恋する夏のラストリゾート(PULL TOP LATTE)

 大学生の大在宗太郎(変更不可)は偶然から参加した飲み会で新1年生の幸崎羽海と出会う。これは人と交わらない宗太郎には珍しいことであった。それから数ヶ月、夏を迎えた宗太郎は羽海の誘いを受けてリゾート施設でバイトをすることに。そこで出会う新たな人々。夏が終わった時、彼は何を学んでいるだろうか。

 PULL TOP LATTEの第2弾は夏のリゾート施設でヒロインたちといちゃつくアドベンチャー……、かと思ったんですけどね。
 購入動機は体験版がそれなりに好感触だったので。
 初回特典、なのかわかりませんが夏の思い出キャンペーンとして、期間限定でハーレムルート及び立ちCGが全裸+水着の日焼けあとになるパッチがダウンロード可能になるコードが封入されています。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
 足回りは平均以下。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることができません。シーンジャンプの機能が用意されていますが、なにぶん戻れる量がほんのわずかなのでまるで意味がありません。ロード直後にも使用できません。また、ボイスの発声中に起動するとボイスが中断されてしまいます。

 シナリオは良くない意味で予想を裏切ります。夏のリゾート施設で展開されるのはまさかのシリアス劇。舞台の爽やかさとは打って変わって重たい空気が場を支配しています。例外は導入から登場してひとり丁寧な描写がされる幸崎羽海シナリオくらい。あとはひたすらに暗いムードが支配しています。
 そもそも営業も始まっていないリゾート施設(名前もない)ということで色々と足りないものがあるように思います。ヒロインたちのコスチュームもいわば正式採用前の仮であり、そんなところからも無駄に微妙感を生んでいます。
 日常の掛け合いはそこそこ盛り上がりますがややパターン性があって退屈なところも。笑いは時折、挟まれている程度で控えめです。
 惹かれ合う過程はひとりを除いてありません。それはもう清々しいほどに見当たらないです。反対に羽海だけはひとりしっかりとした尺で用意されています。特別扱いと言っても過言ではありません。
 Hシーンは各ヒロイン5~6回ほど。カウントが難しく感じる内容のものが多いです。大抵のヒロインはエピローグにHシーンが入っていてこれを1回とカウントしています。尺はこのような事情からもわかるようにかなりばらつきがあります。基本このブランドはエロ重視かと思うのですが、その割にはエロ度はそれほど高くありません。シナリオの深刻さがHシーンの内容にまで影響を与えています。
 3Pルートやハーレムルートは別枠扱いでタイトルから入ります。シチュエーション構築の努力は完全に放棄しているような内容及びオチなので期待は禁物です。所詮はおまけと思っていた方がいいでしょう。

 CG。イベントCGは差分抜きで83枚と寂しい数字。これはハーレムルートのものを足した枚数で、引いた場合は78枚になってしまいます。これでは最初からある内容を分けただけと思われても仕方ありません。もうちょっと頑張ってほしいところです。原画はあまり安定しておらずカット毎にかなり印象が異なります。中でも牧汐璃と狩生渚の2人は別人に近いカットが多く含まれていて残念。
 立ちCGは表情、ポーズも豊富でキャラの個性がよく出ています。掛け合いに不安を感じることはありません。全裸+水着の日焼けあとになるパッチはコンフィグによるオン・オフが可能。お遊びとしては面白いですが、この手の作品の売りである制服が見られなくなるので難しい面も。あるいは制服の日焼けあとでも良かったのかもしれません。
 Hシーンは意外なことに制服を使ったものはそれほど多くはなく、全裸が基本となっています。半脱ぎ派の人にはちょっと物足りないくらいの比率です。また、テキストとCGが異なるケースが見受けられました。

 音楽は夏のリゾート地に相応しい、それらしい曲が数多く用意されています。しかし、設定がオープンしていない施設とあってせっかくの雰囲気ある曲もややもったいないです。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。作品の方向性とシナリオが喧嘩している作品。果たして企画段階からこんな作品だったのか。南の島でヒロインといちゃいちゃすることがテーマだったのではないでしょうか。不釣り合いなシリアス展開のせいでHシーンにまで悪影響が出るようでは本末転倒です。仮に最初からこのような作品ならアピール方法が間違っています。
 お気に入り:幸崎羽海
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、幸崎羽海
 本作の看板娘。それは正しくも同時に間違っている気がします。案内人なんだけど、あまり優秀ではないような感じ。もちろん、本人が悪いのではありません。むしろ、他の人間が悪いのでしょう。導入部は彼女のためにのみある、という全体で考えるとバランスの悪い設定。羽海に愛着が湧いたところでリゾート施設に到着。ところが、そこで初登場となる他のヒロインたちはやや魅力に欠ける。なんともアンバランスです。むしろ、他の4人の方がアドバンテージが欲しいところ。
 恋人設定も含めて他のヒロインから見れば羽海はずるいですわな。ただでさえキャラ立ちで負けているのにそんなおいしい設定までついているなんて。実際、羽海から離れると途端に日常は何か物足りないものになってしまいます。まぁ、理由は他にもありますけど。

2、津久見さんご
 サブキャラ(小波)というオプションをつけてまで楽園に重たい話を持ち込むヒロイン。そんな作品ではないけど、プレイ後は他シナリオでの2人の会話の意味が変わってしまうよ! 気軽な会話の裏にどんなギスギスが潜んでいるのやら。

3、杵築莉帆
 元お嬢だからひとりで歩けないって相当だよなー。正直、嬉しさよりも困惑の方が勝りますよ。どこも悪くないのに歩けないとか言われたらねぇ。借金という主人公と最も相性の悪い要素の持ち主。未だにどうして解決に至ったのかよくわかりません。何言ってんの? というラストでした。まぁ、このゲームはそんなのばっかりですけど。

4、牧汐璃
 世捨て人。そうしていられるということが大層、幸せな娘さん。しかも、結局はなんちゃってであったという。や、だからどうして悩んだ主人公をまるであざ笑うようなオチが多いんですかね。

5、狩生渚
 乙女な管理人。ひとり暴走する姿に正直なごみます。他のヒロインたちのアレっぷりに比べてなんと和むことか。渚自身がリゾート施設に勝るとも劣らない癒しになってますよ。