アインシュタインより愛を込めて(GLOVETY)

 彗星病。そんな病がある世界。自称天才の愛内周太(変更不可)は初めてテストで学年1位の座から陥落する。その相手は有村ロミ。彼女もまた天才、らしい。2人の天才が出会う時、これまでの世界にはない化学反応が起きるのか。それは夏が終わってみればきっとわかる。

 GLOVETYのデビュー作はとてもどこかで見たことのあるスタッフが結集したアドベンチャー。
 購入動機は原画買い、でしょうか。かつてのことがあるので過剰の期待は抱かずに購入しました。
 豪華限定版と通常版に分かれています。オフィシャル設定資料集、ドラマCD、アクリルキーホルダー、アクリルパネル、ボーカルコレクションが豪華限定版に、ボーカルコレクションのみ通常版に入っています。予約キャンペーン特典は複製色紙とドラマCD。

 ジャンルはパッケージによると夏の純愛SFアドベンチャー。
 足回りは平均程度。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、繰り返しプレイでもしないとなかなか使う機会はありません。前の選択肢に戻る機能はあるものの、次の選択肢へ飛ぶ機能はありません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能。そこそこ戻ることができます。ロード直後にも使用可能です。
 前回の続きから始めるCONTINUE機能がありますが、いささか動作が不安定です。終了前にタイトルに戻るなどすると、さらにひとつ前に戻ってしまうことも幾度かありました。

 シナリオは四章構成。ただし、それはいわゆるグランドルートのみで通常のルートはどのヒロインも二章までに終了します。
 各ヒロインシナリオ毎に温度差がとても大きいです。現実寄りからトンデモ展開まで濃淡がとても激しく分かれています。順番を間違えるとかなり戸惑ったり、拍子抜けしたりしそうです。
 日常の掛け合いは共通と個別で開きがあります。個別では基本的な登場人物が定まっているので勢い掛け合いは狭くなりがちで、当然シナリオによって差があります。共通シナリオは部活を立ち上げるのが目的なのでヒロインが揃い踏みとなりますが、この部活は以降まともに活動しないので個別シナリオは特別な理由がないと人が集まりません。
 惹かれあう過程は主人公の人格にクセが強いこともあってかなり苦しいものがほとんどです。人の心がわからないと豪語するだけのことはありますが、残念ながら克服できているともあまり思えません。色々と厳しいでしょう。
 シナリオ描写は全体的に雑で説得力に欠けることが多いだけでなく、肝心の描写自体がカットされていることも珍しくありません。それはいわゆる本筋である後半のSF要素に関しても同様です。あまり期待しすぎない方が賢明でしょう。一方で尺は短いながらも各ヒロイン描写は良好で魅力ある存在として描かれています。
 Hシーンはヒロインによって1~3回と如実に差があります。どうも真相から遠いほど回数が多いような気がします。ついでにスタイルが良い方が回数が多いような気も。エロ度はそれほど高くはありません。

 CGは間違いなく業界最高峰の域にあります。過去作と比べても格段の進歩が感じられます。思わずポストカードにしたくなるような印象的なイベントCGが数多くあります。背景もそれに負けることなく世界を構築するパーツとして手抜きなく用意されています。そこに上手に溶け合うように作られた立ちCGも素晴らしい出来です。本作のテキストには少しもったいないくらい上質の感情表現を見せてくれます。

 音楽は心に染み入るような曲が多くじっくりと聞きたくなります。正直なところ、特典はボーカルコレクションよりもサントラの方が欲しかったです。もし、豪華限定版の方に入っていたなら買い直してでも手に入れたと思います。単体で聞きたくなるような曲がたくさんありました。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。ただし、特定の場面では主人公にもボイスがあります。演技には特に問題ありませんが、稀にテキストとボイスが異なる箇所がありました。

 まとめ。やっぱりデビュー作らしい作品。意気込みは買えるのですが、設定やテーマをどうもうまく扱え切れていないように感じます。結果としてシナリオがCGや音楽の足を引っ張ってしまっているのは素直にもったいないです。
 お気に入り:新田忍、坂下唯々菜
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、有村ロミ
 やっぱり、メインヒロインは失踪しないといけないのかしら、と思わせられます。ライターのクセなんでしょうか。
 ストーリーに集中してもらうためにこの体形なのだろうか。Hシーンの枠数の差とか考えるとそんな気がします。
 有村さんの伝手がまさかの主人公。なんでこれで名前を聞いた時に何も感じないのでしょう。人の気持ちがわからないとかそんなレベルを軽く超越してますよ。誰でも知り合いがいる、というほどありふれた名字でもないし。

2、坂下唯々菜
 やはり、唯々菜の方がメインっぽい感じがします。すべてを終えて再会することができない相手というのは特別さが違いますよ。儚さの度合いでロミと唯々菜では勝負になりません。まぁ、メシアとしての行動はなんとも中途半端でしたが。
 普通を夢見るからこそ、普通であることを気にするキャラを演じているというのは胸に迫るものがあります。
 ラーメン食べ歩きのシーンが良かったです。

3、新田忍
 もしかしたら本作で最も都合の良いシナリオかもしれません。あまりにも的確に主人公の行動に対するカウンターのようなイベントが発生します。ひょっとしたら「大人って大変ですね」というのが裏テーマだったりするのでしょうか。特に問題ないあたりにもそれらしい描写がありますし。ホテルの食事とか。
 あとよくわからないのはお姉ちゃんの設定。一体どんな意味があったのかしら。ほとんど裏設定レベルですよねぇ。
 特殊である裸エプロンの立ちCGがあるのが非常に良かったです。他シナリオでは似たようなケースでありそうでない、の連続でしたからねぇ。
 白目がとても可愛いのですごく癒されます。

4、西野佳純
 本作では恐ろしいくらいに一般人枠。シナリオの内容が投げやり過ぎてエンディングを迎えるころには彼女が何の競技をやっていたのかすっかり忘れていました。サブキャラの片桐猛の存在感が強すぎたということもありますけど。
 告白からそのままHシーン、さらに合宿中をいいことに翌朝そのまま2回戦という流れは色々とペース配分を考えない本作らしいと思います。

5、片桐猛
 ポジションが完全に悪友で色々と切ない。便利すぎるせいなのか何なのか、佳純シナリオ以外では存在感が薄い。小笠原諸島に1人だけ行けないのはいじめとしか思えませんでした。