ハッピーライブ ショウアップ!(FAVORITE)
アキト・ユキハラ(変更不可)はかつて将来を嘱望されていた魔法使いである。今ではもう大した力もない。魔法を忌避していたアキトであったが、ある日のこと、迷子のためにと自分に言い聞かせて魔法を使ってしまう。幸い、迷子を母親と会わせることには成功したものの、同じ学園のソフィア・トゥーリナに目を付けられてしまうことに。弟子志望の彼女に困惑しながらも強く拒絶できない自分に気がつくアキト。
少年少女たちが自身と向き合い、願いと決意に出会う物語が始まる。
FAVORITEの新作は新世代スタッフが加わって(パッケージより)誕生した完全新作アドベンチャー。
購入動機は体験版がまぁまぁ面白かったから。
封入特典はイメージミニアルバム「マジカル∞ショウアップ!」。予約キャンペーン特典はカーチャ&ソフィーの複製色紙とA4イラストカード。
修正ファイルが出ています。あてなくともクリアは可能ですが、気になる方はダウンロードしておきましょう。
ジャンルはいつもの通りのアドベンチャー。
足回りは10周年の時からあまり進歩していません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢間が長いために相対的に遅く感じやすくなっています。シーンを飛ばす(次の選択肢へ、ではない)JUMP機能、前の選択肢に戻るUNDO機能が用意されています。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることはできません。この画面でセリフ単位のシーンジャンプが可能です。ロード直後にも使用できますがシーンジャンプだけは使えません。テキストを進めていけばその分は使えるようになります。ちょっと不思議な仕様です。
前回の続きから始めるCONTINUE機能があります。
シナリオは恐らくは新人の方が担当していて、得意なところとそうでないところで差ができてしまっています。全体的にいわゆる説得力に関する部分の描写が疎かになりやすい傾向があり、当然の疑問に対して一行が誰も何も口にしない、なんてケースが散見されました。
「第一幕」や「幕間」なんて表記が演出として出てきますが、それ以降の「第二幕」や「第三幕」なんて表記が出てこないので微妙に機能不全を起こしています。
モチーフとしたであろう国がエロゲーではそれほど馴染みがなく新鮮です。よく見る学園編から列車旅行編へと日常が大きく様変わりするのも本作の大きな特色となっています。しかし、悲しいかなキャラクターの方がこの珍しい舞台についてこれません。初日から、もう飽きたとか言い出す始末でせっかくのシチュエーションが台無しです。
惹かれあう過程はキャラによって尺も中身も濃淡があります。しっかり描写されているキャラもいれば、全く足りていないキャラもいます。それでいながら当該ヒロイン以外のキャラへのフォローが存外、多くてなかなか驚かされます。本人のシナリオでは見られないイベントCGなんてのもけして珍しくありません。
Hシーンは各ヒロイン2回が基本。ポジションによって1回多くなったり少なくなったりします。FAVORITEにしてはエロさは控え目です。代わりに(?)ややマニアック寄りな内容が目立ちます。
CGはやっぱり本作最大の売り。少し極端に言えばFAVORITEはいつもそうだと言っても間違いではありません。ズームアップ機能があるのは伊達ではないのです。
ただし、イベントCGと立ちCGの塗り方に違いがあり、率直に言ってそこは好みが分かれそうです。個人的には立ちCGの塗りの方が気に入っていたのでイベントCGは少しもったいなく感じてしまいました。端的に表現するなら前者は現実的、後者は幻想的、でしょうか。
背景も人物に負けてはいません。中でも列車関係は特に力が入っていて見応えがあります。
とても残念なことに立ちCGの鑑賞モードはなくなってしまいました。本作もとても力が入っているだけにもったいないです。
音楽は舞台に加えて題材とさらにヒロインが多国籍っぽいメンツなので勢い実に様々な特徴の曲が用意されています。また、多くの曲が10分を超える長さでサントラを作ったら大変なことになりそうです。実際にフルで聞いていない曲もけして少なくなさそう。アレンジもとても多いので。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。キャラに合致した声優が選ばれていると感じる配役です。中でもカーレンティア・ヴェリーベル役の澤田なつさんは上がったり下がったり忙しい感じのテンションの演技が実に聞き応えがあります。全員その傾向はありますが、恋仲になって以降の演技の広がりはまさに新たな魅力と感じられます。
まとめ。粗削りながらも新しいFAVORITEの形を感じられる作品。次はもっと良くなってくれそうと期待をしたくなります。
お気に入り:カーレンティア・ヴェリーベル
評点:75
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、ソフィア・トゥーリナ
なんか列車旅行編のオープニングではソフィーが芸術科の制服に着替えるのはすごそうな演出に見えますけど、実際にはあんな感じですものねぇ。後回しにすればするほど肩透かしの度合いが高まりそうな気がします。ちなみに1周目の私はこの演出のことはすっかり忘れていました。
ペチカパイセンはニートみたいなものなのに相談に乗ってくれて助かりました。一発で解決しそうなカーチャがずっと不在でしたからねぇ。彼女がいれば呑気に引きこもってなんていられなかったでしょう。
十代の決意なんてそんなもの、と言わんばかりのシナリオが辛かったですわ。大抵のシナリオではそれを言っちゃあおしまいよ、ってね。あとお父さんの影が薄すぎると思います。
2、カーレンティア・ヴェリーベル
こっちを見てくれるというのがこんなにも嬉しいとはね。カーレンティアシナリオではそれをしみじみ感じました。他のシナリオでは基本的にソフィーメインですからね。立ちCGもより賑やかに変わってくれますし。
他シナリオとは一線を画す展開もなかなか新鮮でした。1周目からだと効果半減かもですけど。
3、ルー・マオ
最後までやっぱり余計なことをしたのではないか、という懸念は拭いきれなかったですね。少なくとも、完全には。どう見たって他のシナリオの方が活き活きとしているし。
4、クラリス・クローニャ
何気にソフィアシナリオで使われるCGが一番好きですね。こうゆうのは恋仲になってもなかなか見るのは難しいでしょうからねぇ。
5、ペチカ・モニカ
どう見てもライターの愛を一身に受けています。真のラスボスと言っても間違いではないでしょう。実際に事前の予想以上に楽しめましたし、良いキャラであったと思います。カーレンティアシナリオとは違う意味で変化のある展開も味わえましたし。
6、ミヤビ
あまりにテキトー過ぎるシナリオ。サブ中のサブですな。正直、ソフィアシナリオの方が色々とまともな役回りだったと思います。制服も着ますしね。