待雪の花～ｓｎｏｗ　ｄｒｏｐ（ｎｏｓｔａｌａｂｅｌ）

　聖澤兄妹は母親を失った。これで互いの他に頼るべき存在はいなくなった。和志（変更不可）は病気がちの妹のために学園を止め、働いて育てることを決意する。しかし、２人だけでは住むところさえ苦労する始末。竜次という得体の知れない男に縋るしかなかった。想像を超える貧しい生活。だが、２人は互いがいれば幸せだった。和志は許されることのない想いを胸に秘めて今日も働きに出る。

　ｎｏｓｔａｌａｂｅｌのデビュー作は古き良き時代の匂いがするアドベンチャー。
　購入動機は雰囲気に惹かれて。ＴＯＰＣＡＴのスタッフの一部が参加していることもほんの少し後押しとなりました。
　初回特典は特になし。サントラとかぜひ欲しかったです。曲数も少なかったので余計につけてほしかった。

　ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
　足回りはデビュー作にしては悪くないです。メッセージスキップは既読未読を判別して平均的なスピードですが、選択肢間が長いので相対的に遅く感じます。ひとつ前の選択肢に戻ることはできるのですが、残念なことに次の選択肢に飛ぶ機能はありません。
　バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
　読み物重視の作品でこの仕様はちょっと不親切ではないかと思います。

　シナリオは非常にいい加減です。展開がご都合主義の固まりでキャラクターの登場頻度が異常なほど偏っています。出られては困るキャラクターは不自然なほど長い期間、顔を見せません。必然的に同じキャラクターばかりが連続して登場するようになっています。これが本作の普通です。おかげで物語はとてもあっさりしています。伏線を張る余地がほとんどないくらいに。珍しく張られている場合は説明不足で回収されないことが多いです。
　物語は途中下車方式を採用しています。基本は一本道で、途中の選択肢で当該ヒロインを選ぶとそのルートに入り（下車）、選ばない場合そのまま進んで次のヒロイン（駅）がクローズアップされます。これをヒロインの人数分だけ繰り返します。
　描写が全体的に曖昧です。日時の表記がないことから始まって金銭、病名、薬など全てなんとなくで済ませているため説得力は言うに及ばず、緊張感に欠ける嫌いがあります。上述したご都合主義も当然これに絡んできます。総合すると真面目に読ませるだけの雰囲気を形成できていません。Ｈシーンもこれに準じます。中には展開上の意味がわからないシーンも存在しました。
　惹かれ合う過程はありません。何もないが勝手に好かれているが基本です。妹が色々とだだ漏れなので繊細な感情の機微とか禁断の想いに対する葛藤とかありません。
　Ｈシーンは節操なく挟まれている印象です。少なくとも、エロいかどうかという視点で効果を発揮しているものはありません。回数だけは多いですが中身は首をかしげるようなものが基本です。

　ＣＧは退廃的な暗めの雰囲気を上手に演出しています。しかし、原画がとても不安定で、時には別人に見えることもしばしばです。緒方剛志氏の描いてきた範囲で見てもあまり上手には見えず、可愛らしさもありません。特にキーパーソンである妹の立ちＣＧは病弱の表現にしても不出来なように見えてしまいます。思い入れに関わる部分だけにけして小さくない問題だと思います。

　音楽は本作一番のアピールポイント。曲数は少ないですが、心にしみ入る曲が揃っています。切ない本作のあるべき雰囲気を懸命に紡いでいます。残念なことに他の要素がついてこれていませんが。
　ボイスはヒロインのみで主人公を含め男性陣にはありません。演技の方は特に問題ありません。
　ＢＧＶが用意されています。しかし、まだＨシーン前で会話しているような時にも「あんあん」始まったりするので、とても雑な仕事であると感じます。

　まとめ。見せかけだけの作品。古き良き時代の匂いがしただけでした。コストパフォーマンスも悪く誉められるところがほとんどありません。
　お気に入り：なし
　評点：５０

　ご覧の通りなのでキャラ別感想はありません。