どこでもすきしていつでもすきして(C:Drive)

 天野候(変更不可)はそれまでの人生を無難に過ごしてきた。だが、それでいいのか。一念発起した候は恋人を得ようと奮闘を始めるのだった。

 C:Driveの新作は作った恋人とバカップル生活を送るアドベンチャー。
 購入動機は企画に対して期待半分不安半分で原画がそれなりに好みであったから。
 初回特典はボーカル&サウンドトラック。予約キャンペーン特典は「してしてBOOK」。まさに原画家本人による同人誌です。

 それほど重要なものではありませんが修正ファイルが出ています。該当する症状の方は落としておきましょう。

 企画はやや変わっていてもジャンルは至って平凡なアドベンチャー。タイトルほどどこでも自由自在にHできる訳ではありません。選択肢で二択(するか、しないか)が出現するのみ。結果論としてみればまぁ、そう言えなくもないと表現するにやぶさかではないという風情かな、と。
 足回りは及第点クラス。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後には使用できませんが、以降であればいつでも開始地点まで戻れます。
 本作はとても残念なことに起動ディスクが必要です。

 シナリオは担当するライターによって大きく様変わりします。文体やキャラクターなどがあからさまに異なるので予備知識がないと驚くことに。ライター間の摺り合わせとかそういう概念はないみたいです。
 具体的には南雲榎穂、北条智秋の2シナリオは地に足がついた内容。カップル成立から付き合っていく過程に無理がなく、意外と読ませる仕上がりでいちゃいちゃする描写も十分です。
 天野暦、小西冬桜、東峰陽奏の3シナリオはあらすじ通りに唐突な内容。選択肢を選んだのだからカップル化は当然というくらい身も蓋もなく恋仲に。付き合っていく過程には人格変容が見られヒロインの頭が悪くなったように感じることがしばしば。地の文もセリフもハートマークが乱舞していて特徴的です。
 構成は主人公のスタート時の状況を一日、描写して選択肢を提示、各ヒロインルートへ分岐します。分岐後は恋仲になるパートを挟んで本編的な内容へ。月曜日から始まって翌週末まで毎日の描写があります。一日は「登校まで」と「それ以降」に分かれていてシナリオによっては両者で内容が矛盾することも。言うなれば前者は日常の掛け合いで後者は個別シナリオといった感じ。
 いずれのシナリオも全体の起承転結は期待しない方が吉です。中でも3シナリオの方は最終盤になると思い出したような急展開で物語を終わらせようとします。かなり無理があるように感じました。
 Hシーンは南雲榎穂シナリオ以外ではゲーム期間の2週間目に入るとHシーンも差分を駆使した2周目に入る水増し仕様。よって2週間目はHシーンになると必然的にテンションが下がりがちです。エロ度は純愛系(?)としてはなかなかですが、付き合って一週間、学生ということを考えると内容的にやりすぎな感もあります。

 CGは極めて原画の安定感に欠ける仕上がり。発展途上なのか面白いほどカットにばらつきがあります。誇張ではなくイベントCG毎に顔が違って見えるヒロインも。
 立ちCGにも同様のことは言えます。加えて状況に合致していないと思えるカットも散見されます。基本はとても可愛い絵を描かれる原画家なので今後の成長に期待したいところです。
 HシーンはCGのほぼ全てを占めています。安定度に目をつむればエロ度は高いです。ただし、ほとんどのシーンで1枚しか使用していないので使い方に不満を感じることもありそう。

 音楽は主題歌こそ企画に相応しい馬鹿なノリの曲(ほめ言葉)ですが、ゲーム中のBGMは意外なほどまともで、普通のアドベンチャーや萌えゲーに違和感なく使えそうです。
 ボイスはヒロインのみフルボイス。主人公にはありません。演技は安定していて声からキャラクターをイメージしやすいです。

 まとめ。微妙にタイトル通りではない作品。システム的にもシナリオ的にもパターン性が強いゲームなのでキャラクターが好きになれないと単調に感じやすいかも。ライターのクセに合わない場合もツライです。企画が企画なので割り切りが大事。
 評点:63
 お気に入り:南雲榎穂、北条智秋

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、天野暦
 どうやらアニメ化もされた某有名作品にモデルがいるらしいです。私は未読なのでまるで知らないんですけど。そういやここのブランドはデビュー作にも似たようなことをしてましたな。あれはそれでもサブキャラでしたが今回は立派なメインヒロインのひとり……。
 16ビット系妹と称しておきながら実際にプレイしているのは今時のゲームばかりでちと期待外れでありました。あと昔のゲームは全然、面白くない発言には大変がっかりです。君には失望したよ、という感じ。

2、小西冬桜
 榎穂シナリオや智秋シナリオでは期待の高まる幼なじみっぷりを見せていたんですけどねぇ。主人公が自分を選ばなくても健気に毎日がんばる姿に泣かされたものですが、自分のシナリオではねぇ。まさに株価大暴落。
 主人公をありがたがって受け入れるという姿勢なので正直、興ざめでした。恋仲になって以降は明らかに馬鹿になっているのも印象を悪くしてます。一応は優等生の部類なのにHのために自分から授業をさぼるあたりでストップ安に。ハートマーク乱舞でよがりまくるあたりも好感度大幅低下要素。

3、南雲榎穂
 シナリオ全部を使って恋仲とはなんぞや? と問いかけて同時にいちゃいちゃする毎日が書けているあたりは称賛に値します。シナリオに書かれていないあたりもこいつと一緒なら楽しいだろうなぁ~、苦労も多そうだけど、と思わせてくれるあたり秀逸です。ツンデレキャラは好みではないのですがすっかりお気に入りでした。バイトの苦労が実感を伴って伝わってくるのも良かったと思います。

4、東峰陽奏
 基本的に好きなキャラなのでその内容にはとても落胆しました。寡黙なのは内側に何もないから、というあたりが何よりいただけません。感情の表現が下手なのではなく、表現するだけのものが彼女にはないのです。だから主人公を受け入れる理由は特にないし、受け入れた後は拒否という概念そのものがありません。ラストはまるで小学生でも相手にしているようでした。友達とケンカして仲直り、みたいな。発売前人気投票1位が泣く実態です。

5、北条智秋
 最初にプレイしたのでそれほど感じませんでしたが、本作ではわりと異色っぽいシナリオ。主人公の周囲のポジションとして最外縁部にいるからだと思いますが。
 本人同士のやりとりも楽しいですが、この2人がカップルになったことによる周囲の日々のリアクションが楽しい。特に冬桜はいい味出してます。
 胸が魅力であると同時にギャグになっているあたり素直に笑えます。主人公だけでなく自らもそれを意識してしまうあたりがまた。
 榎穂シナリオに次いでいちゃいちゃする様子が書かれています。まぁ、微笑ましい感じでありますが。