ねがぽじ お兄ちゃんと呼ばないでっ!!(アクティブ)

 放送部に所属する広場まひる(変更不可)は底抜けに明るい笑顔と人懐っこさを持った女の子。悩みは自己主張の乏しいその体のライン。毎日、涙ぐましい努力を続ける彼女は知りませんでした。自分がであることに。

 「Hello Again」のシナリオライターと原画家のコンビが贈る第2弾。前作はあきれるほど知名度が低かったのですが、今作はその設定ゆえか、いきなりメジャーになっています。
 前作がなかなか面白かったので購入したのですが、そういう買い方がピタリとはまるゲームだったようです。雰囲気も含めて前作のいいところを引き継ぎつつ異なる話を、といった感じです。

 システムはそのまんま前作を想定してもらえば間違いありません。メッセージ選択型アドベンチャー。相変わらずテキストの巻き戻しでボイスも再生されるのはありがたいです。
 CGモードも普通のゲームではまず搭載されていない、キャラクターの立ちCGや背景もあってスタッフの気配りが感じられます。こういう配慮は素直に嬉しいです。
 どこのメーカーもここのシステムを参考にしてもらいたいです。使い勝手もよく、機能も申し分ありません。

 シナリオは相変わらずの枕流テイストが感じられます。
 状況が不透明なまま事実を書き続けて、主人公(プレイヤー)が困惑の極みに達したところで落とす(種明かし)という手法が今回も好きみたいです。
 文章全体のバランスも良くなっています。前作はどうでもいいと思われる部分に妙に行数を割き、重要な箇所をあっさりと書くなど、気になる点もあったのですが今作はかなりの改善が見られます。
 キャラクター同士の掛け合いの楽しさは前作と同じかそれ以上。個人的にはメインとなる男性キャラクターが一人なのは残念ですが(主人公は男ですが精神的には女なので)。
 設定からある程度、予測できることですがこのゲームは恋物語というより友情物語となっています。そのあたりは明らかに他の恋愛ゲームとはテイストが異なります。
 男と女の繋がりより、人と人との繋がりの方が強調されています。
 マニュアルを見ると「美奈萌」は「ひより」という名前で、「みなも」とかかれているキャラ(没キャラでしょうね)が存在しています。キャラクターが減ってしまったのは残念です。本当に。
 ヒロインは少なめで3人。そのうち1人が本筋で2人は外伝的なストーリーになっています。とらえ方によってはその逆とも言えるでしょうが。個人的にはメインである桜庭香澄のシナリオを最後にした方がいいかと思います。

 CGはやや少なめですが、テキストにマッチした明るい色調のものが用意されています。それだけに数少ない暗い色調のCGは印象的なものになりますが。
 フェイスウインドウもやや小さいですが、数が多くて見ているだけでも楽しいです。

 音楽はシナリオ(キャラクター)、CGのパワーに比べると少し弱いかな、という印象を受けます。レベルが低い訳ではないので、逆に言えばBGMに徹しているということになりますが。
 ボイスに関するここのスタッフの力量には並々ならぬものを感じます。声優さんのレベルはもちろんですが、原画やキャラクターにピタリと符合している点は素直にすごいと感じます。 
 前作同様、主人公にはボイスがあり、笑顔とその裏側の痛みが肉感を持って表現されていて、非常に効果をあげています。

 まとめ。ややベクトルが分散していますが安心して楽しめる良作です。前作からの長所をしっかりと伸ばしていて好感が持てました。素直に次回作にも期待しています。
 お気に入り:蛍坂小鈴
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、広場まひる
 事実上、主人公であるまひるもヒロインのひとりと言えるでしょう。性別のギャップに苦しむ彼女(?)は確かに可愛いです。
 個人的には各シナリオでまひるが受ける痛みや苦しみ、それにクラスメイトが失った大事なものについての答えがうやむやなままに終わってしまっているのが残念。答えとは言わないまでも、その糸口くらいは提示して欲しかったです。

2、桜庭香澄
 髪はCG的にも黒で良かったのではないでしょうか?
 バッドエンドのほうが香澄の心情がよく出ているように思いました。こちらのほうが深刻なまひるの危機という感じでしたし。
 男であること、女であることに最もこだわっていたのは彼女。それだけにエンディングはやや不満が残りました。
 後半の天使との戦いはなんだかなぁ、という印象。なんというか危機感が希薄で二人がいる意味はどこまであったのかという気がしました。
 最終的である香澄のシナリオでもまひるの学校での問題がほったらかしなのはちょっとね。

3、遠場透
 糸目を開くことがなくて残念。なんとなくそうかな、とは思っていましたが香澄バッドルートでの告白は衝撃的。プレイヤーとしての心中はかなり複雑。
 前作の主人公、東吾もそうですが枕流氏の書くキャラはいい男が多いですね。

4、夕凪美奈萌
 う~ん。小鈴に比べるとパンチ弱いです。同じ放送部ということもありますが、重複している要素があるのがツライ。小鈴の場合は憧れであっても好きだった訳ではないので、主人公の方にも体のことを含めて葛藤があってその描写が秀逸でした。しかし、美奈萌の場合は そこがほとんどはしょられてしまっている。そもそも初めての出会いがよく分からないのだから致し方ないのかもしれません。
 途方もなくどうでもいいことですが、自分のハンドルネームと同じというのはどこかくすぐったい気がします。ボイスありですし。

5、蛍坂小鈴
 真打ち登場。まさにそんな印象。誰がなんと言おうと「ねがぽじ」のヒロインは彼女です。まひるの心情が最も描写されているのは小鈴シナリオだと思うし(特に女だった自分と男になってしまった自分の描写がされていたのは)。
 まひるが唯一、男らしい反応を示したのも彼女だけ。嫉妬したり相手の気持ちを推し量って告白したりと。
 シナリオ的にも見どころ満載。
 「な、なんぼやねぇーん」はこのゲームのベストボイスでしょう。すさまじく可愛いです。次点は「は~うでぃ~」ですが。
 香澄、美奈萌の二人がツッコミ役なのでボケ役としても貴重ですね。
 小さな不満は彼女の男性苦手意識が(日数の上では)容易に改善されてしまうこと。日付の上だけでも1週間とか経過させれば良かったのではないかと。
 Hシーンは「とらハ」シリーズを彷彿とさせるものがありました。嬉し恥ずかしな雰囲気が。もう少し、あのまま続くとなお良かったです。
 ついでにメーカー様にひとつ。お願いですからエンディングカットをパッケージに載せないでください。

6、広場ひなた
 小学生? いや最初はホントにそうかと思いましたよ。義理の妹と聞いてギクリとしました。ああ、良かった。そういう展開がなくて。真相のさわりを知った時は彼女まで男かと思ってびびりました。けど、実際はどうなんでしょ? 確かに女の子のハズですが天使はオスのみ。羽を移植されると……。怖いのでやめときます。

7、叶玲
 出番少なくて悲しいですがいい人です。しかし、さりげなくかばうだけでは、まひるは守れないんだよねぇ。
 この人の怒った顔(フェイスウインドウ)は必見。素晴らしいです。

8、柳川行治
 柳川といっても刑事だったり鬼だったりしません(当たり前)。
 大変、やな奴ですが彼の態度に対しては各ヒロインが彼女たちなりの方法で噛みついてくれるので、あまり残るものはありません。ある意味、気の毒な方。

9、(もと)みなも
 イメージラフに描かれている彼女。性格はやや幼くした美奈萌というところか。ラフだけでもなんとも魅力的なキャラ。小鈴あたりとの絡みも見てみたかったです。