リリカル♪りりっく(ま~まれぇど)

 高槻拓登(変更不可)は幼い頃から転校を繰り返してきました。そんな生活の中で培ってきたのは目立たずおとなしく、というスタイル。どうせ近いうちに別れるなら特別に親しくならない方がいい。そんな後ろ向きの考え。幼い頃に過ごした街に再び転校して来てもそれは変わらない。変わらないはずでした。
 ところが、見ただけで自分を幼なじみであると確信して話しかけてくる少女、拓登の尻を執拗に狙うその兄、兄を愛するがゆえに拓登に嫉妬してライバル視する口やかましいクラスメイト、パンピー相手にも容赦なくボーイズラブを叩き込むクラスメイトその2。拓登の信条とは裏腹に人が集まってきます。
 それでも、頑張ろうと思ったある日、奇妙なコスプレをした少女に襲われる。そして、同類としか見えない相手に助けられます。しかも、それはクールさが売りのクラスメイト。拓登が転校前に思い描いたスクールライフは音をたてて崩れゆくのでした。

 ま~まれぇどの新作はバトルのちょっぴり混じった学園アドベンチャー。
 個人的に初ま~まれぇどなので期待半分不安半分で購入。動機としては原画に対する割合が最も高いです。
 初回特典は特になし。店舗予約特典はお風呂でも使える防水仕様の小冊子「ぶっかけりりっく」。

 ジャンルは上で書いたようにアドベンチャー。システム的に特筆すべきところはありません。
 足回りはもう一歩。メッセージスキップは既読未読を判別しますが、わずかな違いを含んだ文章がパート単位で未読となるため小さなストレスが溜まります。またスピードがかなり遅め。コンフィグでエフェクトを省略すると多少はましになりますが、代わりにメッセージが全く表示されなくなるので不便です。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、戻れる量はほどほどといったところ。
 本作にはパッケージに「萌えエッチを楽しむ4か条」なるものが記載されています。本作の通称「かるっく」になぞらえて4文字がそれぞれ条文の頭文字になっています。その内容については各項で。

 シナリオはあんまりやる気が感じられません。特に終盤に顕著ですが、乗り越える壁の設定がいい加減で緊迫感などまるでなし。複数のHシーンをこなすためになんとなく続いている、そんな風に見えてしまいます。よって最後のHシーンが終わると唐突に幕切れとなります。
 日常の会話はノリ重視でハイテンションなネタ中心。常識は取りあえず棚上げしておかないとあまり楽しめません。基本的には質より量で勝負という方向性。4か条の中の一文、
 >楽しい学園生活は見所いっぱい!
 とありますがイベントの絶対数および種類が少ないため、あまり見所は多くないように感じました。
 惹かれあう過程は他の要素からすると意外なほどにしっかりと描写されています。ただ極端な属性付けのされたヒロインはその限りではありません。お約束の方が優先されています。もちろん、主人公は病的な鈍感力の持ち主です。
 序盤と終盤のバトル要素は取りあえず用意しました程度。燃えとか期待するのは禁物です。アクセント程度に考えておくのが無難ではないかと思います。
 Hシーンは4か条の中の一文、
 >ヒロインの七音は名前と同じ七回のHシーンの実装に成功しました(笑)
 とあるように1回から7回ととても幅広く、カースト制度なみの厳しい上下関係が存在しています。エロ度は回数のわりには……という感じ。ハーレムHなどはありません。また要注意ポイントとして、パッケージに名前のないキャラは攻略できません。かなり勘違いしそうなキャラが若干1名います。

 CG。4か条の中の一文、
 >実力派スタッフによる美麗CG
 というのは確かなのですがHシーンの使い回しがとても多いです。加えて一部のコスプレHが既出CGの差分扱いだったりします(その後は全て脱がせた上でまた使い回しに繋ぐ、とか)。また拡大縮小やカット割りの多用も目立ちました。こうした仕様の前には7回という回数も切なくなるばかりです。
 立ちCGはイベントCGにも負けない丁寧な仕上げが光ります。表情も実に多彩。立ちCGだけでも十分にヒロインの個性を演出できています。ただ、アリエッタ姫の横向きカットなどは骨格を考えるとちょっと怖い気も。
 Hシーンは(使い回しなど抜きにすれば)それぞれの素材は頑張っているのですがもう一歩エロ度が弱いように思います。というより、個人的には予約特典の「ぶっかけりりっく」の方がエロく感じました。
 バトル関係の演出にはなかなかの頑張りが見られます。中でもヒロインの変身シーンムービーはなかなか見応えありかと。欲を言えばヒロイン毎にもう少しパターンが違うとなお良かったです。

 音楽は状況に応じた曲がしっかりと用意されていますが、なぜか記憶に残りにくいような気がします。また、バトル関係の曲はシナリオ同様あまりやる気が感じられません。単体で気持ちが盛り上がるくらいの曲を望みたいところ。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方はサブキャラまで含めて隙らしい隙は見当たりません。むしろ男性陣を含めてサブの方が個性的かも。安心して聞くことができます。

 まとめ。エロゲー初心者用の作品。全ての要素に対してほどほどの期待感で望めばあんまり損した、とか思いにくいのではないかと。経験値が少ない人ほど好印象になりやすいと思います。ただ、活字中毒者を自称するような人は初心者でも止めておいた方がいいでしょう。
 お気に入り:あえて言えば大道寺涼子
 評点:55

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、浅倉七音
 パッケージ裏の4か条がとても虚しい人。七回のHシーンが、とかせめて書かなければねぇ。使い回しの嵐と差分ばかりのコスプレH。加えて状況を無視したシチュエーションの数々には失望する他なく。萌えHというのは薄いという意味なのか真剣に聞きたくなります。
 キャラクター的にも小さくはない問題が。いかに初恋の相手とはいえ、10年ぶりで確認することなく断定して、それを相手にも求めるような態度は普通にどうかと思います。というより、思いもかけぬ再会ならもうちょっと感動するとか他にまともな反応はないの?
 終盤の馬鹿ップルぶりには辟易するより対処法はなかったです。極めて自己中心的で彼氏はそれをフォローする役割なんで厄介でした。

2、貴水鈴
 全体の中ではかなりましな部類。シナリオにも大きな無理はなく、Hシーンも2番目に回数があるわりには使い回しは少ない。ただ、高嶺の花的なポジションになる彼女があっさり自分から好きになるっていうのはとても拍子抜け。クーデレとも言い難い役回り。
 個人的に下着の色と水着の色が同じというのはかなりガッカリしました。こういうのは現実ならそれほど気にならないかもしれませんが、ゲームだとなんか落胆してしまいます。黒だからかなぁ? 白とかならそうでもない、かな?
 ちなみにこのイベントは違和感ありまくりでした。主人公の反応は2回のHシーンをこなした後にしては動揺しすぎでしょう。つーか、色々な意味でHシーン前に入れるべきイベント。

3、クゥ
 なんか声優も含めて色々ともったいないような気がします。魔法服もなんだかねぇ。色々と喚起しないです。位置づけとしても3番目以下だなぁ。

4、アリエッタ
 リボンのシステムは一体どうなっているのやら。城の中はどこでも行けるが外には一歩たりとも出られない。アンビリカブルケーブルだってもうちょっと融通がききますが。
 ラストの投げやりさには吹きました。ライターが面倒くさがっていなくてコレだとしたらちょっと尊敬してしまいますよ。

5、萩原ともえ
 どう見てもサブキャラ。魔法服は大道芸人かと思いました。シナリオは無理ありすぎ。そんなキャラじゃないだろと何度言いたくなったことか。

6、大道寺涼子
 どう見てもヒロイン。ともえとどこかで企画内容が入れ替わったのではないかと思うほど不自然。まぁ、ファンディスク商法と考えればごく自然なことなんですが。
 リアルでボーイズラブのカップリングを考えて目を輝かせる人は僕はいいです。

7、白鳥公平
 自分に正直なところは結構、好きでした。

8、浅倉臣
 AFTERで大幻滅。というか、私の中でなかったことにしました。声優さんの熱い演技に花丸をあげたい。