ホシツグヨ(Grooming)

 天文部に所属している高村由利(名前のみ変更可)は漠然と宇宙に行きたいと考えていた。ある日の夜中、恒例の天体観測に出かけた彼は和服姿の少女に出会う。少女はクラスメイトの九龍明日羽に見えたが雰囲気や性格は別人だった。少女は謎めいた言葉を残して去っていく。この日を境に由利の平凡な生活に違和感が混ざり込んでくるのであった。

 Grooming3年ぶりの新作は旧作「天巫女姫」を彷彿とさせるような田舎の夏を舞台にしたアドベンチャー。復活を祝うようなつもりで購入。もちろん、更なる進化を望んではいましたが。
 初回特典は特になし。

 ジャンルはビジュアルノベル、なんでしょうか。ちょっと微妙な感じです。地の文は一般的なビジュアルノベルのように背景や立ちCGに重なるように表示され、セリフは画面下部のメッセージウインドウに表示されます。この中途半端な分割っぷりはどういう意図からなのでしょうか。システム的には特別、変わったところはありません。
 足回りは配慮の感じられる設計でかなり細かく設定できます。メッセージスキップは既読未読を判別してやや遅めですが、「次の選択肢へ」、「ひとつ前の選択肢へ」、といった機能があるのでそれほど不便には感じません。
 バックログは別画面で行います。設定次第ですが、イベントCGを含めてゲーム展開をそのまま巻き戻すことが可能です。さすがにその量はそれほど多くはないですが。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にも使用可能なのでかなり便利に感じます。

 シナリオは日本神話をベースにした伝奇未満の物語。全体的に大雑把でテキトー感が随所に漂っています。有り体に言えばあまりやる気を感じません。
 恋愛描写も非常におざなり。惹かれあう過程とか存在しないという思い切りの良さ。相手が告白してきたから自分も好き、が本作の恋愛の流儀のようです。青天の霹靂で恋人関係に。
 そこに至る以前は相当にやる気のない天文部ライフが展開されます。現実にはともかく、架空のやる気ゼロの部活動は正直よほどの魅力がないと読んでいて苦痛なだけです。掛け合いもそれほど面白いとは言えず。
 終盤は超展開と言って差し支えなく。狭い町村で世界レベルの話を持ち出されるので困惑します。しかも、重要人物もそうでない人物も全てその町村出身であるあたり……。
 Hシーンは各ヒロイン2~3回程度。恋仲になると同時、あるいはその前に初回が発生。その後もプレイヤーの予想しにくいところで突入します。

 CGは悲しいことにあまり力が入っているように見えません。特に1枚の中に3人以上が描かれているカットは原画家のファンからすると泣きそうな仕上がりです。どうしてこんなことになってしまったのでしょう、そんな出来。反面、背景は見応えある仕上がりです。田舎の風景がしっかり描けているかと。

 音楽は舞台に応じたしっとりした曲が用意されています。ただ、複数のバージョンを含めて16曲というのは少ないです。実際、プレイ中も同じ曲を聞いている印象が強かったかと。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。ただし、主人公の名前を変更してしまうとボイスのフォローはなくなります。演技の方はなかなか。キャラの薄さを声という個性で補っています。

 まとめ。どこかで歯車が狂ったとしか思えない作品。3年前の「天巫女姫」の方が遥かに良い出来とは思いも寄らず。本当にどうしてこんなことに。フォローしようにも難しいです。薦めどころも見当たりません。
 お気に入り:ちょっと難しいですがあえて言えば日乃宮和奏
 評点:50

 このような有り様なのでキャラ別感想はありません。