かみぱに!(Clochette)
念願の独り暮らしはどこへやら。香原智之(変更不可)は諦観のため息をもらした。両親を一年がかりで説き伏せたというのに許されたのは昔、長期休みに訪れていた元祖母の家。隣を筆頭に幼少のみぎりを熟知している人間に事欠かない環境である。それだけならまだ良かったというのに神様は意地悪だった。平穏はわずか数ヶ月、凶暴なことでは右に出るもののない妹の瑞希まで引っ越してきたのだ。曰く、お目付役として。虐げられる日々がカムバック。
だが、これだけでは終わらず自称神様な女の子の面倒を見るはめに。果たして智之の平和な日々は帰ってくるのでしょうか。
Clochetteのデビュー作はどこかで聞いたような気もする神様と同居するアドベンチャー。
購入動機は新規ブランドへの応援と原画買いを兼ねて。
初回特典はくるくるファンブック。予約キャンペーン特典は原画設定資料集。
重大な内容ではありませんが修正ファイルが出ています。クリアするにはなくとも問題なさそうですがフルスクリーン派の方は落としておきましょう。
ジャンルは特に変わったところのないアドベンチャー。ただし、ヒロイン5人のうち2人にクリア順の制御がかかっています。個別ルートに入る時にヒロイン選択画面が出現するのでわかりやすいです。右2人が要条件なヒロイン。
これに関連して、一定の周回以上はヒロイン選択画面までほぼスキップすることが可能になります。便利は便利ですがこのような構成で浅い周回において各ヒロインへのフラグ立てを要するような仕様には疑問を感じました。一通り(全ヒロイン)終わる前にシーンごとスキップ可能になるのなら中途にヒロインを選ぶ選択肢は必要ないように思います。ヒロイン選択画面さえあれば十分ではないでしょうか。
足回りは標準クラスからやや落ちるくらい。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にも使用可能ですが、あまり戻ることはできません。
修正ファイルを適用しないとコンフィグ設定の中のスクリーン設定だけ記憶してくれず、起動の度に変更しなくてはならず不便です。
シナリオは全体的に力量不足。共通シナリオが短めで早期に個別シナリオに移行するのは良いのですが、そのわりに同じ、あるいは似た内容の会話の繰り返しが各シナリオ間で目立ちます。
プロット上においても目を引くイベント及び絶対に必要なイベントが少なく、終わった後に印象に残りにくいです。具体性に欠け、言いたいことが読み手に伝わりにくいこともしばしば。
日常会話の掛け合いもテンポが良いとは言えず、その内容も個性に乏しく描写が薄い傾向があります。何気なさすぎると言いますか、ほとんど何も起きません。
クリア順の制御も高い効果を上げているとは言い難いです。オープニングの時点でネタとオチがほとんど予測できてしまうので、けして長くはないはずのシナリオ量が体感的に随分と長く感じられてしまいます。シナリオ間の重要なイベントも会話同様に被っているケースが多いことも無関係ではないかと。
惹かれあう過程は基本的にありません。ほとんどのヒロインは最初から主人公のことが好きな上、主人公の方は気がつけば好きというパターンなので。気がつくきっかけのようなものはなんとなく書かれています。
テキストによるヒロインの描写が弱いです。初期設定以上の加点がほとんど見られず、原画(CG)に大きく依存している格好になっています。
Hシーンは各ヒロイン3~4回。扱いがそれぞれ微妙なので同じ視点でカウントして良いかは難しいところ。エロ度は予想以上に高く一番、気合いが入っているように感じます。尺はそれほど長くありません。
CGは唯一無二の本作の売りと言っても過言ではありません。しんたろー氏の原画を中心に、というブランドの方向性をこれ以上ないほど表現しています。可愛さとエロさの同居するイベントCGの数々はまさに原画買いに応える出来です。ただし、差分を除いて80枚というのはやや寂しい数字でしょうか。それとアイキャッチのCGを自由に鑑賞できないのは残念。
立ちCGはイベントCGにも負けない賑やかな仕上がり。ポーズ、表情とも充実したカットが揃っています。エロさにおいてもかなりのもので立ちCG鑑賞の存在が実に嬉しいです。
Hシーンは半脱ぎ重視。そうでないものが果たしてあったかしら、というほど徹底しています。純愛系にしては相当にエロいです。ここだけはテキストとの相乗効果が見られます。
音楽はあまり田舎らしさはないものの、状況に応じた曲がしっかりと用意されています。ただし、使い方には難があって、シリアスなシーンの曲からヒロインが登場した途端、そのヒロインの和やかなテーマ曲に切り換えるのはちょっとどうかと思いました。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。
まとめ。デビュー作らしい一点突破な作品。単なる萌えゲーならまだ良かったのでしょうが、読ませる体裁になっていながら内実が伴っていないのが痛いです。せっかくの魅力的な原画をより高めるようなテキストがないのはもったいないところ。今後に期待。
お気に入り:片瀬恵
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、天泉森雨古依命
オーラスキャラとしてはどうにも弱い。恵のあとで真打ち登場とせねばならないのにこの程度ではねぇ。属性との絡みも悪いと思われます。典型的なウザキャラと呼ばれてしまうようなところがどうにも。
神様であるというのがどうにも重みですね。わざわざ神様なわりには意義を感じられるシナリオに仕上がっていません。企画から理想通りに書けていたとしてもこれでは駄目でしょう。なんで好きになったの? とか言われてしまう余地があるようでは。主人公が魅力薄であることもさらに説得力を失わせてます。
2、香原瑞希
ある意味では古依と同じ。実妹である意味は果てしなく感じられない。その手の不快感を全く感じさせないのはデザインが良いのではなく、「らしさ」が足りないのでしょう。血の繋がった妹らしさを求めていないのであれば義妹でいーじゃんということになってしまいます。少なくともこだわる人にとってはそうでしょう。
シナリオも逃げの一手。後から思いつきで実妹にしたんです、と言われれば素直に信じてしまいそうです。それくらい実妹であることを意識させる機会はありません。世間というかクラスメイトも教室で腕を組む兄妹にノーリアクションだしなぁ。
3、霧島乃々香
古依の巫女というところだけ重要であとはどうでもいいという印象をシナリオからは受けます。でないとあれほどのやる気のなさと分量は理解できない。
胸は強調しすぎでちょっと品がないレベルに到達している気がしないでもないです。原画が可愛いことの数少ない欠点のような気も。身長にも似たようなことは言えるかも。しんたろー氏の絵柄はそういうところが不似合いというように見えてしまう可能性を孕んでいると思います。
ところでどう見ても袴がスカートです。
4、九条天音
この生徒会長が多数の支持を得ているというのがどうにも腑に落ちない。恋仲になった時に一方的に不釣り合いと呼ばれるほどだろうか、と。確かに主人公には魅力がないけれども。男友達のよう、というのももう一歩、感じにくい。せいぜいが恥じらいが足りないというくらいだしなぁ。
キャラ付けのわりにはエロが強いというのは狙った結果なのかそれとも特に配慮していないのか。どちらもありそう。
場の空気を読まないことにかけては定評のある天音さん。相手が言いよどんだ時にも詰問調で責めまくり。天音さんに限らないけれど、状況をわきまえない小学生のような駄々っ子発言が多いです、この作品。
5、片瀬恵
デザイン、ポジションともに非常に固い配役。惜しむらくは準メインにされてしまったことでしょうか。CG鑑賞の一番上なのになぁ。真打ちであるべきだったと思います。神様が人間を差し置くのがラストではね。
設定は良いながらもテキストによる寄与がほとんどないというのはあまりに痛い。もっともっと魅力的なキャラに仕上がったと思うだけにもったいなさもひとしお。
恋仲になって以降の薄さも残念。明らかにテキストによる支援効果不足ですが、関係の変化が全ヒロイン中で最も少ないということも微妙になっている原因。永遠の処女ではないのですからもうちょっとくらいは変化を。
エロ方面も良い出来。が、他ヒロインに比べるとイベントCG枚数も少ないし、使い方もイマイチ。もっともっとエロくできたと思えるだけに。
立ちCGは全キャラ中でも屈指の出来映え。制服、私服、水着と全てがヤバいです。特に正面と特殊2Aには見ている側を固めてしまう威力があります。