下級生2(エルフ)
あらすじとして記すような事前物語はないので省略。学園最後の一年を送る物語。
およそ8年ぶりに発売された続編。「同級生3」同様に発売されることはないと個人的に思ってました。なにせエルフはウインドウズ以降、攻めの気持ち(スタッフ)を失ってしまったメーカーなので。
エルフらしく初回特典の類はなし。これはいいような悪いような微妙なライン。特典がない代わりに色々な広告が入っている訳で。サービス精神とは無縁。
購入動機は前作が楽しめたから、という本作に対してはあまり主体的な理由ではなく。まぁ、事前情報をあまり出してくれないとそれほど期待の持ちようもないということで。
ジャンルはなんと申していいやら「○級生」シリーズだけの唯一無二の街探索プラスのアドベンチャー。システムの基本的な骨子に変更はありません。ただサターン版及びWin95版「下級生」を経てインターフェイス面は大きく向上しています。学校内や街の簡易マップを呼び出して自動的に移動できたりします。できたりするんですが、実はこの機能はジャンルを脅かしかねない要因を含んでいます。
そもそもなぜこんな機能が追加されたのでしょうか。それは街を歩くのが面倒、とは言い過ぎにしても手間がかかるからです。プレイ終盤になると特に顕著に感じるようになります。ではなぜ、わざわざ手間がかかる箱庭を歩き回るシステムなのでしょうか。もちろんそれは歩き回ることに楽しさと意味があるから。そこに簡易マップによる自動的な移動を持ち込んでは自ら用意した長所を潰すようなもの。あまり自動で動く様ばかりを見ていると当然、それなら最初から場所移動システムにすればいいじゃないか、という思いが沸き上がってきます。
実際、前作では街を歩き回ることが楽しくなるようなアイデアがたくさん詰められていました。クイズ兄弟の家などヒロインを追う以外にも楽しみがある。だから街中をくまなく探索する気になりました。そこに自動移動が介在する余地はありません。あくまでプレイ後の答えを知っている結果論から要求される機能なのです(そして、ヒロインの居場所表示まで求められるようになる)。
確かに便利になりました。その代わりに街を探索する意義は限りなく薄れました。簡易マップによる移動の使用を推奨する流れで制作しているので街に仕掛けを作らないのです。詰まるところ、本作に街を探索するシステムにする必要性はありません。強いて言えば「下級生」の続編だから、というくらい。
ゲームの期間は同じく一年間。プレイの仕方にもよりますが、1ヶ月がおよそ1時間強かかることを考えると長すぎる感は否めません。特にオンリープレイだと辛すぎます。単調さを緩和するために二股以上に走るという不思議なゲーム(まぁ、二股をかけないと見られないイベントもあるのですが)。システムに依存するゲームが抱えやすい欠点です。
活動時間は土曜日と日曜日に祝祭日。土曜は午後12時から、日曜日と祝祭日は午前8時から午後11時まで。基本は土曜日にデートの約束を取り付けて翌日に実行というパターン。日曜日に会って翌土曜日に、ということはできません。
前作に比べると予想外の、言わばサプライズ的な(仕込みを必要としない)イベントは明らかに減ったような気がします。こんなところでもマップ移動の意味は薄れたような。マメに街を歩いても何も起きないんですよ。もっとぶらり歩きにワクワク感が欲しいところです。
時刻に関するところでは約束の時間に対する柔軟性が随分と上がりました。以前は5分前に来て反応がなく、入り直して10分遅刻になって好感度ダウンなんてことがありましたが、今回はその場で待つことが可能。ただし、一部の特殊な待ち合わせに対しては適用されないので要注意。
無事にデートが始まると一緒に過ごす時間を決めます。1時間から施設の終了時間まで選択できますが、この時間の意味は今回も不明。好感度には関係ないようですし、かかる時間帯がイベントに絡むかどうかくらいでしょうか。恐らくは気分を出す、という効果が一番の理由ではないかと思われます。あまり現実的ではないですが、このあたりがデフォルメであるゲームと現実の妥協点というところでしょうか。次項にも同じことがいえますが。
デート後は彼女を送っていくかの選択、午後6時以降であれば彼女の家の前でどこまで手を出すかの選択。好感度の上がり具合を探ることができます。このあたりも忠実に前作を踏襲。
基本的にはこのデートに誘う→実行の繰り返しで進行していきます。
足回りは標準クラス。メッセージスキップは既読未読を判別して高速、カーソルを画面上部にやってウインドウを出すことでいつでも停止可能です。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、リピート再生も可能です。ただ、意外とメッセーウインドウを出しにくいゲームなので、ウインドウが出ていない状態でもホイールによってバックログに入れるとより便利だったように思います。それと戻れる分量はそのボリュームに比べてかなり少なめ。大きなイベントがギリギリひとつ入るくらい。
CG鑑賞やシーン鑑賞が妙にもたついている印象を受けました。ゲーム中の画面処理を見てもあれほどまでに間延びした処理になるとは思えないのですが、一体どういった意図のなのでしょう。
シナリオ面。このシリーズはエンディングを迎えるための必須イベントが非常に少なく、また強制イベントがありません。残念なことにシステムもこれを助長するかのようなスタイル、さらにこれをフォローする要素もないので必然的に物語はぶつ切りになり易くなってます。これでは丁寧な話作りは難しく、心情描写の変遷などもなかなか表現できません。実際、本作ではプレイヤーがヒロインの感情の変化を補完しなくてはならないシナリオが散見されます。このあたりは8年の成果を最も見せて欲しいところだったのですが、むしろ退化しているくらいで悲しいところ。
主人公像はなんとか前作のそれをカバーしようと頑張っているのは窺えますし、一面的には成功もしているのですが、次に何をしでかすかわからないような魅力は感じられませんでした。どれも以前に見たものばかりで新たな驚きというものが感じられないというか。
登場人物配置には疑問を感じます。主人公の幼なじみ二人など何のためにそこにいるのかわからない。物語に必須でないどころか日常でもほとんど絡むことがない。延いては世界観の魅力の欠如にも繋がっているように思いました。
ヒロインと段階を得て徐々に仲良くなっていく様は確かに楽しめます。ヒロインの態度の変化に一喜一憂したりとこのシリーズの大きな魅力になっているかと。しかし、前作では最大10段階もあったヒロインの感情の幅が大きく狭められているのは素直に残念。特に必須イベントの配置によって好感度に段階的にリミットがかけられているのは繰り返しプレイの興を削ぐ大きな要因になってしまっています。プレイの多様さこそ前作の良いところだったように思うのですが。
システムからもわかるようにこのシリーズは中途半端なリアルさを持っているのですが、それがよく分からないところにも発揮されていて総ヒロインの内、およそ半数が非処女という不可解さ。しかも、ほとんどは意味がなく、意味があるヒロインも設定としてうまく機能していないという決定的な切なさが横行しています。もう少しどうになかならなかったんでしょうか。
エロ度は今回も頑張ってます。最初は初々しいヒロインが徐々に大胆になっていく様子はヒロインごとに前作以上に幅があり楽しめます。ただコスプレが一部のキャラにしかないのは単調さを防ぐ処置にしても残念。プレイヤーごとにお気に入りのヒロインは違ってきますから。
CGは8年間の成果が最も現れているポイント。門井亜矢氏の技量だけでなくCGスタッフの技量も大きく上がっていて納得のカット群に仕上がっています。ただヒロインの見た目上のデザインは個人としても集団としても前作の方が良かったような気がします。無理に個性を出そうとして好き嫌いの出易いヒロインが増えてしまったように思えます。
立ちCGはイベントCGに全く引けをとらないレベルに揃っていて驚きさえ感じました。こういったところは他のメーカーも頑張って見習って欲しいところ。
背景からはシリーズ共通の「匂い」のようなものが感じられて好印象。立ちCGとも我を張り合うことなくうまく融合しています。
エロ度はテキストに一歩も負けてはいません。可愛らしさとエロさの同居するその姿は充分に作品の売りになっているかと。
音楽は懐かしさを感じる旋律が多かったように感じました。プレイ中は「YU-NO」などDOS時代のエルフ作品をよく思い出してました。ヒロインや場所など聞くだけでわかるような曲作りは見事。抽出したイメージがしっかり曲にできている証拠ではないでしょうか。
ボイスは主人公にはなく、残りは全てパートボイス。世間話などの質問項目には全てボイスがありません。中には良いセリフもあるので少し残念。演技の方はキャラにより多少の差があり。日常会話は問題ないのにHシーンになると妙に下手なメインヒロインとかいたりします。
まとめ。良くも悪くも前作の影に支えられている作品。2というよりは1.5というくらいが相応しい感じ。長所はほとんど前作譲りのみ、克服できていない短所と失った長所が大きく足を引っ張っています。
お気に入り:白井夕璃、沢村香月
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、柴門たまき
発売するやいなや、あっという間にエロゲ界の嫌われ者になってしまった珍しいヒロイン。まぁ、理由は色々ありますけど「どうあがいても彼氏と付き合う」、「両天秤にかけているように見えてしまう」、「無視しても他のヒロインとのデートで遭遇する」、「ふられてから主人公のところに来るまでの心情描写が皆無」、「ひたすらに前彼と比較する」とこのあたりでしょうかねぇ。これ、全部平気な人は結構凄いかと思います。私は3つ目と5つ目がきつかったです。夕璃たんと遊園地に行ったら例のイベントに遭遇しましたですよ。また、主人公が気にするのが嫌。
経験済みということでエロスが旺盛だったのはせめてもの救い。制服プレイはなかなか良かったですよ。正直に言えば他のキャラに装備して欲しかったですが。
2、高遠七瀬
世間では大評判な彼女も個人的にはもう一歩。デート後に触った後の「エッチ」なんてセリフとかなかなか良いのですが、あの反転衝動に襲われたような態度の変化がねぇ。しかも、七瀬が主人公を好きだと気付くシーンがないし。凛々しい七瀬が好きだった身としては悲しい変化。変わるのではなく、そのままで心を開いて欲しかったというところ。狙っていない時の正月に出会う七瀬のなんと素敵なことか。攻略しない方が嬉しいヒロインってのもなー。
3、横溝ふみ
メガネ、教師、年上、派手な服装と苦手な要素がてんこもり。よってめでたくファーム行き。永遠に昇格しません。
4、若井みさき
プレイ中はなんだかひっきりなしに印象が変わっていったヒロイン。どっちかというとそれは良い方の意味ではなかったり。どこかお水っぽい匂いがするところがどうにも苦手でした。イベント配置もイマイチねー。
5、沢村香月
ロリーな教育実習生が実は非処女というのはやはり意外性を狙ったんでしょうか。このゲームはどうもそういう思いつき先行の余計なスパイスが利かせてあって困ります。設定として無意味ですからね、香月の場合は。
しかし、恥ずかしがり屋でありながら体はエロエロという設定は巧かったように思います。主人公がたまに背徳感を抱くあたりもナイスでした。羞恥心を忘れることのない彼女は魅力的でしたよ。
香月の葛藤というものを考えると以前に付き合っていた相手は年上だったりしたんでしょうか。どうも、カップルとしての見た目の形とか年下とか気にしていたようだし。
6、堀出実果
全くもって見たまんまなのが困りもの。およそ情緒というものと無縁な彼女はとにかく疲れる相手でした。
7、平沢博子
七瀬を越える裏返りっぷりが素直にキモイです。ロボ関連のイベントもほとんど意味がないしなぁ。ハッキリ言って時間稼ぎだし。コスプレも正直、宝の持ち腐れかと。
8、井伏オキエ
ちょっと背が低いにも程があるのではないかと(キスシーンカット)。まぁ、あまりにも見え見えの展開はプレイヤーもちとつまらないな、と。リバウンドするのもすぐに予想がついたし。
彼女の場合は頼むからエンディングVer.でHシーンをお願いしますです、というの感じ。まるきり別人じゃないですか。
9、白井夕璃
他のヒロインたちより頭ひとつもふたつも抜きんでているのが彼女。気持ちの変遷が最も詳細に伝わってきますからね。好感度リミットがかかっていることも感じにくいですし。
声優さんの演技も白井夕璃というキャラクターに欠かせない素晴らしいものでありました。しかし、それだけにフルボイスでないのが悔やまれます。特に最も気に入ったセリフが彼氏の有無を聞かれた時の「気になっている人はいます。とっても気になっている人が」であったので。ぜひともボイスで聞きたかったデスヨ。
夕璃はHシーンよりもそれ以外のイベントCGの方がエロかったです。海での撮影での2枚とか、保健室(体操服Hを期待しました)や水族館のカットとか。