ましろ色シンフォニー(ぱれっと)

 結姫女子学園との統合を半年先に控え、共学校組である瓜生新吾(変更不可)と妹の桜乃はテストケースとして学舎を変えることになった。今はまだ女子校、そこに男子が紛れ込むことに問題が起きないはずがない。苦労性の新吾は色々と抱えることになっていく。

 ぱれっとの新作はこれまでにない外注スタッフで望む意欲作。第3のラインとなるのかはよくわかりません。
 購入動機はメーカー買いかなぁ? 体験版をプレイして決め手を欠いたように感じたので迷いながら。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はすぺしゃるBOOK。残念ながら恒例のサントラではなくなってしまいました。

 ジャンルはいつも通りのアドベンチャー。
 足回りはぱれっととは思えないほど進化しました。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
 バックログは再現タイプ。立ちCG劇、イベントCGに音楽などほぼ完璧にそのまま戻ってくれます。クラスメイトのざわめきなどのBGVだけは例外。驚いたことにロード直後も含めていつでも最初まで戻ることが可能です。作動時はメッセージウインドウ横にサイドバー(オンラインマニュアルの名称はログスライダー)が出現するので長い距離も楽に戻れます。
 セーブ後に自動的にアドベンチャー画面に戻るのは便利なようで不便な面も。通常画面からはいきなりゲームを終わらせることができないため、セーブ後ももう一度セーブ画面やコンフィグ画面を開かなければなりません。他にも2ヶ所以上にセーブしたい時にはむしろ困るのでない方がありがたいかもしれません。右クリックで抜けられれば何の問題もないですからね。
 ゲームをクリアすると立ちCG鑑賞が見られるようになります。これ自体は良いことですが使い勝手は今回も今ひとつ。衣装は自由に選べるのにポーズは選べないというのはもどかしいです。

 シナリオは全4本。1本1本のボリュームは中編と呼ぶには長く、長編と呼ぶには短いくらいの長さ。本数と絡めて考えると作品全体としては中規模というところでしょうか。
 本作はぱれっとには珍しく複数ライター制を採用しています。そのため、一部のルート(特に天羽みうシナリオ)においてキャラが異なるという典型的な症状が起きています。すごく目立つ、というほどではありませんが、場合によってはヒロインの絡み方に関係しているので意外と影響は大きいです。
 3人のライターに共通しているのは日常の掛け合いが良く言えば実直、悪く言えば堅苦しいことで、およそ盛り上がることがありません。その気があるのかないのかわかりませんが、笑いとは無縁のテキストであることもあってテンポは悪いです。また、メイン級の登場人物が少ない上に幅が狭いため、話題が限定され非常に飽きやすくなっています。個人的には共通ルートの段階で(シナリオの)目的のない会話についていくのは難しかったです。
 恐らくは萌えゲーであろう本作の場合、キャラクター描写に疑問を感じることがしばしばあります。それはあたかもプレイヤーがヒロインや主人公をインストール前から気に入っていることを前提に書かれているように見えること。そのせいか、シナリオが始まって進行していっても減点したくなるような姿ばかりが目立ち、加点したくなるような、苦手なヒロインを好きにさせてくれるような描写に乏しかったように感じました。中でも主人公は空気が読める人間であったのに、ヒロインと恋仲になって以降は半ば自覚的に空気を読まなくなるため、成長するどころかむしろ退化しているように見えます。
 惹かれ合う過程は書こうとしている姿勢は窺えますが実質的には希薄です。視点変更も駆使してそれなり以上の尺を用いている割には説得力が足りていません。これはすでに述べたキャラクター描写にも関係があります。中にはサブキャラの方を丁寧に書いている本末転倒なシナリオも。おかげでサブキャラの心境はよくわかるのに肝心のヒロインは何を考えているのかもう一歩わからないなんて難儀な事態もありました。
 物語性の弱さも目につきます。起承転結の組み方が乱雑だったり、「転」があまりにもインパクト不足だったりと課題の方が多いです。各ヒロインシナリオのあらすじを聞いて面白いと思える人は少ないのではないでしょうか。
 Hシーンはヒロインによって表現方法や回数にばらつきがありますが、体感的には各ヒロイン3回程度。回想シーン枠で多いものは水増しや寸止めと思ってもらって問題ありません。
 Hシーンにおいてもキャラクター描写に不安定なところがあって、設定を消化しているのかいないのか判別がつかなかったり意味がわからなかったりする面も。また、普段の雰囲気からするとちょっと合わないように見える唐突なシチュエーションや描写も見られました。エロ度はほぼ見た目通りで綺麗な印象が強いです。

 CGはああ、ぱれっとだな、と思わせる納得の安定度。立ちCGの充実と使い方のセンスは他の追随を許さないといっても過言ではありません。背伸びを感じないところも好ましく思えます。ただ、中には思わず? となるような意図不明のカットもごくごく一部に。
 一方でイベントCGはその美しさは売りとするに十分なものの、相変わらずの枚数不足で差分抜きで73枚と長所と短所が見事に同居してしまっています。加えて立ちCGを活用することで勉強、風邪で寝込む、本を読む、ブランコに乗る、などを演出しているため余計に省CGを感じやすいです。
 Hシーンは全キャラとも普段とは顔が異なるように見えるところがあります。中でも瓜生桜乃は別人に近いです。普段は見せない表情を見せる、というフォローでもやや厳しいように見えました。
 序盤に、足の黒いシルエットだけで歩いている様子を演出しているシーンがあります。狙いはわかりますが、率直に言って歩いているように見えません。歩く様子のアニメーションというのは自然に見えるのが非常に難しく、業界でも共通認識だと思います。それに挑むだけの理由も意義も感じられないのは残念です。

 音楽はタイトルほどには冬を感じさせることはありません。出しゃばることなく切々と、という意味ならばピッタリではないでしょうか。もちろん、コミカルなシーンの曲は除きますが。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は基本的に問題なし。ただし、佐本二厘さん演じるモブキャラたちは存在感ありすぎな気がします。瓜生桜乃役の安玖深音さんはこれまでの彼女のイメージにない妹役でとても印象に残りました。

 まとめ。張り子の虎の如き作品。見栄えを良くしても結局、大事なのは中身であるとエロゲーの基本を改めて教えてくれます。ボリュームが減少傾向にあるのも気になります。個人的には過去作よりも却って悪いイメージが残りました。
 お気に入り:瓜生桜乃、天羽結子
 評点:58

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、瀬名愛理
 メインヒロインとしては明らかにパワー不足。というか、わがままで幼稚すぎてどうにもなりません。学園統合反対の理由なんて酷いもので桜乃が知ったら親友といえども見損ないそうです。終盤の署名問題でクラスメイトが白けるのも当然(お嬢学ならそうでもないと思いますけど)でしょう。まさしく何言ってんの状態。せめてもう少し有意義な提案ならいざ知らず、あんな自己満足100%なものではねぇ。
 独り暮らしを強行する理由も同様。素直に社会勉強のため、の方がよほど良かったというあたり情けない。母親との関係も角付き合わせているけれども、確執ではない、というのがライターの腕では表現しきれていません。
 どてら2枚目と腹巻が欲しい発言はある種トドメでしょう。すでに好きな人にはいいでしょうが、そうでない人には悲しくなってくる。せめて告白くらい済ませた後で言おうよ、そういうことは。この時点で友達なことで恋愛対象外になる可能性大。主人公は大物だと思うよ。
 立ちCGの気にくわなげな表情が違う意味で出来よすぎ。不快感が間違えようもなく伝わってきます。個人的にはこれで苦手意識増大。

2、天羽みう
 えーと、これは紗凪シナリオではないのですか? と何度言いたくなったことか。でも、彼女の支離滅裂ぶりにはついていけないので惜しいとも感じないあたり病巣は根深く。少なくともぱれっと作品の過去の攻略不可サブキャラと比較すればそれほど魅力的でもないと思います。
 くわえてあまりに強力なマザーの存在。ハッキリ言って姉に見える段階で何もかもみうには勝ち目がないと思います。ママンよりも何を考えているのかわからない時点でどうしようもありません。
 ペットに関する意識の低さもため息もの。まぁ、これはライターのせいかもしれませんが。動物と関わっている者ほど、その相手からどれくらいのものを与えられたかをわかっているというのに感謝をするどころか喪失感を抱くだけ。飼われた方も報われません。初めて飼った子供ならわかりますけど違いますからねぇ。
 Hがうまくいかないのに手コキ5連続とか全く意味不明。そりゃ、勃たなくなるまで続ければ成功するはずない。本気で頭が悪いんですかね? もし中毒だとしたらもっとおかしいですよ。

3、アンジェリーナ・菜夏・シーウェル
 野良メイドという言葉にライターがときめているっぽい時点でため息が止まりません。取りあえず、メイド属性は必須なんでしょう。私には理解不能ですが、自作自演とか萌えポイントなんでしょうか。公私混同も不快なだけデスヨ。
 仕えたい主人と好きな人がごっちゃになっている時点で最後の読む気が失せる。というか、普通は別でしょうに。後で言い訳するように言っているけど承諾する時点で給金のことを気にしない主人公も変というか駄目すぎ。

4、瓜生桜乃
 お気に入りなのはCGとボイスの賜物です。どちらかが欠けても駄目だったでしょう。糸目がすごくお気に入り。その代わり妙な目のカットだけは受け入れられず。なんですか、あの変顔は。
 安玖深音さんの新境地的な演技でボイスをほぼ全て聞いたのは桜乃だけでした。まぁ、それだけにシナリオにもったいないものを感じるのですが。