全キャラ中で最も自然な組み合わせかも。
みのりんの場合、残念なのはHシーン。作中で最もダイナマイツな彼女なんですが、それが絵的にもシナリオ的にも反映されていません。ましてやプレミアHと通常Hは獣娘とバニーガールでほとんど間違い探しの域に到達しております。
9、華山&柊
真の主役はこの2人。他のメンツはただの引き立て役に過ぎません。HシーンはおろかまともなイベントCGもないのに、この圧倒的な存在感。勝負にすらなっていません。そもそも華山が柊の前で泣いた時のエピソードはこのゲームで最も気のきいたものだと思うんですが。