夏の色のノスタルジア(MOONSTONE)
折口諒人(変更不可)は双子の妹、美羽とともに3年ぶりに生まれ故郷に帰って来た。早速、手続きを済ませようとするとおかしなことに、転校先の通称ひまわり学園は女子校だという。しかし、諒人は転校を許可されたのは間違いない、と訳がわからない。いや、よくよく考えてみると帰って来てから奇妙な違和感がつきまとっていた。それは幼なじみと再会したことではっきりとした形をとって表れた。そこはエデンにしてラビリンスだというが……。
MOONSTONEの新作はだいぶシリアスに偏ったアドベンチャー。
購入動機は一応、ブランド買いになるのでしょうか。それとかつてないほど原画(CG)が良くなった、というのも小さくありません。
初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は原画集とPSD画像データDISC。
修正ファイルが公開されています。症状が当てはまる方はダウンロードしましょう。インストールさえできたなら問題ないと思います。
ジャンルはいつも通りのアドベンチャー。
足回りは良くない意味でいつも通り。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、それほど使う機会はありません。本作はシナリオ選択画面が用意されていて、章の頭から始めることが可能になっています。その際、好感度が足りない場合でも該当する選択肢個所のみプレイする、ということが可能です。
バックログは別画面とウインドウの2種類が用意されています。ホイールマウスに対応(後者が起動)、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることができません。ブロック単位の管理のせいか、戻れる量は一定しておらず、そのせいでロード直後にもほぼ使用不可となります。
恒例の時間差起動ディスクは今回もしっかりと完備。パッケージごと押し入れなどに仕舞い込まないよう気をつけましょう。
CONTINUE機能は引き続き採用されていますが、クイックセーブには反応しないので注意が必要です。
シナリオはかなりクセがあります。エデンという言わば仮想空間での物語なのでリアリティに乏しく、何ができて何ができないのか、といったことがわかりにくく感情移入を阻害する要因になっています。キャラクターの言動も同様で非常に偏りが感じられます。ご都合主義と思えてしまう場面もしばしばです。
本作は館モノのようなところがありますがミステリーではないのでいわゆる犯人はいません。よって緊張感はあるようでなく、意外と弛緩した空気が流れることも多いです。時にはそれが退屈と感じられることもあります。キャラクター数が極端に少なく(ヒロイン以外にほぼ立ちCGは存在しない)、会話の掛け合いもお世辞にも盛り上がるとはいえないので。当然、笑いにも期待できません。
惹かれ合う過程はなし。どうやら最初からエデンにいる誰かひとりと結ばれる、そういうこととして決まっているようです。
最終シナリオを除くと個別シナリオに入ったあと、他のヒロインはほとんど登場しなくなります。基本2人だけのシリアスな物語はどこか味気ないです。
Hシーンはカウントが難しいものがありますが各ヒロイン5回程度。多くは「幕間」と呼ばれる章に入っています。本作はHシーンにも必然性がある、ということでしたが、この扱いひとつ見てもとてもそうは思えないような。実際にプレイした感覚でも、どうしても必要と思えるシーンはあまりないと感じました。価値観が変わるとか、そういった意味合いならばほとんどのゲームもそうですからね。
今回も連戦なので尺は比較的長めですが、エロさの方はもうひとつというところ。
CGは塗りの方向性を変えたせいか、これまでのMOONSTONEにない鮮烈な印象を受けました。舞台にも良く合っています。間違いなく本作最大のアピールポイントと言っていいでしょう。ただ、残念なのは基本的に暗い話である、ということでしょうか。エデンの設定のこともあり、どこか作り物めいて見える可能性があるのも難しいところです。
立ちCGもイベントCGや美しい背景に埋もれることなく、しっかりと存在感を持っています。それだけにもう少し人数がいれば、と感じることがあるのが玉にきずです。
Hシーンは純愛系としてはなかなかのエロさ。凝った構図も見受けられて工夫が感じられます。間違いなくこれまでと異なる塗りが大きな役割を果たしています。安定度の増した原画もそれに一役買っています。
音楽は設定のこともあってか、ピアノメインの曲が揃っています。全体的にはおとなしい曲調が多いですが、聞き応えある内容に仕上がっていてサントラを発売するのも納得のクオリティです。
ボイスは主人公のほか端役には用意されていません。基本はヒロインのみと考えて良いでしょう。演技の方は特に問題ありません。
まとめ。物語の弱いシリアス作品。扱う題材にしては分量が短いです。重さがあまり感じられません。プレイヤーの知りたい情報と物語の方向性が重なりにくいのも厳しいところです。
お気に入り:真鶴みさき
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、真乗寺文音
なんというか、目つきで損してますよね。発言の内容も悪いですけど、あの目線はちょっと頂けません。しかも、基本的にそのへんの根拠がわりと身勝手なのが致命的です。全然、賛同できない上に仮に賛同できるとしても、あの言い方になんか反発したくなるという微妙さ加減。せっかくの外見もちょっと残念寄りになっちゃってます。
2、折口美羽
妹であって妹でない、そんなキャラ。かくも双子であるということは差があるものなのか。いえ、違いますね。この折口美羽というイキモノが別種なだけなのです。主人公を自分自身と同一視していたから他の全てに興味がない、って最強ですわ。妹とかそんな概念は生まれる前から超越してますよ。
3、真鶴みさき
すんげー無防備で困る人。過去の出来事から考えると信じがたいくらい防御力低いです。川遊びのイベントで理性を保つのはとても難しいと思います。唯一、まともな人格者でヒロインらしいヒロイン。
4、摩庭祥子
観察力に優れているから主人公を助けられる……。ああ、わかりました。祥子は本作の探偵役なんですね。だから、「謎は解けた」みたいなパートがある、と。言わばそこは主人公が犯人みたいになっていてちょっと面白かったです。そして、感情移入していればいるほど恥ずかしくなりそうです。随分と派手な中二病でしたからね。っていうか、本物であっても役に立ってない異能力っていうのも普通に困りますけど。伏線ならもうちょっと役に立ってほしかったなー。信じる信じないよりも自制心が効かずに使ってしまう主人公の心理の方が気になってました。役に立たないだけに余計に。