エヴォリミット(propeller)
不知火義一(変更不可)と一条雫はコールドスリープの長い眠りから目覚めた。そこは超人が闊歩する世界。記憶喪失の2人からしても奇異に映った。2人が眠っていた期間はなんと100年にも及んだという。それにしても、あまりにも変容している。果たして何が起きたのか。そして、失った記憶には何があるのか。
propellerの新作は火星を舞台に進化をテーマに扱ったアドベンチャー。
購入動機はチーム買いというところ。以前はブランド買いだったのですが、異なるチームが生まれたためにこんな表現になりました。
初回特典はサウンドトラックに特典DVD「火星オーバードライブ」。
修正ファイルが出ています。あてなくともクリアは可能ですが、プレイ状況によってはフリーズすることもあるので素直にダウンロードしておきましょう。クリア後にファイルが出たので各部の検証が出来ていません。あしからず。
ジャンルは普段通りのアドベンチャー。
足回りはもう一歩、物足りなさがあります。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です……、と言いたいところですが私の環境では未読部をスキップしてしまうケースがありました。未読箇所まで飛ばすジャンプ機能は引き続き完備しています。相も変わらず便利。誤動作さえ起きなければ。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ただし、選択肢では時折、動かないことがあります。ロード直後やジャンプ中の内容は閲覧できません。恐らくは開始箇所までいつでも戻ることが出来ますがスクロールバーなどがないために逆上りづらいです。
たまに選択肢が表示された時にセーブ&ロードが実行できないケースがあります。
上記の不具合は修正ファイルでほぼクリアできると思われますが念のため記述しておきました。
シナリオは恋人によって内容が変化するといった趣があります。基本的な流れは各シナリオで共通していて、誰のシナリオであるかによって焦点が変化、展開にも差異が生まれます。ただし、その振り幅はそれほど大きくはありません。舞台の広大さのわりにこぢんまりとした活用の仕方が目立ちます。
過去作に比べて戦闘色はそれほど強くありません。設定を考えればむしろ薄いと呼べる範疇ではないかと思います。描写自体もあっさり目で手に汗握るバトルの連続、とはお世辞にも言えません。テーマの進化も階段を上れば飛躍的に進化してしまうという安易さなので盛り上がるというよりもむしろ逆の効果を生んでしまっています。
戦闘が薄れた代わりにギャグ色が強くなったように感じます。まぁ、主に主人公の変態性に重きが置かれているのですが。
課題と言えそうなのがデモを含めて序盤の時点で物語の大筋が読めてしまうこと。基本3ルートあってそのほとんどが推察可能なのは魅力的な設定だけにもったいないです。
日常の掛け合いは火星の常識という世界観説明を込みでなかなか優秀。キャラを立てつつ笑いを忘れないという加減が見事です。火星人でなくてもちゃんと笑えます。
恋愛に至る過程はヒロインによって多少の濃淡があります。全体的には苦しさを感じることが多かったです。
Hシーンは各ヒロイン2回程度。けして期待してはいけない内容です。主人公の変態度からするといかにも不足している感があります。
CGは素材によってクオリティに差があります。特に立ちCGはカットによって出来不出来の差が激しいです。ポーズや冷や汗などの感情表現にも荒い処理が目立ちます。基本は良いだけに残念です。
イベントCGは立ちCGに比べて粗は少なく、見栄えするカットが揃っています。いわゆる決め時を意識した構図の数々は原画家本来の実力を感じさせます。ただ、シナリオからここぞという場面を抽出したような特別さはあまり見出せません。両者の連動性があまり高くないように見受けられました。
背景に変化は意外と少なく、これはそのまま世界のイメージ的な狭さに直結しています。豊富なのが街や学園というあたりも火星らしさを感じにくい一因になっています。
音楽は未知の世界への期待感というものを上手に表現しています。ノリのいい楽曲揃いでしっかりと役割を果たしています。ある意味ではシナリオやCG以上に雄弁に本作を語っています。単体でも聞く価値は十分にあるでしょう。サントラの存在がしみじみとありがたいです。
ボイスは主人公を含めてフルボイス。ただし、Hシーンではモノローグのみとなるため事実上ボイスはありません。propeller作品ですから声優陣はまさに鉄板のキャスティングです。相変わらず豪華で実に聞き応えがあります。ただ、キャラ毎のボリュームに差があるのが玉にきず(コンフィグで調整可能)です。
まとめ。ボタンのかけ違いを感じる作品。各要素の融合度がどうも低いように感じてなりません。もっと弾けても良かったような。難しい題材ゆえにまとめきれなかったようにも。
お気に入り:ツナミ・カラニコフ、リーティア・フォン・エアハルト、アクア・ダンチェッカー、鷹星カズナ、チャペック、ココロ、校長先生
評点:75
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、一条雫
能力が高すぎるがゆえに大鉈という得物の意味が薄くて残念。同じことはアクアさんにも言えますけど。やはり、相棒としてはまだしも恋人としては物足りなさがあります。男らしいがゆえに。アースシードの設定は意味があるようで実のところ、あまり意味がなかったですなー。階段に対して制限があるとか主人公と違いがあれば良かったんですけど、何もなかったですからねぇ。気にしなければいいじゃん、という身も蓋もない話。
2、鷹星カズナ
ポジション的にもデザイン的にもなかなかおいしいキャラです。地球の常識、火星の非常識とか披露するのに最適。唯一の効果的なセクハラ要員でもあります。おかげで恋仲になった時にとても自然です。物語の進行にもとても便利。ヒロインにして狂言回しも兼ねる貴重な存在。Hシーンでも存在感抜群。
3、リーティア・フォン・エアハルト
北都南さんの偉大さを再確認させてくれるお嬢さん。保護欲をそそる度はツナミを軽く上回る。嫁にすると金髪碧眼の日本刀遣いが小姑としてついてきます。うまくすれば2人とも嫁にすることが可能という夢のような物件。
階段の選択肢が良かったですね。主人公の違いやヘカトンケイルに対するアプローチなど本作の中では意欲的にうまく処理していたと思います。もうちょっと長いとなお良かったんですけど。何気にこのシナリオが一番、幸せそうです。
4、アクア・ダンチェッカー
雫とは違ってアースシードの設定はうまく機能していたと思います。一色ヒカルさんの好演も相まって苦悩する姿はそれほど長くないにも係わらずうまく出ていたのではないでしょうか。態度が固ければ固いほどうろたえた時がとても可愛く見えますね。覗きイベントは秀逸だったと思います(大マジメに)。個別シナリオがなかったのは残念ですが、3人エンドがあっただけで良しとしたいと思います。全般的に好きなんですけど、特にジト目の立ちCGがお気に入りです。
5、ツナミ・カラニコフ
1人でも楽しいが、チャペックやリーティアなど誰かと組んだ時が最高に楽しいロシアの妹様。実のところ、ヒロイン勢を相手にしても引けをとることのないいい女ではないかと思います。将来性有望。
6、チャペック
ファジー・ジョーク機能が素敵な僕らのブラザー。カズナシナリオでは壊されたりしないかとハラハラしておりました。仮にボイスがなかったらここまで楽しい奴とは感じなかったと思います。
カズナとチャペックに自分の腕を切断させようとする主人公は頭がおかしいと思いました。
7、校長先生
脳内ではすっかりお父さんボイスに変換されておりました。もうちょっと絡みが欲しかったというのが正直な気持ち。
8、ココロ
睡眠中に会える文字通りの(?)スリーピングビューティー。頭をかじる姿と照れる姿がなんとも愛らしい。空気を読んでくれるところも素敵。色々な意味で良い設定だと思います。