喫茶ステラと死神の蝶(ゆずソフト)
高嶺昂晴(変更不可)は普通の大学生である。少なくともそのつもりであった。ところが、どうやら違ったらしい。魂に問題があったらしいことで気がつけば死神やケット・シーに目をつけられてしまう。このままでは命が危ないと警告を受けた昂晴が依頼されたのは一緒にカフェを立ち上げるということだった。
ゆずソフトの新作は死神やケット・シーと一緒に喫茶店を運営する少し変わったアドベンチャー。
購入動機はいつのように原画買い。
初回特典は特にないですが、予約キャンペーンは色々とありました。各原画家の複製色紙のほか、いつものラフ原画集、さらにオータムキャンペーンとして缶バッジやクリアファイルにイラストシートセットが。色紙には実店舗とWEB予約の違いなんてのも。
修正ファイルが出ています。それほどたいした内容ではありませんが快適にプレイするためにあてておきましょう。修正ファイルが配布されると通知される機能もあるのでわかりやすいでしょう。
ジャンルはいつものようにアドベンチャー。
足回りはもう文句の付けようがないくらい安定しています。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。スキップ自体も3種類から選ぶことができます。次の選択肢への機能と前の選択肢に戻る機能も用意されています。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能でいつでも最初まで戻ることができます。ロード直後にも使用可能。シーンジャンプの機能もしっかりと。ジャンプ時の背景も付随する形で変わってくれます。
おなじみになったフローチャートは今回も標準装備。いつでも入ることができて色々と確認できます。分岐がわかりやすく2周目以降により力を発揮します。イベント鑑賞としても使えます。
前回の続きからはじめる機能ももちろんあります。
シナリオは共通、個別シナリオで意外に雰囲気の違いが出ています。これに複数ライター制の影響も絡んでイメージが異なっている感じでしょうか。共通シナリオはみんなで喫茶ステラをオープンさせることに注力していて、これがまさに中心となってますが、個別シナリオに入ると主題や各ヒロインの抱える問題もあって喫茶ステラに関する要素がだいぶ薄れていきます。他にも年少組に勉強を教えるなど人数を惜しみなく投入できたイベントが少なくなっていきます。例外もありますが……。
距離の近い関係性が上手に構築できているので日常の掛け合いは実に賑やか。喫茶店のオープン準備というものが新鮮で楽しく読むことができます。笑いも爆笑という感じのものはありませんが、ほどほどに笑わせてくれます。
惹かれ合う過程はヒロインによる、といった感じでここでも複数ライター制の影響を感じます。全体としては概ね納得できる形で描写されているのではないでしょうか。
Hシーンはカウントが難しいものがありますが、各ヒロイン4~5回でサブヒロインは3回。いつも通り1回はクリア後のアフターストーリーとなっています。サブヒロインにも用意されています。エロ度は純愛系にしてはわりと高めな方だと思います。というか、クレジットのシナリオ協力にJ・さいろー氏とあるためか、ちょっと主人公が変態っぽい描写が目立ちます。かつてほどの激しさではありませんが……。
CGはフルHDとあって見応え十分。まさに売りであるとひしひしと感じます。イベントCGはポイントを選んで必要なところにしっかりと用意されていますし、可愛さとエロさが喧嘩することなく両立しているのはさすがとしか言いようがありません。
立ちCGは会話を盛り上げることはもちろん、ヒロインの魅力増に大きく貢献しています。口許が細かく変わってくれるのも見逃せません。髪型や衣装をコロコロ変えてくれるあたりも嬉しい点です。もちろん、Hシーンにも活かされています。
SDカットは主に笑いで大きな戦力となっています。両原画家に負けない存在感を放っていると思います。通常イベントCGでは出すことの難しい味になっています。なぜか、いつもアイキャッチのものがCG鑑賞に登録されません。ここはぜひ改善してほしいです。
音楽は場面に応じて必要な曲が用意されています。耳に馴染みやすい曲の多くは本作の居心地の良い空気を体現しています。ですが、今回はちょっと浮いているような曲もありました。あまりそういったことは感じないのですが、「Happy Sunshine」はいかにも苦手な曲を作っているようで場面にもあまり合っていないように感じました。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。イメージまで考慮したキャスティングには頭が下がるばかり。特に明月栞那役の麻倉亞恋さん、火打谷愛衣役の音来内麗さんの演技ははまり役だと思います。
まとめ。欠点はあれどもレベルの高い作品。長所と短所が両立している面があって総括するのが難しいです。ボリュームは多めなのでコストパフォーマンスはなかなかよろしいかと思います。
お気に入り:明月栞那、火打谷愛衣、汐山涼音
評点:80
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、明月栞那
膝枕は非常によろしいのですが、あれは一体どうやっているのでしょう。休憩室にあのように横になるものは見当たらないような。栞那さんはパイプ椅子に座っているようなので地面ということもないですからねぇ(それはそれでなんか嫌ですけど)。
シナリオ展開のせいもあって意外と死神の衣装を着てくれなくて残念。ツインテールはなんとなく意外な髪型な気がします。誰も触れないあたりもちと消化不良なような。わりと印象が変わる髪型ですからねぇ。
「にっひっひ」などは大変よろしいのですけど、あれはゲームだからだと強く感じます。現実ではさすがにちょっとねぇ。
2、四季ナツメ
チャイナ服を着るくだりは「ぐぬぬ」的でもなく、半ば勝手に着てしまうのであまり感動がありません。どうも事前のクールなドSというのが看板倒れっぽい感じなのですよね。最初の着替えを不可抗力で覗いてしまった時くらいしか。
3、墨染希
幼なじみとしては色々とパワー不足です。自分のシナリオ以外では、いかなる場面でも嫉妬ゼロはさすがにどうかと思ってしまいます。特別感があまり感じられないのは残念。せっかくの巫女さんという武器もなんちゃってを強調しすぎてもったいないイメージばかり強まっているような。シナリオ自体の出来もちょっとねぇ。
次郎系ラーメンに興味を持っていながら実態を全く知らないというのはちょっと無理があるような気がします。栞那のようにスマホを使いこなせないというのならともかく。
どうでもいいですけど、婿養子なのだからアフターシナリオの最後のセリフは変なのでは。
4、火打谷愛衣
意外にも喫茶店のイベントが多いです。愛衣シナリオを最初にこなしたために、これが基準となってしまい2周目以降は違いに苦しむことに。それでいて、進路には絡まないのだから、色々とままならないですなー。
バイト時と制服時と私服時で微妙に髪型が変わるのが可愛らしいです。地味ながらおしゃれな感じが出ています。まぁ、飲食店でのバイトという面もあるのでしょうけど。
愛衣に限りませんが、本作もゆずソフトらしく、みんな頻繁にお着替えしてくれるのでとても目の保養になります。特に愛衣は色も鮮やかで様々な衣装に変わるので楽しかったです。ただ突然、脱がさないことにこだわるAVプレイは賛同できなくて困りました。どのみち全く脱がさずにすることはできないでしょうにねぇ。
5、汐山涼音
パティシエ命だったために男と付き合うこともせずに純情まっしぐらな涼音さんがいい感じ。オンとオフをハッキリと切り換えるべし、とか実際に役に立つアドバイスを送ってくれるあたりもさすがです。最も頼りになる人間の見た目が最も子供っぽいというのもギャップになっていて良い感じです。
手を無遠慮に触るSDカットがお気に入りです。