フタマタ恋愛（ASa Project）

　事態とは自分でも思わぬうちに進展いるものだ。それまでの積み重ねと些細な偶然からフタマタすることになってしまった古賀凪青（変更不可）。しかし、そうなるからにはそうなるだけの下地が彼には備わっているのだ。望むと望まざるにかかわらず。果たして凪青が目指すのはクズヤローの極地なのか、それとも幻想的とも思える誰ひとり傷つかないハッピーエンドなのか。

　ASa Projectの新作はキャラクターたちが初の大学生となるフタマタ恋愛もの（？）。
　購入動機は体験版をプレイして意外と気に入ったので。裏を返せば無条件には変えなくなっているのですが……。
　初回特典はオープニングとエンディングのフルバージョンとボイスドラマの入ったスペシャルCD。

　修正ファイルが出ています。あまり重大なものではないので、あてなくともプレイには問題ありません。気になる方はダウンロードしましょう。

　ジャンルは二股恋愛ＡＤＶ。
　足回りはいつも通りあまり進歩していません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢まで飛ぶ機能や前の選択肢に戻る機能が用意されています。
　バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。ロード直後や次の選択肢へジャンプした時は使用不可。シーンジャンプもありますが、戻れる範囲が限定的なのであまり意味がないでしょう。
　前回の続きから始められる、いわゆるＣＯＮＴＩＮＵＥ機能は搭載されています。起動時にタイトル画面をスキップできるサスペンド起動も可能です。なんともものぐさな人向け機能ですな。

　シナリオは登場人物が基本、大学生ということで雰囲気に変化が出ました。大げさに言えば世界観が異なると言ってもいいくらい。ただ、不思議なくらいに大人や子供が出ないのでそこも雰囲気が異なる要因にもなっています。また、これが理由なのかはわかりませんが、キャラクターたちのほとんどが過去に大きなものを抱えていてあまり未来を見ていません。これは物語にも大きな影響を与えています。
　日常の掛け合いはやはり基本ギャグが主体で、ほどほどに笑わせてくれます。今回は状況的に笑えない局面もままありますが……。
　惹かれあう過程はまぁ、色々と設定からして無理があります。そうした人物たちばかり集められたと言っても過言ではないくらい。素直に期待するのは止めておきましょう。アトラクションのように様々な変化やリアクションを楽しむ作品だと思います。
　作品の構図は「恋愛、借りちゃいました」によく似ています。２つの大きな柱があってそこから派生していくあたりは特に。
　一部、例外はありますがサブキャラクターにもシナリオが用意されています。オマケ程度からバッドエンド同然といったささやかなものではありますが。
　Ｈシーンは各ヒロイン５～７回。いつものように頑張ってはいますが……、あんまりエロ度に期待してはいけません。基本１回のサブキャラ陣の方が突拍子もないシーンなこともあってエロいかもしれないくらい。

　ＣＧは今回も顔芸がないこともあってインパクトには欠けるものの、その分１枚１枚を丁寧に用意しているように感じます。例えばシーン的にはそれほど印象的でなくとも構図でしっかりと記憶に残そうとする、など。立ちＣＧはサブキャラ含めて衣装の多彩さが目につきます。鑑賞モードで確認しているとちょっとしたファッションショーかというくらい華やかです。イベントＣＧとの落差をほとんど感じさせなくなりました。
　もはやおなじみの個性的なＳＤカットは今回も健在です。元の絵に似ていればいいってものじゃない、とでも言わんばかりの独自のスタイルは十分に作品の売りのひとつになっています。

　音楽はいつものようにおとなしくあまり存在感を感じさせてくれません。ボーカル曲だけはそんなこともないのですが、ギャグが強い作品だけにもっと弾けた曲があってもいいような気がします。記憶にはなかなか残らないような。
　ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

　まとめ。長所と短所が表裏一体の作品。フタマタ恋愛に特化したあまり、その状況を描くことに注力し過ぎた感は否めません。そのために過去ばかり向いた話が延々と続くのも物語というよりレポートを読んでいるかのようでした。
　お気に入り：十色煌
　評点：７０

　以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







１、信田結愛
　ラスボスと称されるにはどうにも中途半端ですねぇ。少なくとも、その境遇に共感できないといけないですし。どうにも主人公のロールプレイをやらされている感が強かったですね。そうでも思わないと行動の意味がわかりませんでしたから。付き合いきれないというのが正直なところ。その目的を望んでいるのはあなただけじゃん、という状態はプレイヤーにはきついですね。もっと共感させてくれないと。

２、十色煌
　ホワ語に独特の泣き声が煌の大きな魅力。次第にそれが周囲の人間に伝播していく様子がなかなか楽しいです。本人が望んだ交友関係の広がりもこれで叶えられるあたりがなんともねぇ。主人公が父親のような気分になるのもわかります。

３、御子柴瑠衣
　結局、全ての貧乏くじを引くのはルイルイという気がします。まぁ。それがサガなので仕方ないでしょう。あらゆる意味で精華といい勝負です。

４、海野宮子
　名字の話はハッキリ言ってそんなに隠すほどのものでもない気がします。期間も短いし、何より知ったところで特に何かが変わる訳でもないですからねぇ。実姉だったりするとだいぶ意味も大きく、重い話になりますけど。