ガンナイトガール(CandySoft)

 戦争は桧森絢斗(変更不可)の住む町を過疎へと追い込んでいった。ひとり、またひとりと住人はいなくなり、遂には通っていた学園も休校となった。だが、絢斗は思わぬ形で再び学舎に通うことになる。軍の実験部隊がやって来て学園施設を工科学校として使うと言いだしたのだ。それどころか、絢斗たちに軍人と共に通うよう誘っても来た。きな臭さを感じながらも要請を受け入れる。果たして待ち受けるものは。

 CandySoftの新作はあっと驚く路線変更を果たし、戦争を題材にした硬派なアドベンチャー。
 購入動機は目当てのタイトルが延期したので代わりを探していたら目についたため。
 初回特典はオリジナルサウンドトラック。予約キャンペーン特典は描き下ろしオリジナルクリアファイル。

 修正ファイルが出ています。そこそこサイズが大きいので念のためにあてておきましょう。

 ジャンルは特に変わったところもないアドベンチャー。
 足回りはお世辞にも使い勝手が良いとは言えません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、未読扱いの中に同一文章が含まれているのでわりと覚えのある文章を何度も読まされます。
 次の選択肢へ飛ぶジャンプ機能が用意されているのですが、なぜか既読状態であっても作中の1日単位でしか飛んでくれないのでかなり時間と手間がかかります。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻ることはできません。ロード直後にも使用不可。ジャンプ機能を使ってもログは追随してくれます。
 前回の続きから始めてくれる機能はなかなか便利です。

 シナリオはかなりクセがあります。主人公はかなりとっつきにくいキャラ設定で、過酷な状況にいる割りには特に学ぶことも成長することもなく、ひたすらわがままを貫き通そうとします。他人には本音の開示を迫りながら、自分は笑って受け流す姿勢が基本なのでなかなかに困ります。覚悟しても覚悟しても覚悟しても一本筋が通らないのも特徴です。とっさの事態に弱く、頻繁に前言を翻します。
 各ヒロインたちは当該シナリオとそれ以外のシナリオでの姿が結構、異なります。シナリオを進めた時だけ見られる姿があると言えば聞こえは良いですが、イメージはかなり食い違っています。良くも悪くも大きな開きがあります。
 学園描写は意外と普通です。一般人の主人公たちがいることからもわかるように教室での風景は通常の学園ものとあまり差はありません。しかし、実習となると話は別で主人公たちは基本、眺めているだけになり俄然それらしくなってきます。
 ということで日常の掛け合いはそれほどミリタリー色は強くありません。拍子抜けするくらい普通です。
 惹かれあう過程は一応ある、程度なので全体的に苦しいです。主人公のキャラのせいもあってなおさら納得感が弱くなっています。
 本作はパッケージ裏にある、
 <いずれ戦地に赴くあの人に俺は何をしてあげられるだろう-
 これがテーマではないかと思うのですがどうも設定、物語ともちぐはぐな印象を受けます。そもそも戦争自体が対岸の火事のように扱われていてどうもピンと来ない構成になっています。
 Hシーンは各ヒロイン5回ずつ。尺は平均程度であまりエロくありません。設定やシチュエーションに対するこだわりはほとんど感じられませんでした。

 CGは人物カットが全体的に安定感に欠けています。立ちCG、イベントCGともに同一人物に見えないようなカットが散見されました。どうも得意、不得意な構図でハッキリ差が出ているように感じました。
 反対に軍関係カットは高レベルで安定しています。人物との差別化、重みなどしっかりと表現されています。短いながらも要所で挿入されるムービーが高い効果を上げています。カッコ良いと評するに十分だと思います。

 音楽は扱う題材に相応しい重厚さを感じる曲が粒揃いというくらい用意されています。しっかり燃えさせてくれてしっとりさせてくれます。曲名がちょっとやる気ない感じなのは玉にきずですが。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技はどのキャラもしっかりと入り込んでいることが感じられて好印象です。特に七海恋歌役のみるさんは大活躍と言ってもいいくらいの熱のこもった演技でした。お笑い成分にまで強みを見せていたのは彼女だけです。

 まとめ。どういう想定をしているかで評価の変わる作品。戦争、ミリタリー要素に重きを置いていると予想以上にしんどそう。細かい点が気にならない人は問題なく良作になりそう。意欲作なのは間違いないので次回作が楽しみです。
 お気に入り:七海恋歌
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、宗方ましろ
 ポジションとしては標準的なヒロイン、シナリオですがデザイン的にはそうでもないという変わり種。魅力が聞き間違いというあり得なさ。遂には登場人物にまで言い切られる始末。秘密を抱えているせいで他ルートでは存在感薄め。ガンナイトでは主役機っぽいのに乗っているのにねぇ。

2、風祭志乃
 色々と肩透かしな人。散々、食ってかかってきたくせに人に言われるがままに軍に入っただけで動機がほぼ皆無というお茶目な娘さん。経験を経ても学べず強くもなれないあたりは主人公とよく似ています。メンタリティは小学生かと思う時もしばしば。というか、精神的な疾患を疑った方がいいですよ。軍はそういう理由でも志乃を選んだと。
 能力といいポーズといいガンナイトは誰もが万死に値するなガンダムを思い出すことでしょう。指揮官機に乗っているのが最も向いていない志乃なあたり皮肉すぎます。

3、七海恋歌
 自分のシナリオは病気が全開過ぎて困るほど。というか、濃すぎですよ。その動機から派生するパターンが最悪レベルの事故を起こしてます。危険から遠ざけるためにドン退きさせるという発想がすごすぎる。他人のシナリオの方がほどほどの存在感で感じ良いです。あとメガネは早めに止めましょう。似合っとらんです。
 砲撃戦仕様のガンナイトは矛盾の固まりのような機体。関節が持たないのに重火器を背負い、装甲を山のようにとりつける。素直にザメルみたいな機体の方がいいのでは。細身の人型にする意味が全くない。作中で素人にさえ指摘されるって一体……。それと恋歌の特性を考えた時なぜスナイパーライフルとかの装備がないのか。

4、古宮環
 どうしてヒロインなのかがわからない。1周目はチラリともヒロインとは思わずサブキャラと思って接してました。そして、なぜ区隊長、荒川千歳は攻略できないのか。本当に意味がわかりません。

5、高遠小夜子
 重い。あまりに重い。どこを切ってもどこを向いても全方位重すぎる。最後は都合の悪いことをシックスのせいにしてごまかしてましたけど、本質は何も変わっていませんよ? 他のヒロインシナリオでの夜刀プレイが悲しすぎる。そして、怖すぎる。これで夜刀は何もしていないとか言われても信じられるはずがありません。
 ポジションは真打ちですがガンナイトはないというちぐはぐさ。いっそましろ、志乃、恋歌シナリオでは彼女がラスボスとなって立ちはだかった方が良かったのでは。無論、専用のガンナイトを用意して。シナリオでも敵になるだろう、って言ってましたし。