キスベル(戯画)

 10年ほど前から始まったクリスマス会。文化祭でやらかしてしまった江田市生(変更不可)は重い処分を免れるためにも参加を余儀なくされていた。しかし、やるからには楽しいクリスマス会にしたい。意気込む市生であったがメンバーは会長を筆頭になぜか女子ばかり……。

 戯画の新作は「ホチキス」の流れを組む学園アドベンチャー。
 購入動機は原画のイメージカットが気に入ったから。
 初回特典はオリジナルサウンドトラック「SMILE KISS」。予約キャンペーン特典はミニ色紙2枚。

 ジャンルは特に変わったところのないアドベンチャー。
 足回りは安心の戯画システム。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。「次の選択肢へ」&「前の選択肢に戻る」機能も標準装備。実行スピードも早いです。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。この範囲であれば任意のシーンに戻れるクイックジャンプという機能があります。ロード直後にも使用できます。「次の選択肢へ」機能を用いてもしっかりとログに反映されています。
 インストール時に設定のインポートが可能です。戯画の過去作や体験版があると自動でそれと同じ設定にしてくれるようです。こだわりのある人ほど重宝しそう。
 カーソルを画面右端に持ってくるとセーブ&ロードが可能です。左クリックでセーブ、右クリックでロードとなっているのでとても便利。クイックセーブ&ロードはないので事実上これがそうでしょうね。
 右クリックをちょっとでも押しっぱなしにすると未読スキップが作動するので要注意。
 基本的にディスクレス起動が可能ですが、マニュアルによると数十回に一度はディスクが必要になるそうです。

 シナリオはボリューム不足が目立ちます。ヒロインが4人ということを考えると1周あたりはかなり短く物足りないです。お世辞にもコストパフォーマンスが高いとは言えません。
 構成にも弱さが見受けられます。クリスマス会の準備活動というものが主題とするには具体性に欠けていて、物語を引っ張る力になり得ていません。起承転結もしっかりしているとは言い難いです。
 複数ライター制による落差もしっかりと出ています。主人公やヒロインのキャラに違いがあったり、出来そのものに差があったり。ただ、共通シナリオと毛色の異なる宮前エリシナリオが良い仕上がりであったのは意外でした。
 日常の掛け合いはそれなりに盛り上がりますが、ややワンパターンなところがあります。題材ゆえに事務的な会話も多いです。
 惹かれあう過程はかなり控えめです。選択肢とクリスマス会の活動を一緒にしているという事実こそがそれを支えているので実態をあまり感じられません。また、よくわからないが最初からやたらと好感度が高いヒロインもいます。
 Hシーンは各ヒロイン平等に3回。尺はやや長めでエロ度は純愛系にしては高いです。

 CGは色々とクセがあります。3人の原画家の共演があまりうまくいっていないように感じます。どこに原因があるのかわかりませんが、露骨にテキストと原画が噛み合わないカットがありました。また、単純に複数ヒロインが集うカットが数えるほどしかありません。
 原画は全体的に不安定で微妙な表情は言うに及ばず、カット毎に別人に見えるようなヒロインも2人ほどいます。中には非常に良いものも含まれているだけにとてももったいないと感じます。
 不思議なことに立ちCGは総じて安定していて、イベントCGのように首をかしげるカットが見当たりません。ただ、デザイン自体はともかく、サンタ服はいくらなんでも季節感を無視しすぎだと思います。
 ということでHシーンもエロさはもうひとつ。むしろ、脱がさない方がエロいのでは? というカットが散見されます。

 音楽はどちらかと言うと地味に盛り上げるような曲が多く用意されています。あんまりギャグパートの曲、みたいなあからさまな作曲はされていません。意外なことに(?)冬らしさを意識した曲はあまりないようです。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は普段は問題ないものの、残念なことにHシーンになると拙くなる方がいました。
 
 まとめ。売りの乏しい作品。宮前エリシナリオがあるからまだ救われていますが、これがないとかなり苦しいことになっていたと思います。色々と煮え切らない感がありますね。
 お気に入り:宮前エリ、長津田夕美
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、高幡ちひろ
 結局、信頼度の高さは意味不明なほどでした。実質、ゲームが始まる前に勝負がついているほど。なんで贔屓されているのか夕美でなくてもわからんですよ。良いキャラのはずなのに不完全燃焼。もったいないですな。
 エンディングカットはなんだかすんげぇポーズです。最初は何をやっているのかと思いました。

2、長津田夕美
 最大のライバルのはずがあっさりと理解者に。つーか、マッハでデレてますよ。口ほどにもないとか言うべきでしょうか。本人のシナリオでは謎の劣化現象を起こして悲しい感じに。

3、梶矢彩乃
 こちらもせっかくの良キャラながらもったいない度全開。個別に入ると魅力を増すどころかキャラが迷走を始めてしまう。いくらでも見せ方はあったろうにねぇ。

4、宮前エリ
 突然変異なみの本作の良心。彼女を最後にしていればちょっと信じられないくらいでしょう。全シナリオこのレベルなら余裕で良作だったのにねぇ。
 いじられキャラとして高いポテンシャルを秘めています。準備会のマスコット的役割をしっかりと果たしていました。普通に可愛かったです。