炎の孕ませ転校生(SQUEEZ)

 田神辰也(変更不可)は大それた野望を持っていた。それは世界征服。現段階で何の力も持たない彼であったが野望に懸ける思いは本物であった。そして、野望実現のために出した結論は己のDNAを持つ者を一人でも多く作ること。つまり、孕ませ! ということで女子の多い学園に転校する辰也。なんとクラスに男子は彼一人。果たして世界征服の第一歩である学級征服はうまくいくのか。

 SQUEEZのゲームを買うのは初めてなのでここの芸風がどんなであるかは知らずに購入しました。ホームページやスタッフからメイビーソフトの流れを組んでいるのかな、というくらい。実際の購入動機は原画のミヤスリサ氏に後は全体的に馬鹿っぽそうな雰囲気が気に入って。おまけとしてはタイトルネタ元の作品のファンである、ということも。
 初回特典の類は恐らくなし。

 ジャンルはパッケージによると「クラス全員孕ませアドベンチャーゲーム」。開き直りぶりがいっそ清々しいくらいのネーミングですが、まさに名は体を表すに相応しく、アウトラインとしては勘違いのしようがありません。
 しかし、属性という言葉を持ち出すと話は違ってきます。妊婦さんプレイというのは一切ないので注意が必要です。あくまで孕ませるまでの過程を重視、であると。その証拠とばかりに用意されているのが「孕ませブーストメーターシステム」。これはHシーンの選択肢で中だしするか否かによってゲージが増減するというもの。早い話がこれが、誰もがすぐに忘れるあらすじの野望が達成できるかどうかに絡んでくるものであると。予想外なことにマルチエンディングだったりする訳です。数は少ないですが。なお、そのエンディングのひとつは堂々とパッケージに大写しされています。
 「アドベンチャー」の中身はごく一般的な移動場所を選択しながらシナリオを進めていくタイプ。ただ、その対象が21人だけに移動画面はなかなか壮観だったりします。
 他に攻略の目安としてか「手帳」システムが用意されています。これはクラスの交友関係(グループ)を示したもので一度でも会えば(場所移動で選択する、という意味)どんどん登録されていきます。現在の攻略度がわかるほか、立ちCGなども見られます。贅沢を言うならこれをタイトル画面からも閲覧できて立ちCGの表情変化も自在に見られると良かったのですが。
 足回りの設計は親切ながらチェック不足という印象。メッセージスキップは既読未読を判別して高速、既読文は文字色も変わります。ただ、コンフィグによる設定項目「選択肢後のスキップ継続」が場所移動選択の後には反映されないので、場所移動選択が大半の本作ではほとんど無意味です。
 バックログは別画面で行います。容量もなかなか多く、ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。またロード直後に使用できるのもなかなか便利。
 タイトル画面からクイックロードできないのは地味になかなか不便でした。初回がまさにそれで、再プレイしたらなぜかクイックセーブのデータが消えていて散々な目に。私の環境では何度か同じことがありました。

 シナリオは実にあっさり風味。タイトルと作品概要を聞いて予想するであろう範囲内に収まっています。それでも難易度の低い手軽なタイプのゲームにしては会話が意外と充実しています。もちろん限られた容量においてですが、その限りにあっては頑張りが見られ、会話は複数人によるものがほとんど。もちろん頻繁に会話する相手は手帳にある仲の良いグループ同士が基本。ステロタイプながらヒロインの個性をしっかりと打ち出しています。主人公は構想こそ壮大ですが、学園においてはごく普通なので先入観が強いとギャップを感じるかも。
 荒唐無稽な設定の作品らしく展開は概ねご都合主義が横行しています。まぁ、本作で萌えだとか、燦然と輝くキャラの魅力だとか、唸るシナリオだとかを期待している人はいないと思いますので問題はないかと。どうせ程々のボリュームのゲームですから。
 ゲームの期間は40日間。実際にはそれよりも前にフラグを満たしてエンディングを迎えることになる可能性が高いです。途中にはレクリエーションや文化祭といった固定のイベントも用意されています。
 ヒロインの攻略は単独で可能なケースもあれば、他のヒロインが条件に絡んでいるケースもあったりして様々。移動画面に置けるヒロインのマーカーの背景色が白ならほぼイベントが進まない、といったようなヒントも用意されています。
 攻略順序には自由度があるんですが、一部のヒロインが完全に固定化しているのが個人的には不満。21人に手を出すゲームでさしたる理由なく特別扱いのヒロインを作られてもプレイヤーはその温度差に困惑するだけだと思うのですが。結果として特別扱いのヒロインこそが複数人によるHシーンがないという本末転倒な結果を生み出していますし。
 Hシーンは各ヒロイン1or2回。残りは複数人プレイが数回。後者の組み合わせにはある程度、手帳システムに記されたグループが反映されているようです。売りの22Pは独断と偏見で存在していないと評価します。テキストの方は他の全ての要素同様にあっさり目。濃さやエロさには期待しない方が良いでしょう。

 CGは馬鹿ゲーらしく(?)不思議なところにこだわりが感じられます。その筆頭が中出しの断面図アニメーション。Hシーンの終盤で画面端に現れるそれはパターンも複数用意されていて、構図(体位)によってきちんと向きも変えたりとスタッフの無駄にアツい情熱を感じます。ま、そこまでしていながらテキスト(ボイス)との同期がとられていないのは片手落ちなんですが。
 全32シーン中8シーンにフルアニメーションが用意されています。とはいってもセルアニメではなく、(技術的にホントのところはよくわかりませんが)イベントCGの各パーツを個別に動かして全体的にアニメにしているような感じのもの。
 人によっては「フル」の部分に疑問を感じるかもしれません。イベントCGが全画面であるのに対し、アニメはメッセージウインドウから上の部分のみ。圧縮のせいもあるかもしれませんが画質もやや荒く感じます。始まると同時に画面が歪んだように見えるので違和感はなかなかのもの。
 しかし、動きそのものは想像以上の効果があって、欠点を差し引いてもエロ度の底上げに繋がっていると感じました。これでもう5割り増しくらい用意されていれば良かったんですけど。現状では忘れかけた頃に出る、くらいの頻度です。
 イベントCGは潔くそのほとんどがエロCGに特化されています。そうでないものはエンディングも含めて数枚しかありません。とはいえ、いかにエロ歓迎であっても一部のCGが使い回しであったのは原画家のファンとして残念です。ヒロイン5人のお泊まり姿と学食の姿や文化祭の様子2種がそれぞれ着せ替え差分を用意しただけというのは……。
 エロの方は問題なく原画買いに応える仕上がりです。21人いても似た構図とかはほとんどなく苦心の後が感じられました。
 立ちCGはイベントCGと描いた時期にズレがあるのか若干、顔というか雰囲気が違うキャラがいるのは残念なところ。感情表現は表情だけではなく、ハートマーク、音符に汗(水滴)などコミカルな記号が付加されていてかなり賑やかな感じを受けました。

 音楽は内容に合わせたと言わんばかりのわずか8曲。なかなか勇気のある決断のような気がします。個人的にはタイトル画面(恐らくメインテーマ)とHシーンの曲ばかり耳に残っています。出来は通常の萌えゲーとかに使われていてもおかしくないレベルのものが用意されています。ただ、内容が内容ですからしんみりするような曲はありませんけど。
 ボイスはヒロインのみフルボイス。と言っても主人公以外に出番のある男キャラやモブキャラはほとんどいないので事実上のフルボイスと言っていいかと。演技の方は有名どころがこなしているので問題ありませんが、何せ21人もヒロインがいますから声優も1人3役4役をこなしているケースばかり。ヒロイン毎の演技の差別化という意味ではもう一歩というところです。まぁ、キャラ設定も浅いですから止むを得ないのかも。

 まとめ。ボリュームあるお手軽ゲー。通常作品に比べても大きくは見劣りしないコストパフォーマンスではないでしょうか。15時間ほどはかかりますが、1日1人という感じのプレイもできるんで忙しい人にもオススメです。手軽さとエロを重視する方に。間違っても萌えや深みのあるストーリーを求める人が買ってはいけません。
 余談ですがプレイ中は予想に反してヒロインの名前をほとんど覚えてました。2、3人怪しいですが残りは書けといわれても書けそう。まぁ、下の名前だけですけど。
 お気に入り:藤原佐枝、三咲若菜、真崎ほのみ、日下部瑠璃
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレなんてあるかしら。21人分は大変。







1、水無瀬さやか
 天然幼なじみが北都南さん、とくればかなり鉄板のような気がするんですが、主人公の特別扱いが響いてかあまり好きになれず。複数人プレイがスージーとのものしかないのも強く不満。つーか、お手軽ゲーでもったいつけてもあまり好かれないと思うんですけど。

2、夢野香苗
 もったいつけキャラその2。一応はツンデレキャラなのでしょうが、設定が浅いゲームではまるで無意味どころかマイナス。正直、ポジションのせいもあって邪魔でした。

3、三樹原里美
 風紀委員だがどこからどう見ても、内面までもイインチョーというあだ名が相応しいキャラ。個人的には主人公が無理矢理にでも委員長像というものを語って聞かせて欲しかった。そしていかに体が名を表しているかも。そんな期待以外はどーでも良かったです。

4、由月蛍
 本作では数少ない貧乳キャラ。同盟とか組みそうなくらい少ない。普通は比率が逆だよねぇ。巨乳、爆乳揃いのF組には貴重な存在。つーてもつるぺたとはほど遠いのですけど。水泳の時間とかコンプレックスが爆発しそうな感じです。このクラスはおちびーズも胸がデカイから。
 グループでは彼女だけがどうも浮いている印象がある。日常会話でも瑠璃や優子のグループと絡んでいることが多いような?

5、スージーハミルトン
 外人、それも後発組でありながらバストサイズではそれほど目立たないという意外性(?)の人。四天王にも入れないのだからキャラの薄い本作ではみすみすアピールポイントを失っている感じ。

6、宮前このか
 基本的にいない人。全ヒロイン中、出番の少なさにかけては右に出るものがいないという哀れさが自慢。アニメーションを持っているのがせめてもの救いか。立ちCGとイベントCGで最も顔が違うお方でもあります。

7、竜ヶ崎麗華
 本作のキングオブステロタイプといっても過言ではないお人。もみあげがロールパンというのはもはやギャグでしかない。お供を連れているあたりもお約束を裏切らない。Hシーンへの移行も全くもって予想通りでじいやの執事がいないことがむしろ不思議でした。

8、永井鈴夏
 実のところ、外見から綾美と性格が逆かとばかり思ってました。こっちがキツイキャラだとばかり。印象はやはりお嬢の手下その1というくらい。勝負なのにHシーンで何もできない様子はちょっと記憶に残りましたが。

9、新庄綾美
 手下その2。危険人物。主人公を妙な愛称で呼ぶ。それくらいかなぁ。やっぱり3人1組な分だけね。

10、片瀬亜紀
 攻略フラグというものについて最も意味があった両名の片割れ。強気娘さんのはずなんですがHシーンとか妙に可愛く見えたのは私だけでしょうか。あまり攻めキャラっぽくない気が。

11、真崎ほのみ
 レズっ気はなかったのに結局は似たような境遇にはまり込んでいくんだよなぁ、とか。まー、本人幸せそうだから全く問題ないと思いますが。
 気のせいかもしれませんけど主人公には気に入られているような。口には特に出しませんけど、複数人プレイでの扱いを見るとやけに優遇されているように思えます。2回ともちゃんと相手しているしね。

12、奈良橋かえで
 広義の意味では彼女もツンデレなのかなぁ。実は好かれていたという設定なのだと思うけど、結果以外でそれを感じさせるシーンがゼロというのはさすがに厳しい。優子あたりからすればお見通しだったようだけど、プレイヤーにはさっぱり。

13、姫宮映子
 どうもこのグループは絵里奈と優子を除いて存在感が薄いように思えてならない。普段の会話でもあまり姿を見せないしね。まぁ、漫研の存在感が薄いというのはリアルといえばリアルかもしれませんが。

14、川瀬絵里奈
 取りあえずロリタイプには妙な口癖を用意せよ、とのお言葉が聞こえてきそうなモデリングが素敵です。しかも、作る料理は致死量であると。完全お約束に見えて意外とそうでもないあたりが本作の味かなぁ。少なくとも見た目と性格で判断すれば、頭のネジは緩んでいるくせに作る料理は一級っていう困ったちゃんタイプだよね、普通は。

15、御神優子
 その格好からはとてもオカルト系少女とは思いませんでした。演劇部が何かかとばかり。最初は閉口した口癖や一人称も最後には慣れているから不思議でした。にしてもおちびーズは不自然に胸がデカイね。

16、霧崎真奈香
 呼んでいるのは一人にしても、髪の毛が緑でメガネの愛称がマナマナっていうのはどーなのよ、と。随分と捨て身のギャグですなぁ。笑うよりも感心してしまいましたよ。
 麗華との対決時の助っ人ぶりには不覚にも笑ってしまった。本作で普通に笑ったのってココだけかも。

17、酒井遥
 結局、正体がよく分からない。倒錯なのか、似てはいるがあくまで別人だからいいのか。H後の要求もなんだかよく。主人公もきっとわかってない。というかどうでもいいんだろうけど。
 逃走済みの立ちCGは良いアイデアかと。ありそうで今までなかったですね。

18、南亜里沙
 もしかしたら企画意図を誰よりも満たしているかもしれないヒロイン。まさにつまらねー、というに適ったギャグの数々でありました。水泳部ってのはとても忘れやすそう。

19、藤原佐枝
 初日の帰宅後、いきなり彼女が現れたのにはすごくビックリした。何もフラグを立てていないのに、と。そしてメイド研究会の活動の一環として用事を言いつけられに来た佐枝を邪険にして追い返してしまう主人公に二度ビックリ。実際にはランダムイベントだった訳ですが、私には目的を忘れたとしか思えませんでしたよ。絶好の機会だったし、どこの誰ともわからなかった先生には手を出したのにねぇ。
 Hシーンはこのゲームにしてはマニアックな感じ。というか全ヒロイン中でも軽んじられているのか主人公の態度は結構容赦ない。

20、日下部瑠璃
 IQが露骨に低そうだし一人称がアレだけど、なぜか憎めない。まぁ、どっちかというとクラスでも扱いに困るというタイプなのだろうけど。スージーよりもよほど言動が外国人的(偏見)。

21、三咲若菜
 痴漢イベントはなんとなくこのゲームっぽくなくて違和感があった。つーか、ほのみと同様にあの胸は凶悪すぎます。そりゃ、痴漢にも遭いますわ。歩く猥褻物。
 例えエセっぽくとも関西弁というだけに個人的にはOKです。どれほど流されやすくともね。